結論から書くと「もしスタイルだけで100%満足出来るというなら迷うことなく買っていい。ただ走りも期待している人はジックリ考えること」。以下、話題の輸入車、フィアット500を紹介しよう。
超魅力的なスタイルについちゃ説明するまでもない。見た通りの可愛さ、であります。フィアット500と同じ「レトロ」をテーマにしたニュービートルやミニより、オリジナルモデルの味をキッチリ出せていると思う。ちなみにベースはパンダ。
インテリアも質感こそ高くはないが、日本車ではあまり使われないホワイトを使い、ボディと同色のプラスチック板でダッシュボードをドレスアップするなど随所に「遊び心」を感じさせる。絶対的な室内空間だって十分。日帰りのドライブくらいなら大人でも不満なく乗れるリアシートを確保してます。
乗るとどうか? スタイルで深い満足感を得られていれば全く問題なかろう。1,2リッターエンジンながら絶対的な動力性能は必要にして十分。ハンドリング、乗り心地といった機能だって文句なし。毎日の相棒として付き合えることだろう。
続いて「クルマはデザインだけじゃない」と考える人を基準に評価してみたい。フィアット500のハンドル握り、まず違和感あるのが「デュアロジック」と呼ばれるラテンの小排気量車に多いロボタイズドATかと。
この変速機、普通のマニュアルマニュアルを油圧で制御するというシステム。変速するのに一呼吸掛かってしまうという決定的な弱点を持つ。結果、この手のミッションは変速のリズムに問題を抱えているものが多く、日本ではあまり評判が良くない。
フィアット500もベースになったパンダより改善されているものの、オーソドックスなトルコンATやフォルクスワーゲンのDSGに代表される新世代のツインクラッチを使った2ペダルミッションに比べるとかなり異質なフィーリング。アクセル踏んでいるのに加速しなかったりする時間が長く、クルマ好きには厳しい。
もう1つ大きな減点材料は、乗ると日本車みたいだということ。ニュービートルやミニのハンドルを握ると、明らかに日本車と違う走りの味を持っており楽しくなってくる。なのにフィアット500って、エンジンもハンドリングも趣味性を考えていない日本のコンパクトカーみたいなのだ。
スタイルが気に入って買うなら関係ないとしても、ラテンのコンパクトカーらしい楽しさを期待しているユーザーだと「うーん」と感じるんじゃなかろうか。マニュアルミッション仕様でも入れてくれればイメージも変わると思うのだけれど……。
三つ目が価格。現在ラインナップされている「ラウンジ」、225万円というおネダン。姿勢制御装置ESPやサイド&カーテンエアバッグといった安全装備まで標準装備されるものの、ミニOne(1.4リッターで6速マニュアル/218万円、6速AT/231万円)やニュービートルEZ(1.6リッターの6速ATで236万円)は手強いライバルだ。
そんなこんなで「スタイルとインテリアを気に入ったなら迷わずどうぞ」のフィアット500なのだが、今すぐ欲しいというのでなければ、近々追加される「ポップ」というベースグレード(190万円の予定)や1.4リッターエンジンを積むスポーツグレードを見てからでも遅くないと思う。ちなみにマニュアル車の導入は残念ながら今のところ期待薄のようです。