日産デュアリスと、新車発表会のゲストに現れた「押切 もえ」

SUVとハッチバックのクロスオーバー

 日産は5月23日、欧州製クロスオーバーSUV「キャッシュカイ」の日本版『デュアリス』の発売を発表した。
 日本仕様は、セレナなどでお馴染みの2.0リッター「MR20DE」エンジン1機種の設定。標準タイプの「20S」と、電動サンシェード付き大型グラスルーフが標準装備の上級版「20G」の2グレードがあり、それぞれFFとオールモード4WDの2種が用意される。全車がエクストロニックCVT−M6(6速マニュアルモード付き無段変速機)と組み合わされる。

 日産ではデュアリスを、ティーダのようなコンパクトハッチの軽快さと、エクストレイルのようなSUVのダイナミックさをスマートに融合した「新ジャンルのクロスオーバーSUV」と定義。コンパクトカーから乗り換える若者世代から、高級車やミニバンなどからダウンサイジングを図る40代以上の世代まで、幅広い層にアピール出来るクルマだと胸を張る。

日産 デュアリスとCMキャラクター「パワード・スーツ デュアリス」
デュアリスのCMキャラクター「パワード・スーツ デュアリス」と
「デュアリス」発表会に登場した『押切 もえ』
押切もえ
押切もえと、「デュアリス」CMキャラクター「パワード・スーツ デュアリス」
押切 もえ
日産デュアリス(欧州名「キャッシュカイ」) エクステリア

「エクストレイル」と「デュアリス」、SUV2車の違いとは

 日産には、既に同じく2.0リッタークラスの人気SUV「エクストレイル」があり、デュアリスの登場で2種のSUVがラインナップされることになる。ここで、両車の違いについて比較してみることにしよう。

 デュアリスのボディサイズは、4315x1780x1615mm(全長x全幅x全高)。エクストレイル(4455x1765x1675mm)に対し全体にコンパクトである。
 なお、今夏に登場する予定の新型エクストレイルは、さらにボディサイズが拡大することが既に明らかで、その差はさらに広がる模様だ。

 いっぽう、スタイリングやインテリアについてもそれぞれに特長がある。エクストレイルがクロカン四駆らしいタフさや無骨なイメージを強調する(コレは新型でも継承する)のに対し、デュアリスは同社の上級クロスオーバーSUV「ムラーノ」を彷彿とさせる、スタイリッシュで都会的イメージをもたせた。そのことからも、随分と異なるキャラクターが与えられているのがわかる。

日産 デュアリス エクステリア
日産 デュアリス リアビュー
日産 デュアリス MR20DEエンジン
日産 デュアリス リアビュー
流麗でスタイリッシュ。デュアリスの都会的な雰囲気が最も強く感じられる、リア上部からの眺め。
日産 新型 エクストレイル 日本仕様(今夏デビュー予定) エクステリア
いっぽう今夏デビュー予定の新型エクストレイルは、スクエアでゴツい。こちらは、SUVらしさをさらにアピールする。
新型エクストレイル リアビュー
従来型のイメージを継承しながら、荷室のスペースを拡大し実用性をアップしているようだ。

 じっさい、欧州市場で日産がターゲットとするのは、エクストレイルのライバル「トヨタRAV4」や「ホンダCR−V」などのSUVではなく、「VW ゴルフ」や「プジョー 307」「ルノー メガーヌ」といったCセグメントハッチバックだという。

 エクストレイルの価格帯は201.6万円から241.5万円(GT系を除く)。ただし新型では2.5リッター版も追加される見込みで、価格帯も少し上位に移行するはずだ。
 それに対しデュアリスはFFタイプの20Sが195.3万円、最上級の20G(4WD)でも243.075万円とし、輸入車というハンデを感じさせないバリュー度の高いプライスで設定された。

日産 デュアリス インパネ
日産 デュアリス フロントシート
日産 デュアリス リアシート

欧州で「走り」を磨く

 デュアリスは、日産の英国サンダーランダー工場で製造される輸入車だ。現地では「キャッシュカイ」名で既に1月下旬にデビュー済みのモデルである。日本に比べ速度域は高く、また移動距離も非常に長い欧州では、ユーザーのクルマに対する要求レベルも高い。そんな中でデュアリスは、現地の欧州車を上回る”走り”の性能向上に、大きな注力が注がれた。

 サスペンションはフロント:ストラット式/リア:マルチリンク式。高剛性スタビライザーやリバウンドスプリングを採用し、重心の高さを意識させないフラットな走りを実現したという。さらに、ハンドリングと乗り心地の両立を目指したハイスピードコントロール・ショックアブソーバーには、欧州の名立たる高級車が採用するザックス社製のものを搭載する。

日産 デュアリス 前後サスペンション
サスペンション形式はフロント:ストラット/リア:マルチリンク。
日産 デュアリス用ザックス社製ショックアブソーバー
デュアリスのアシは、欧州の数々の高級車メーカーが採用するザックス社製ショックアブソーバーが支える。
215/60R17 96Hのサマータイヤと17インチアルミホイールが標準装備(20G)
215/60R17 96Hのサマータイヤと17インチアルミホイールが標準装備される(20G)。

 足回りを受け止める車体についても、日産・ルノーで既に実績のあるCプラットホームをベースにSUV向けに手を加え、開口部が大きいリア周りを特に強化することで、クラストップの高剛性ボディとした。
 また長距離ドライブでも快適であることを目指し、サポート性と乗り心地を両立したシートを開発。ベンチマークに設定した欧州Cセグメントハッチ車にも負けない性能としたという。

 なおデュアリスは、英国から輸入された後に日本の九州工場でPDI(品質の最終チェック)を行なった上で全国へとデリバリーされ、日本で生産されるモデルとほぼ同等な納期体制が組まれるという。ただしオプションパッケージのうち、VDC(横滑り防止装置)、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ、後席中央のヘッドレスト・3点式シートベルトなどをセットにした「安全パッケージ」(全グレードで136,500円増し)は受注生産となり、しかも納期が数ヶ月かかるという。
 とはいえこれらの装備は、欧州車や国産車同クラスにおいて既に標準装備化されつつあるもの。受注生産というのはなんとも理解し難い。早急な改善を望みたいところだ。

デュアリスの「安全パッケージ」に装着される6エアバッグ
デュアリスの「安全パッケージ」(オプション)に装着される6エアバッグ。
こちらは標準仕様のインテリア
こちらは標準仕様のインテリア(写真は20G)。左の写真と比較して欲しい。後席中央のヘッドレストは装着されず、中央のみ2点式シートベルトとなる。
SUVでは世界最大の開口部を持つデュアリスのガラスルーフ
SUVでは世界最大だという大開口部を持つデュアリスのスタイリッシュガラスルーフ。ワンタッチで操作出来る電動格納式サンシェードも装備される。

欧州では「新種のハッチバック」!?

 日産の欧州向けラインナップでは、従来あったCセグメントハッチバック「アルメーラ」(日本未導入)は退役済み。Bセグメントだがゆとりある空間を持つ「ノート」と、クロスオーバー車のキャッシュカイという個性的な2本立てで、同クラスを攻めている。強力なライバルに正面から対抗する正攻法ではなく、あえて異なるキャラクターをたてることでエッジを効かせ、「日産らしさ」をアピールする戦法をとったのだ。
 13,499ユーロから(英国仕様・日本未導入の1.6リッターガソリン車)という手頃なプライスも後ろ盾となり、4月末の時点で約6万台もの受注を獲得するという好調な滑り出しで、日産の作戦が狙いどおりに当っていることが分かる。

 ちなみに現地では、7対3でFFモデルのシェアが占めているという。そのことからも、悪路を制覇するような本格的SUVではなく、メーカーが主張するところの「クロスオーバー車」あるいは「新種のハッチバック車」としてユーザーがそのキャラクターを受け止めていることがみてとれる。

欧州仕様「キャッシュカイ」
欧州仕様「キャッシュカイ」。既に6万台以上の受注を獲得するヒット作となっている。
欧州仕様「ノート」
欧州仕様の「ノート」は、日本仕様に比べアグレッシブなフロントマスクが特長。
キャッシュカイ サイドビュー
「キャッシュカイ」(写真)、「デュアリス」ともに生産は英国日産自動車製造(NMUK)で行なわれる。

日本でもターゲットは「輸入ハッチユーザー」・・・でも安全装備のオプション設定には「?」

 いっぽう日本の市場の現状を見渡すと、実用性や経済性を重視したミニバンやコンパクトカーに人気が集中しているのが最近の傾向だ。反面、個性や走りの楽しさを求めるユーザーが、輸入車を含めた幅広い選択肢から自由にセレクトしている傾向もみられる。

 日産自動車 商品企画本部 セグメント・チーフ・プロダクト・スペシャリストの岩佐 洋介氏はデュアリスを「ライバルメーカーと同じような商品ではなく、明確な個性を持った提案型商品だ」と主張する。そして、日本でライバル視するのは「欧州製Cセグメントハッチバック車」だという。輸入ハッチ「ゴルフ」や「メガーヌ」などが持つ強烈な個性や走りの良さ、そして200万円台に位置する価格帯などが、デュアリスのそれと合致するというワケだ。
 しかしそれならばなおさら、欧州ハッチ車が標準で装着する安全装備が、デュアリスの場合は受注生産だという点に大きな疑問が残る。ユーザーが積極的にオプション装着することの少ない安全装備。しかし、その重要性を啓蒙すべきメーカーが、わざわざ選びにくく設定しているというのだからその真意を疑う。
 実用性や経済性だけではない「個性」を主張するデュアリスだからこそ、それらが標準装備化されることを切に希望したいところだ。

フォルクスワーゲン ゴルフ
輸入車No.1ブランド、ドイツ「フォルクスワーゲン ゴルフ」。ESP(VDC)や前・後席サイド/カーテンエアバッグ、全席3点式シートベルト&ヘッドレストは全車標準で242.0万円(1.6E・6AT)から。
ルノー メガーヌ
フランスの「ルノー メガーヌ」は、プラットホームの一部をデュアリスと共有するCセグメントハッチ。こちらもESP(VDC)や8エアバッグなどは当然標準装備。1.6(5MT)が230.0万円から。
日産 デュアリス イメージ
デュアリスの場合は「安全パッケージ」を136,500円でオプション装着すれば、SRSカーテン/サイドエアバッグ、VDC(横滑り防止装置)、後席中央ELR3点シートベルト+ヘッドレストがセットされる。

強気の「目標2000台」

 欧州「キャッシュカイ」購入者の7割は、日産車以外からの乗り換えだったという。その個性や走りの良さなどが、新しい顧客層へとアピールした証拠だろう。ちなみに6:4か、あるいは欧州市場並みに7:3くらいでFF車が人気の中心になるとメーカーでは予想する。
 日本での「デュアリス」月販目標台数は、同クラスとしては強気にも思える2000台の設定とした。岩佐氏は「日産の『元気さ』をアピールする象徴として、ブランドイメージの向上や国内需要の喚起に貢献したい」と強く意気込む。
 個性派クロスオーバー「デュアリス」が、欧州同様に日本市場でも新しい需要を掘り起こせるか、注目したいところだ。

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代表グレード
20G(2WD)
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
4315x1780x1615mm
車両重量[kg]
1420kg
総排気量[cc]
1997cc
最高出力[ps(kw)/rpm]
137ps(101kW)/5200rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
20.4kg-m(200N・m)/4400rpm
ミッション
エクストロニックCVT-M6
10・15モード燃焼[km/l]
14.2km/L
定員[人]
5人
消費税込価格[万円]
222.075万円
発売日
2007/05/23
レポート
CORISM編集部
写真
佐藤 靖彦/日産自動車/CORISM編集部