ライター紹介

ガリバーズ EYE 氏

ユーザ視点に立ったガリバー独自の「安全基準」「環境・燃費基準」「経済性」という新たな評価軸を用いてクルマを評価いたします。

 軽自動車界に衝撃を与えた初代デビューから丸15年経った9月25日、先代から5年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型「スズキ ワゴンR」が発表された。今モデルで4世代目となる。先代モデル途中から追加された「ワゴンR スティングレー」も併せてフルモデルチェンジし、2つの顔で販売台数「軽No.1」の地位をさらに強固なものとする。なおスポーツグレード「RR(ダブルアール)」は先代モデル末期で既に消滅しており、その役割は新型 ワゴンR スティングレーが一手に担うことになる。時代が求める環境性能もさらに向上させ、クラストップの燃費性能を実現。また新プラットホーム採用により、室内空間を拡大した。さらに走りや静粛性、安全性なども高めている。

軽の世界観を塗り替えた王者が、更に本流を極める!

 1993年に登場した初代ワゴンRは、それまでの軽自動車の概念を覆した衝撃的なモデルだった。背を高く、そして着座位置も高めることで、そこそこの広さ・大きさだった軽自動車のパッケージングをいちから見直し。その結果、限られた軽規格サイズの中でも成人男性4人がしっかり乗り込める秀逸なパッケージングを実現した。またシンプルでクリーンなデザインも、それまでの「女性向け」イメージから軽を敬遠していた男性ユーザーも含め、老若男女から支持を集めた。その結果、初代ワゴンRは当のスズキが予想する以上の超大ヒット作に発展。現在では軽全メーカーが「ワゴンR風」の対抗用ハイトワゴンモデルをラインナップし、軽自動車市場自体も更なる拡大を遂げた。ワゴンR登場前後では、軽自動車の構図がイッキに塗り変わったのだ。
 そんな中、日本一の販売台数を誇るに至った軽自動車No.1ブランド”王者”ワゴンRが、遂に待望のフルモデルチェンジを果たした。5年ぶり、これで4代目となった今回の新型 ワゴンRも、狙うところは初代と同じだ。開発コンセプトは『快適 スタイリッシュ ワゴンR』。スズキは、軽の本流に相応しい快適さと、より多くの人に愛されるデザインを追及したと説明する。

「ワゴンRらしさ」をさらに強調したエクステリアデザイン

 ボディサイズは全長x全幅x全高が3395x1475x1660mmと先代とほぼ変わりない。それに対しホイールベース(前後車軸間)は2400mmと先代に比べ40mm延長した。同社「パレット」から採用が始まった新プラットホームによるパッケージングの見直しと相まって、室内長は+105mm、前後乗員間距離は+140mmとそれぞれ拡大。特に後席の足元空間が広くなった。この影響により、前後席のスライド機構についてもスライド量が増しており、より最適なポジション取りが可能となった。また後席ステップの地上高も-30mm下がり、さらに乗降性も良くなっている。

 ボディデザインの基本的なフォルムは、3世代に渡りワゴンRが培ってきた「ワゴンRらしさ」をさらに強調。縦目の大型ヘッドライトと大開口部を持つフロントグリルの組み合わせからなる定番顔「ワゴンR」と、横長のヘッドライトと一体化したスケルトン仕様のグリルを持つ「ワゴンR スティングレー」、この2つの顔を用意した。
 インテリアも、ワゴンRとワゴンR スティングレーで差別化が図られている。ワゴンRはライトグレーの明るく爽やかな内装なのに対し、ワゴンR スティングレーではブラック内装にシルバー加飾とした。また本革ステアリングや自発光3連メーター、ブルーイルミネーションなどでクールなムードを演出し、上級グレードとしての性格も与えた。

JO08モードもクリアする低燃費性能を実現

 搭載する660ccエンジンは、ワゴンR、ワゴンR スティングレーともにノンターボ、ターボの2機種とシンプルなラインナップだ。ノンターボのK6A型DOHC VVTエンジンは従来モデルからの改良版だが、吸気系レイアウトの最適化などを図り低速トルクをアップ。街中での扱いやすさを向上させた。その結果、CVT搭載のFFモデルでは10.15モード燃費23.0km/Lと、同クラスのトップレベルの燃費性能をマーク。CVT搭載のFF/4WDモデルと5速MT搭載のFFモデルでは、より厳しい2015年度燃費基準(JC08モード)もクリアした。なお最高出力54ps(40kW)/6500rpm、最大トルク6.4kg-m(63N・m)/3500rpmを発生させる。
 いっぽうのターボエンジンは新開発だ。従来マイルドターボと呼ばれたターボチャージャーを高過給圧化し、64ps(47kW)/6000rpmの最高出力、9.7kg-m/3000rpmの最大トルクを発生。こちらはCVTとの組み合わせのみで、低速域からの力強い加速性能と登坂性能を誇る。燃費も10.15モードで21.5km/L(FFモデル)と、こちらも十分な低燃費ぶりだ。

 安全性能においても、スズキが推進する軽量衝撃吸収ボディ「TECT(テクト)」を採用。また歩行者傷害軽減ボディや頭部衝撃軽減構造インテリアなど、内外の安全性もさらに高めた。
 また運転席・助手席のSRSエアバッグは全車に標準装備するほか、一部グレードにはカーテンエアバッグと前席サイドエアバッグまで装備する。さらに横滑り防止装置「ESP」も一部グレードにオプション設定される。ただし一方で4輪ABS(EBD・ブレーキアシスト付き)はベーシックグレードでオプション設定というのは残念な限りだ。

王者の戦いに注目が集まる!

 装備面においては、キーレスプッシュスタートシステムを多くのグレードに標準採用したのが新しい。また瞬間燃費や平均燃費、航続距離などを示すマルチディスプレーや、抗アレルゲン+カテキン・エアフィルター付きのエアコン、イモビライザー、リアシートシートベルトの自立式バックルなど、ユーザー想いの装備も多く採用されている。さらに、ワゴンR伝統の豊富なポケッテリアはさらに充実。お馴染みの助手席シートアンダーボックスを始め、リッド付きのインパネボックスやティッシュボックスが置けるインパネトレー、アームレストボックスなどを新採用している。
 価格は、「ワゴンR FA」908,250円(FF・5速MT)から、「ワゴンR スティングレー TS」1,671,600円(4WDターボ・CVT)まで。目標販売台数は18,000台だ。
 「ダイハツ ムーヴ」シリーズを始め、多くのライバル車が猛追を繰り広げる中、首位「ワゴンR」&「ワゴンR スティングレー」がみせる王者の戦いぶりに注目が集まる!

( Photo:スズキ・CORISM編集部/レポート:CORISM編集部 徳田 透 )

代表グレード ワゴンR FXリミテッド(FF・CVT)
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 3395x1475x1660mm
車両重量[kg]850kg
総排気量[cc]658cc
最高出力[ps(kw)/rpm]54ps(40kW)/6500rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]6.4kg-m(63N・m)/3500rpm
トランスミッションCVT(自動無段変速機)
10・15モード燃焼[km/l]23.0km/L
定員[人]4人
消費税込価格[万円]118.125万円
発売日2008年9月25日
レポートCORISM編集部 徳田 透
写真スズキ・CORISM編集部

ワゴンRの評価

安全基準 2点/5点
環境・燃費基準 5点/5点
リセールバリュー5点/5点