新型イスト 150G

3ナンバー化の真意とは?

新型イスト フロントマスク

 あまり知られていないことながら、トヨタはアメリカで『サイオン』という販売チャネルも持っている。簡単に紹介すると、量販車を売るのが『トヨタ』。ベンツやBMWと張り合うための高級ディビジョンとして『レクサス』。そして若いユーザー層を強く意識したのが『サイオン』といった具合。もっと解り易く説明するなら、急進する韓国車に対抗できる価格帯のクルマを売るための販売チャネルであります。

 トヨタブランドより多少装備をシンプルにし、相当思い切った価格を設定。モデルラインナップも基本的に日本仕様の『ist』と『bB』を左ハンドルにしただけだった。しかし。トヨタの狙いは外れてしまう。ライバルに想定していた韓国車がウォン高のため毎年のように値上げ。それほど安い値を付けなくてもサイオンの業績が伸びてしまった。クルマ好きのユーザー層からすれば、トヨタよりクールだと人気が出るほど。

新型イスト リアビュー

 安価なら狭くたってガマンしてくれるだろうけれど、気がつけばトヨタ車と同じような価格帯に。こうなると国内専用モデルとして開発されたistやbBじゃ厳しい。特にistは日本市場でも「リアシートが狭い」と厳しく評価されていたほど。大柄なアメリカ人だと狭くて当然。そんなことから新型istの開発に当たり「もっと広い室内スペースを!」「もっと押し出しの利くボディデザインを!」という声が強く上がったという。

先代イストのイメージを捨てればいいかも?

 それならリクエストに応え、全てを一回り大きくしましょう、となった次第。ボディサイズはコンパクトカーと言えないほど大きくなり、エンジンも1.3リッター/1.5リッターの組み合わせから、1.5リッター/1.8リッターの組み合わせにグレードアップ。狭かったリアシートだって、大柄な男性が座れるほど広い。「車格」感は先代のRAV4を凌ぐ。

 つまり新しいistはアメリカ市場を最優先して開発された結果、違う車種になってしまったと考えるべきです。実際、今まで1.3リッターのistに乗っていた人が乗り換えようとしたら、大幅値上げした車両価格に驚くことだろう。ボディサイズの大型化を頒価に盛り込んだのだ。

 ただ「違う車種」だと割り切れば、案外面白い車種かもしれません。1.5リッター車としては割高に感じる価格も(最もベーシックな150Xで165万9千円)、1.8リッターの最上級グレード車で189万円と聞けば決して高くない。押し出しの利く外観だって先代よりグレードアップしている。

新型イスト インテリア
航空機のレーダーをイメージしたというスピードメーターとタコメーター、エアコンのスイッチなど随所に遊び心を感じさせるインテリア
新型イスト リアシート
大柄な男性が長時間座るには厳しい広さだったら先代モデルのリアシートに比べると、格段に使えるようになったリアシート
新型イスト サイド&カーテンエアバッグ
新型イスト以降に発売されるトヨタの乗用車にはサイド&カーテンエアバッグが標準装備される。衝突安全性向上のための英断といえるだろう。

 興味深いのは日本で新型istを買っているユーザー層。驚くほど平均年齢が高いらしい。狙ったユーザー層から「高過ぎる」と評価されてしまったのだと思う。考えてみればistを買う予算で3列シートミニバンのウィッシュやアイシスも買える。

 そうそう。試乗インプレを完全に忘れていた。こらもう「普通」と表現するしか無い。「ファストフード店の定番メニュー的」と表現すれば解って頂けるだろうか。自動車評論家が仕事出来る余地など残っておらず。もちろん悪口ではない。安心してどうぞ、ということであります。

新型イスト150G エンジンルーム
ヴィッツ、カローラ、プレミオなどにも搭載される1.5リッターエンジン。目立つ特徴はないが、必要十分以上の性能を確保。
新型イスト180G エンシンルーム
コンパクトカーとしては贅沢な1.8リッターエンジン。1.5リッターに比べると余裕は格段に上。しかし、4速ATというのはちょっと時代遅れか?
新型イスト 16インチアルミホイール
195/60R16サイズのアルミホイール。ボディサイズを考えるとかなり大きなタイヤサイズとなるが、幸い乗り心地への悪影響は感じられない。
新型イスト180G 走り

written by 国沢光宏