ザ・対決 マツダ アテンザ VS フォルクスワーゲン ジェッタ
Mクラスセダン編
マツダ アテンザ vs フォルクスワーゲン ジェッタ

 セダンといえば、日本ではミニバンなどに押され気味。しかし、欧州ではやはりメインカテゴリーとして君臨している。走りやパッケージングなど、クルマに求められる性能を高い次元で両立しなければならないというシビアなマーケットだけに、各社とも力を入れて開発を進めているのが現状だ。まずは新型にスイッチしたばかりのマツダのアテンザ。2代目となるアテンザだが、もともと欧州で高い評価を得ているマツダだけに、さらに熟成を重ねてきた感は十分だ。対するのはフォルクスワーゲンのジェッタ。14年ぶりに復活した車名だが、ただゴルフをノッチバック化しただけでなく、デザインも専用とし、以前の無骨なイメージはそこにはなく、スタイリッシュでもある。どちらもスポーティテイストも漂わせているだけに、対決結果に興味津々!

PHOTO/佐藤靖彦 構成・文/近藤暁史
モデル/

ROUND1:ファーストインプレッション

マツダ アテンザ
マツダ アテンザ
先代は欧州各国で数々の賞を獲得
2代目はさらに満を持しての登場

 マツダのアテンザといえば、他の日本車とは一線を画したヨーロピアンテイストが自慢のモデルだ。実際に、初代たる先代は数々の賞を受賞しているほど、評価は高い。そのマツダのアテンザが2代目へとスイッチ。マツダとしても従来のZOOM-ZOOMコンセプトをさらに昇華させた「サステイナブルZOOM-ZOOM宣言」に基づいて開発しており、世界戦略中核を担う重要なモデルと位置づけとしているほど。しかもコンセプトは「最高の高速ツアラー」と言うだけに、マツダらしいというだけでなく、いかにヨーロッパを意識しているかがわかろうというものだ。大いに期待できる。
 用意されたボディタイプは、先代アテンザ通り、ハッチバック(スポーツ)/セダン/ワゴン(スポーツワゴン)と、今の日本車では珍しい幅広いラインナップが自慢。今回、対決に登場させたのはセダンなのだが、そもそものデザインコンセプトが、日本古来の和のテイストを取り入れたというだけに、エッヂの効いたデザインやラインを全面に出しているのが特徴となる。各部の質感もかなり高く、アテンザらしさをしっかりと確保しているだけでなく、やはりどことなくヨーロッパ車的なテイストも感じられる。走りについても熟成を重ねており、2リッターに加えて、先代アテンザにあった2.3リッターの代わりとして、新開発となる2.5リッターユニットも用意されている。組み合わされるミッションは、5速AT(4WDは6速)と、6速MTとなる。最近ではATのみのラインアップも少なくないなか、MTモデルを用意するというのはスポーツマインドを重視するマツダならではの特徴といえるだろう。

[エコ&燃費]
 2.5リッターエンジンは排気量アップ&レギュラー仕様化にも関わらず、2.3リッターと変わらない燃費を実現。実質の燃費アップといっていいだろう。高張力鋼板の多用による軽量化も功を奏している。さらに排ガス基準も従来と同等で「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」(FF)としている。

[安全性能]
 高張力鋼板使用などによるボディ剛性を大幅に高めているのは衝突安全性向上にも威力を発揮。フロントシートはマツダ初となるアクティブヘッドレストが装着される。ディバイス的には、TCS(トラクションコントロール)とDSC(横滑り防止機構)を2.5リッターに標準装備されるが、全グレードとして欲しかったところ。また車間距離を保つマツダレーダークルーズコントロールシステムや国内初採用となるリアビークルモニタリングシステムなどは2.5リッターFF/ATにオプション設定される。

[取材時実測燃費]
9.7km/l

[アテンザ価格帯]
207.0〜250.0万円

フォルクスワーゲン ジェッタ
フォルクスワーゲン ジェッタ
ゴルフをベースにしてセダン化
広大なラゲッジが最大の魅力

 初代ジェッタといえば、ゴルフをベースにしたノッチバックセダンとして人気を博したモデルだ。デザイン的にはいかにも「2ボックスのゴルフにトランク付けて3ボックス化しました感」が漂い過ぎてデザイン性のかけらもなかったといってもいいほど。使い勝手のみの質実剛健ぶりが際立っていた。その後、ベント/ボーラなどと車名を変えて存続していたが、2006年に登場した新型から再度ジェッタを名乗るようになり、復活を遂げた。肝心のデザインもゴルフをモチーフとしながらも、フロントからすべて専用とし、クーペのような流れるラインを全面に出すことで、昔のような無骨さは消え、エレガントさすら感じられるほど。
 インテリアもウッドやレザーを使ったりと、質感や高級感を確実かつ、大幅に高めており、この点も進化のひとつに数えていいだろう。もちろんベースとなっているのはゴルフであり、トランクを追加するという手法は変わっていないことから、キャビンも含めたパッケージングはじつに広大。ラゲッジは527リッターもの容量を誇り、ゴルフバッグを4つも積める実力を持っている。走りに関してはもちろんフォルクスワーゲンの最近の傾向を受けて、2リッターTSI/6速DSGに加えて、1.4リッターTSI/6速DSGの組み合わせも用意。前者はターボのみで、後者はすでにお馴染みとなったスーパーチャージャーとターボのツイン過給を行なうことで、小排気量ながらハイパワーを引き出すことに成功している。まさに鉄壁の布陣といってよく、欧州車ならではの高いレベルでツアラー性能を確保しているのはさすがだ。

[エコ&燃費]
 1.4リッターTSIは14.0km/Lと170psというハイスペックと省燃費を両立させており、評価は高い。実用燃費もいいのが特徴だ。ただし排ガスに関しては、日本の基準をクリアしているとしているのみで、星などの表示はなく、グリーン税制の適応などはされない。

[安全性能]
 横滑りを防止するESPにステアリング系を制御するDSRを加えることで、左右輪のコンディションが違う路面でも安定性を確保する。またエアバッグに関しては、8つも標準装備。サイドエアバッグだけでなく、カーテンエアバッグも装備しており、かなり充実しているといっていい。だが、これらの安全装備の充実度を考えれば、アテンザとの価格差もそれほど気にならないレベルといえる。どちらを選ぶかを検討する際には、このあたりのこともしっかりと考慮した方がいい。

[取材時実測燃費]
11.2km/l

[ジェッタ価格帯]
293.0〜362.0万円

25EX
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4735×1795×1440mm
車両重量
1420kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC
総排気量
2488cc
最高出力
170ps(125kw)/6000rpm
最大トルク
23.0kg-m(226N・m)/4000rpm
ミッション
5速AT
10・15モード燃費
12.8km/l
サスペンション(前/後)
ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
250.0万円
TSIコンフォートライン
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4565×1785×1470mm
車両重量
1440kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC ターボ+スーパーチャージャー
総排気量
1389cc
最高出力
170ps(125kw)/6000rpm
最大トルク
24.5kg-m(240N・m)/4750rpm
ミッション
6速AT
10・15モード燃費
14.0km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/4リンク
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
297.0万円
マツダ アテンザ 2.5リッターエンジン

エンジンは従来の2リッターに加え、新開発の2.5リッター(写真)を搭載する。燃費も向上しており、経済性も重視したユニットだ。

マツダ アテンザ 17インチホイール

2.5リッターモデルのFF車(写真)は17インチのタイヤ&ホイールを装備している。接地性も高く、楽しめるハンドリングを実現している。

フォルクスワーゲン ジェッタ 1.4リッターエンジン

1.4リッターTSIエンジンは、ターボとスーパーチャージャーを組み合わせ、2.5リッター並みの走りと優れた低燃費を両立させている。

フォルクスワーゲン ジェッタ 16インチホイール

グレードにより16インチ(写真)または17インチのタイヤ&ホイールを装備する。どちらもしなやかで快適な走りを実現しているのはさすがだ。

マツダ アテンザ インパネ

ボディサイズが拡大され、居住性は高まった。インテリアのデザインは最近のマツダ車らしいスポーティさを感じさせるものとなっている。

マツダ アテンザ シフトレバー

FF車(写真)は5速AT、4WDは6速ATを搭載する。多段化により滑らかで息の長い加速感はもちろん、低燃費にも貢献している。6速MTも用意。

フォルクスワーゲン ジェッタ インパネ

ドイツ車らしい機能性を追求したインテリア。エアコンやナビのスイッチ類も操作しやすく、日常の使い勝手は高いレベルを確保している。

フォルクスワーゲン ジェッタ シフトレバー

すっかりお馴染みになった6速DSGは、ダイレクトなフィーリングと素早いシフトが好印象。キビキビしたスポーティな走りが楽しめる。

マツダ アテンザ フロントシート

白い本革は見た目の印象も明るく、手触りもなかなかのもの。サイドのサポートなどもしっかりしており、長距離移動での疲労も少ない。

マツダ アテンザ リヤシート

リヤシートのスペースは大柄な男性でも十分にくつろげるスペースを確保している。ただ、頭上の空間がやや不足気味なのが気になる。

フォルクスワーゲン ジェッタ フロントシート

ベースとなったゴルフ同様、シートのできはかなりいい。クッションの形状や硬さなども絶妙で、快適性も十分確保されているのに注目だ。

フォルクスワーゲン ジェッタ リヤシート

大柄な男性でもゆったりとくつろげるスペースを実現している。足元や頭上空間も十分にあるので、とても快適な移動空間といえるだろう。

マツダ アテンザ メーター

赤い目盛りがスポーティな雰囲気を感じさせてくれる。文字盤も大きめなので視認性は悪くないが、目盛りが細かいのが少し気になる部分ではある。

マツダ アテンザ ラゲッジ

欧州市場も視野に入れているだけあり、ラゲッジの広さは十分以上に確保されている。ただ、開口部の広さはジェッタよりもやや狭い印象だ。

フォルクスワーゲン ジェッタ メーター

メーターのデザインも実用性を重視したもの。中央部のインフォメーションディスプレイも文字のサイズが大きく、非常に見やすいものとなっている。

フォルクスワーゲン ジェッタ ラゲッジ

ラゲッジスペースの広さは驚くほど。ベースのゴルフでも不満はないだけに、ラゲッジを延長したセダンなのだから当然ともいえるだろう。

マツダ アテンザ vs フォルクスワーゲン ジェッタ

マツダ アテンザの2.5リッターエンジンは、実用域のトルクが太く扱いやすい特性が魅力だ。また静粛性も高いので、高速移動も快適。一方のフォルクスワーゲン ジェッタはターボとスーパーチャージャーを組み合わせたTSIエンジンを搭載。力強い走りと低燃費を両立している。走りの面でもしなやかなセッティングの足まわりを持つので、優れたハンドリングと快適な乗り心地を味わえる。