スポーティな印象のやや固めの足回り
搭載エンジンは直列4気筒1.6リッターの自然吸気DOHCと直噴ターボ仕様の2機種。BMWとの共同開発によるエンジンで、自然吸気仕様には連続可変式のバルブタイミング&リフト機構を(バルブトロニック)を備えるほか、ターボ仕様は直噴+ターボとされている。エンジンの基本はBMWのミニと同じだが、今回のGT用の直噴ターボはミニには設定がない。近くGTiに搭載される予定のハイパワー仕様の直噴ターボがミニクーパーSと同じエンジンになる。
この新エンジンの走りのフィールを確認しようと走り出したが、エンジンのフィールを感じる前に足回りの硬さが気になった。試乗会場近くの道路は路面が荒れた状態になっていたが、そこを低速で走らせるとシエロでもかなりのゴツゴツ感があり、17インチの45タイヤを履いたGTではさらにゴツゴツした印象が強くなった。このあたりを走らせている限りでは“猫足”と呼ばれたプジョーの足回りが大きく変わった印象だ。
スムーズな回転フィールのエンジンが魅力的
その足回りも芦ノ湖スカイラインのワインディングを適度なペースで走らせると、ロードホールディング性の高さが良く分かる。足回りがしっかり仕事をしているのが十分に体感できる足回りなのだ。このあたりはダンパーを車内で生産している唯一の自動車メーカーのクルマらしい乗り味になる。
エンジンは吹き上がりのスムーズさが大きな特徴で、自然吸気、ターボともいずれも気持ちの良い吹き上がりだ。自然吸気仕様は4速ATとの組み合わせで、5400rpmあたりのかなり低めの回転数でシフトアップしていくのでもうちょっと引っ張って欲しい感じがあるものの、タウンユースでは燃費にも貢献するなどのメリットがあるはずだ。
直噴ターボを搭載したGTはこのクラスのクルマとしては十分に元気の良い走りを示す。特に好感が持てるのは低速トルクの太さ。わずか1400rpmで最大トルクに達しており、これが3500rpmまで持続するが、そのトルクが24.5kg・mと2.4リッターエンジン並みの実力なのだから、コンパクトな207を元気良く走らせるのに十分な実力といえる。
●お勧めグレード
プジョー207の当面のラインナップはベースの207のほか、豪華装備の207シエロ、207GTの3グレード。207GTのみが5速MT車で、ほかの2グレードは4速ATとの組み合わせとなる。ボディサイズが大きくなって車格が向上したこともあって、価格帯も上昇している。
ベースの207でも239万円の価格が設定されていて、ハーフレザーシート、バックソナー、パフュームディフューザー、自動防眩ミラー、パノラミックガラスルーフなどが標準となる豪華装備のシエロは269万円、GTが264万円という設定だ。
このうちどれを選ぶかは相当に悩ましい選択である。ひとつの選択肢としてGTがあるが、5速MTだけというのは限定車免許のユーザーにとっては対象外になってしまうし、GTよりもさらにパワフルなエンジンを搭載したGTiの追加も予告されているだけに、今の時点でGTを選ぶかどうかは難しい。
標準エンジンの搭載車には30万円の価格差があるが、装備の違いを見ると価格差分は十分にある。買うならシエロのほうがお勧めだが、カーナビを装着したりすることを考えると予算総額は300万円を大きく超える。プジョー207の予算としてはかなり高めの印象で、206のユーザーがすんなり移行できるかどうか。
当面は1.4リッターエンジンを搭載した206スタイルも継続販売するというが、これも新ラインナップだけではカバーし切れないユーザーがいるとの判断からだろう。