静かさを極めた快適な乗り心地を実現した
今回の試乗では、LS600hLに乗って東京駅前のビルから軽井沢まで交替しながら走り、軽井沢ではLS600hでワインディングなどを走るという設定だった。まず最初にLS600hLだが、軽くアクセルを踏み込むと静かにするすると走り出す。われわれが試乗を開始する前の状態のためここではEVモードを使うことはできなかったが、それでもエンジン音はほとんど聞こえない状態だ。
都内の市街地はアクセルのオン/オフを繰り返しながら走ったが、全体に静かで快適な走りが得られるのは、ハイブリッドならではのCVT機構によるところも大きい。
適度なカーブが連続する首都高も、制限速度の範囲内で走る分には何も起こらない。比較的タイトな北池袋のカーブなども全く不安を感じさせることなく走り抜けていく。
関越自動車道に入って新座料金所のETCゲートを抜けたところなどでアクセルを踏み込むと、実に力強い加速が得られ、とにかく速いという印象。電気モーターのアシストもあってペダルをベタ踏みにするまでもなく、たちまちのうちに時速100kmに達してしまう。
時速100kmで巡航に入ると、タコメーターの針は1000回転から1200回転あたりを示している。巡航状態では電気モーターのアシストなしでエンジンだけで走っているが、それでもこの回転数だ。圧倒的に静かで快適な走りは、LSがセルシオの時代から持っていた価値を極限まで高めたものといえる。
試乗車が後席セパレートシート仕様だったので後席にも座ってマッサージを受けながら走ったが、たちまちのうちに爆睡モードに入ってしまうほどの快適さだった。
ワインディングでも軽快な走りが味わえる
軽井沢ではLS600hのバージョンSでワインディングなどを走ったが、こちらは19インチタイヤを履くこともあって、乗り心地はちょっと硬めの印象。ただコーナーなどでは軽快感のある走りを実現しており、パーソナルカーとして使うならこちらのほうが適している印象。LS600hLの後席セパレートシートパッケージとでは、車両重量が170kgも違うのだから、走りの軽快感に大きな違いがあるのも当然といえる。
標準ボディ車の軽々感とロングボディ車の乗り心地の良さを併せ持つような仕様があれば、それが最高の選択になるだろう。
いずれにしてもLS600h/LS660hLは、これまでの既存の高級車にはない価値を提示したクルマであり、しかもその価値は日本の自動車メーカーでなければ提示し得なかったものである点が高く評価できる。走りのパフォーマンスや豪華さを競うだけでなく、高い環境性能などの新しい価値を併せ持つ点にLS600h/LS660hLの存在意義がある。
●お勧めグレード
LS600hの価格はレクサスのフラッグシップにふさわしい高さだ。ベースグレードでも970万円からの設定で、LS600hLの後席セパレートシートパッケージ装着車では実に1510万円という設定になる。まあおよそ一般のユーザーには関係のないクルマといえる。ちょうどメルセデス・ベンツのSクラスとオーバーラップする価格帯だが、ハイブリッドという新しい価値によってLSがどう評価されるか、大いに注目される。
LS600hではハイブリッド用の電池にニッケル水素電池を使っている。このために重量増が大きく、トランクのスペースも大きく食われているが、これはそう遠くない将来に軽くてスペース効率の良いリチウムイオン電池に置き換えられるはず。今の時点でオーダーしても年内納車は無理と言われているくらいだから、どうせなら次のマイナーチェンジで電池が変わるのを待ってから買うのもひとつの方法だ。