IS Fには専用のメカニズムがテンコ盛りで盛り込まれている。V型8気筒5.0Lの搭載エンジンはヤマハとの共同開発によるもので、ヘッド部分をヤマハが作り、それをトヨタの工場に運んでトヨタが作ったブロックと組み合わせているという。IS350に搭載される3.5Lエンジンと同様、筒内直接噴射(直噴)とポート噴射を組み合わせたもので、動力性能は423ps(311kW)/6600rpm、51.5kg-m(505N・m)/5200rpmの実力を発揮する。
自然吸気で423ps(311kW)からのパワーなのだから半端ではない。しかも吹き上がりはまさに一直線というくらいに滑らかで、回転の上昇に合わせてパワーが盛り上がっていく自然吸気エンジンならではのリニアなフィールが特筆モノだ。IS Fには富士スピードウェイでも試乗したが、FSWの直線ではリミッターに届くところまで一気に吹き上がっていく。回転の上昇のに合わせて高まっていくエンジン音や排気音はドライバーの気持ちを高揚させるものだ。
トランスミッションはLS460用の電子制御8速ATをベースに、マニュアルモードを加えた世界初の8速スポーツダイレクトシフトと呼ぶもの。ヨーロッパ車などに多いMTベースのDSGとは違うATベースのトランスミッションだ。このデキがなかなか良い。
Dレンジで走っているときには極めて滑らかなフィールのLS用の8速ATと同じ感覚で走らせることができる。Mモードを選べばシフトレバーかステアリングの裏側のパドルを操作することによって極めて速い変速が可能だ。変速時にはゴツゴツとしたショックが感じられ、その点においてはトヨタのATらしくないのだが、きびきびした変速フィールはスポーツセダンにふさわしいもの。シフトダウン時にはエンジンを空吹かしするブリッピングも入って気持ち良く走らせることができる。
足回りは相当に硬めのチューニングだ。速度が高い領域では高速道路の継ぎ目部分などをスムーズに越えていくのだが、路面が荒れた状態の市街地などを走るとかなりゴツゴツした印象になる。ただ、いわゆるスポーツカーの乗り心地ではなく、日常ユースでも許容できる範囲の硬さであるのがレクサスブランドのIS Fらしいところだろう。
●まとめ
IS Fに乗ると、クルマはこれほどのパフォーマンスを持つことができるのか、ということを改めて気付かせてくれるが、そのパフォーマンスが単にレーシングカー的なものとは違ったプレミアム性を備えたものであるのが並みのスポーツモデルと違うところ。
とても高い次元で、運転することの楽しさ、クルマを操ることの楽しさを教えてくれるのがIS Fだと思う。残念ながら日本では、このクルマのパフォーマンスを存分に楽しめるような環境が日常的にはない。オーナーになったらレクサスが主催するサーキット走行会などの機会にIS Fの楽しさを体感するといい。