オートサロンで見かけたドラッグマシン達

 近年のオートサロンに出展される車輌といえば、その大半は"走る曲がる止まる"を総合的にグレードアップしたストリートチューン仕様が大半だ。来場者が最もリアルに想像できるという意味でも、この辺がショーの中心を担うのはまぁ当然。さらにこの路線を突き詰めるとサーキットタイムアタック仕様となり、後は人気のドリフト仕様が加わってオートサロンのラインアップはほぼ埋まる。
 というわけで最近のオートサロンは、'80年代からチューニング業界その物を牽引してきた"最高速"や"ゼロヨン"は下火も下火。これらは結果を出すためにはド外れな資金と馬力が必要なジャンルだけに、エコでロハスでガソリン価格高騰の煽りでハイオクが聖水化しているこの21世紀社会においては、どうにも盛り上がらないのは仕方なくもある。
 しかし! 筆者の個人的な思いを叫ばせてもらえば、やはり「チューニング=ドラッグレース」なのだと声を大にしたい。前述したように、この業界がここまで発展したのは'80年代のゼロヨンブームに拠るところが大きい。当時は富士スピードウェイで行われていたRRC主催のドラッグレースを始め、チューニング誌主催の大会も数多く開催され、チューニング文化の発展に大きく関係していたのだ。だが、日本のドラッグレースはレース、ストリートとも走る場所の減少によって一気にその規模を縮小。今や完全なマイナーカテゴリーとなってしまった。
 というわけでオートサロン会場で見かけるドラッグ車輌もすっかり少なくなってしまったが、そんな中でもドラッグ魂を燃やし続けている御仁は少なからずいるようで、数台のドラッグマシンを会場で発見。その多くはストリートも走るオーナーカーだったが、今年は久々にチューニングメーカーがフルレース仕様でメイクしたマシンも登場。最近じわじわと人気が再燃してきたと言われるドラッグレースの盛り上がりを微かに感じることが出来た。
 優れた結果を出すためには資金が必要なジャンルではあるが、一方でドラッグレースは"直線コースを何秒で走れるか"という、最も原始的なルールのレースでもある。つまり"隣りに並んだクルマより速く"とか、"昨日の俺より速く"、という意識さえあればすぐにでも成立するわけで、その間口は全モータースポーツの中で最も広いのだ。例え400メートルを20秒で走るクルマでも、「19秒代に入りたい」という気持ちさえあれば、もうそこでレースは成立。そうした"見る"から"やる"物へと変化を始めてきているのが昨今のドラッグレースの特徴で、この間口の広さがより浸透すれば、日本のドラッグレースの裾野も広がり、今後より高いピラミッドを形成していくことができるだろう。
 その為にもやはり、走る場所の少なさ(ドラッグ専用コースは仙台に一つだけ)は最大のネック。せめて関東近郊に専用コースが出来れば! と多くの人が願っている現状がいつか好転することを祈って止まない。

久々に登場したブランニュー・ドラッグマシン!
久々に登場したブランニュー・ドラッグマシン!
久々に登場したブランニュー・ドラッグマシン!

久々に登場した本気のブランニュー・ドラッグマシン!

ドラッグレースに積極的に参戦しているスコーチレーシングが、ブリッツと共同で仕上げたドラッグ・スープラ。完全にドラッグレーサー仕様でメイクされており、エンジンは2J-ZベースにKKKの巨大タービン2基掛け&NOS噴射で1000馬力超えらしい。エアシフターまで装備しているので、かなりのタイムを狙えそうだ。
9秒台をマークするチョップド180SX
9秒台をマークするチョップド180SX
9秒台をマークするチョップド180SX

9秒台をマークするチョップド180SX

ストリートマシンでもレースではバイアスタイヤの使用がポピュラー化しているが、この180SXはニットーのドラッグラジアル履きに拘ってタイムも9秒354を達成。ドラッグマシンらしからぬワイドフェンダーや各種エアロパーツが特徴的だが、チョップドルーフで空気抵抗を減らすなどの工夫も。ポジ側にキャンバーを切っているのがいかにもドラッグマシンだ(フル加速時リアが沈むとタイヤが最も接地する)。
女性オーナーがストリートもコロがす約900馬力のドラッグGT-R!

女性オーナーがストリートもコロがす約900馬力のドラッグGT-R!

『Option』誌にも登場する、有名な女性オーナーが所有するドラッグチューンのR32。ガレージザウルスチューンのRB26はなんと880馬力を発生。これにOS技研のシーケンシャルドグミッションを組み合わせており、相当なタイムを狙える仕様に仕上がっている。ちなみにこれでもストリートマシンだから驚く!
ドラッグもサーキットもこなすスーパーGT-R!

ドラッグもサーキットもこなすスーパーGT-R!

こちらもガレージザウルス製作のR32で、そのエンジンスペックは985馬力/101キロというモンスター! しかもドラッグを走らせれば8秒9、筑波を走れば57秒4という驚きのハイブリッド仕様だ。両立するはずのないドラッグ&周回レースをこなせるのは正直凄すぎる。

written by ポルノ鈴木