レクサスブランドのエントリーモデルであるISをベースに、V型8気筒5.0Lの専用チューンされた大排気量エンジンを搭載し、新しい走りの次元を切り開いたのがIS F。基本性能を徹底的に鍛え込むとともに、走りの新技術を備えることでレクサスの新しいパフォーマンスを提案することを基本コンセプトに開発されたモデルだ。
このクルマが単なるISシリーズのひとつであるなら、IS500という車名になるところだが、あえてIS Fと名付けられた点が特別なクルマであることを示している。“F”は開発のホームグランドとなった富士スピードウェイ(FSW)やトヨタの東富士研究所などを意味するFとされている。
すでにBMWがMシリーズで、あるいは少しニュアンスが違うかも知れないがメルセデス・ベンツがAMGで実施している手法をまねたものといえなくもないが、レクサスならではの新しい要素もいろいろと盛り込まれている。
IS Fは発売が12月25日だったのに、発表されたのは10月4日。トヨタ広報は日産のGT-Rを意識してのことではないとは言うものの、結果として日本で最初に400psオーバーのクルマとして発表されたのはGT-RではなくIS Fということになった。IS F自体はGT-Rとは全く関係なしに開発が進められたのだから、たまたま発表時期が近かったとはいえ、もっと自然体で対応したほうが良かったのにと思う。価格もGT-Rの777万円に対して766万円というのはあまりにも意識しすぎに思える。
外観デザインはV型6気筒用のエンジンルーム内にV型8気筒用を納めるため、長さをやや拡大すると同時にボンネットフードを盛り上げている。最近の歩行者傷害低減のため、エンジンとフードの間に一定の空間が必要ためだ。これはそれなりに迫力を感じさせる要素でもあるが、横から見たときには必ずしもカッコ良いとはいえない。
フロント回りのデザインは効率的な空気の取り入れを考慮したフロント回りのエアロパーツのデザインや19インチタイヤの採用による専用のホイールのデザイン、4本出しのテールパイプなど、随所にIS F専用の要素が盛り込まれている。
全体的にはもうちょっと差別化を強めたほうが良いようにも思えるが、やや控えめで抑制の効いた外観デザインは、プレミアムスポーツサルーンにふさわしいものともいえる。見る人が見れば分かるというデザインで良いのかも知れない。