商用車界に鼻息荒い新風現る!
現在商用バンの市場は、トヨタの「プロボックス」・「サクシード」でおよそ5割、また日産「AD」(及び旧「エキスパート」) が4割強という、2強ブランドによる寡占市場となっている。苦戦が伝えられる日産の3ヵ年中期経営計画「日産バリューアップ」の中でも商用車は注目株で、今後に大きな期待のかかる位置付けなのだ。今回の新型ADの投入により、同クラスの市場シェアトップを目指したいと鼻息も荒い。
新型ADは走る「SOHO」!?
この新型ADを造るにあたり、日産の開発メンバーは実際に商用バンが使われる現場へと調査に出向いたという。日頃商用バンをツールとして愛用する営業マンらと同行することでユーザーの生の声を知り、またアンケート調査では分からない本質的な課題を探ったのだ。
そこで浮かび上がったのが「コックピット(運転席周り)」「積載スペース」「イメージ」の3ツのポイント。中でも、コックピットの環境は大きな課題だらけだった。
多くの商用バンユーザーは、朝の通勤時から仕事中、そして晩に至るまでクルマと共に行動し、そこはもはや第2のオフィスと化している。なのにクルマの車内はというと、多くの場合書類やカバンなどで散らかり放題だったという。そう、これまでの商用車は「オフィス」環境に対し、あまりに配慮が足らなかったというワケ。
新型ADではそこのところに着目した。書類ファイルを置ける棚を用意し、ビジネスバッグを収めるスペースを設け、パソコンを扱えるテーブルをあつらえ、さらにはメモ書き出来るホワイトボードまで用意している!
これぞまさに走る「SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)」と言えるだろう。
思わず笑ってしまう方もいるかもしれない。しかし、確かに実際のビジネスユーザーにとってこれは、ウレシイニュースのはずだ。実際、セダン車で営業活動をしているユーザーから同様の装備が追加できないかという反響が早速あったという。例えばADと一部プラットホームを共有するセダン車「ティーダラティオ」あたりなら、ビジネスバージョンとしてすぐにでも対応出来るだろう。新たな市場が生まれるかもしれない。
シンプルなグレード構成 〜 上級グレードは未設定 〜
新型ADは、1.5と1.2リッターの2エンジン構成。FFが先行発売され、4WDはしばらく現行型が継続販売される※。グレード構成は、現在のところビジネスユーザー向けに必要最小限の装備を持った2タイプ構成。両グレードの差も、前席パワーウィンドウや電動格納式リモコンミラーの有無などにとどまっている。
例えばこれに乗用車並みの快適装備を加えたグレードがあれば、貨客両用に使用する個人事業主などの一般ユーザーにも喜ばれそうだ。
実際、既に1BOXバンの世界ではそういうユーザーも多い。折りたたみ使用前提だった薄くて小さいリアシートを立派なものに変え、ミニバン並みの快適装備を与えたもので、キャラバンなら「GX」(先日さらに特別仕様として「スーパーGX」も追加された)、トヨタのハイエースなら「スーパーGL」というグレードがそれにあたる。仕事から週末のレジャーまで、クルマをフルに活用するユーザーから絶大な支持を集めている人気グレードだ。
まあ確かにこの手法でADを造ると、実は自社の5ナンバーワゴン「ウィングロード」と競合してしまいそう、という悩ましい問題もあるのだけれど・・・。
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軽快な走りにビジネスのスピードもアップ!?
試乗は、お台場周辺の埋立地エリアを中心に市街地で行なった。試乗車はコンパクトカーでおなじみのHR15DEエンジンを積むVEグレード(FF)で、4速ATと組み合わされる。ちなみにMT車は1.5、1.2リッター共に用意されていない。
乗り出して分かるのは、1.5リッターの扱いやすいパワー。街中も軽快にスイスイと走らせることが出来る。今回試すことは出来なかったが、他の日産コンパクトカーの快適な走りから考えても、高速道を使った移動も楽にこなせるはずだ。ボディ後半部(荷室部)の遮音が不利なバンボディながらも、セダンボディのティーダラティオあたりと比べて極端に騒々しい、ということも感じられなかった。確かに空荷状態で走るとリアの硬さが少し気になるが、許容の範囲だろう。フロントサスは逆にソフトなセッティングだ。
なお筆者自身が乗り比べたワケではないので断言は出来ないが、日産の方の説明ではライバルのトヨタ プロボックスに比べ静粛性、乗り心地共に大きく勝っていると言うハナシ。機会があればぜひ試してみたい。
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全車ABS標準装備!
新型ADは、ライバルの商用車に先んじて4輪ABSを標準装備する。コストが最優先されるクルマだからこそ、この姿勢はウレシイ。ライバルではレスオプションや未だに装着されないモデルもあるくらいだからなおさらのこと。
しかし気になったのが足周り自体だ。もともとソフトなセッティングということに加え、165R13のタイヤは1トンを超えた車重に対しやや小さい模様。ちょっとしたカーブでも車体もぐらっと大きく傾き、その上「キキキ」とスキール音をたててしまうのだからちょっと驚く。もちろん、そんなに飛ばし過ぎているワケではない(はずだ)。
タイヤはコストにも大きく関係する部品だろうが、出来ればあとワンサイズ、大きなタイヤとすることはかなわないことだろうか。これは安全性にも寄与するはずなのだから。
余談だが、ここでさらに横滑り防止装置「ESC」(日産では「VDC」と呼ぶ)がセットされていれば、なおのことパーフェクトだろう。確かに安全装備は非常に有効なものでもありながら、カタログを飾るには地味な装備である。メーカーが主導でないと絶対に広がらないものなのだ。しかし商用バンは、雨の日も雪の日も関係なく、黙々と働かないといけない仕事のための道具。だからこそ、高い安全性は高い商品力に繋がる、と主張出来る。
まだまだ一部の高級車にしか装着されていないESCだが、ここはむしろ乗用車より先んじてみる、というのはいかがだろうか。今後の展開に期待したい。
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「バリューアップ計画」に大きく貢献する日産のビジネスカージャンル
ちなみに新型AD VE(FF)の車両重量は1140kg。ウィングロードのベーシックグレード15RS(FF・4AT)が1180kgだから、装備差を考えれば補強材の存在が大きいことが分かる。さらにインパネなども専用設計である。従来、この造り分けの工程がコスト高や収益率の低さにつながっていたという。
しかし今度のADではここに根本的に見直しを図った。開発初期から管理を徹底し、従来多くを見逃していたという共有部品の無駄を省き、コストを抑えたという。てっきり価格の安いADはあまり儲からない車種だとばかり考えていたが、開発担当の方のお話では利益率で言うとウィングロードと同じか、あるいはむしろADのほうが良いというのだから驚く。
先の「日産バリューアップ」では、2007年度グローバル小型商用車の販売43万4千台と営業利益率8%を掲げている。実は04年度の実績に対し40%増、利益率は2倍の目標値なのだというから凄い。しかし既に06年度中にこれを前倒しで達成できる見込みだという。
その利益を見込んで、新型ADにも十分な開発原資が与えられたようだ。さらに今後続々と商用モデルが発表されてゆく予定だと日産では話す。
実際、1月度の速報値でも新型ADの売れ行きは好調なようで、セグメントシェアNo.1を獲得している。乗用車の国内不振ばかりがニュースになってしまうが、日産の商用車ジャンルの売れ行きにもしっかり注目してゆきたいところだ。
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( レポート/写真:徳田 透(CORISM編集部) )
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代表グレード
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AD 1.5 VE(FF・4AT)
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ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
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4395x1695x1500mm
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車両重量[kg]
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1140kg
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総排気量[cc]
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1498cc
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最高出力[ps(kw)/rpm]
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109ps(80kW)/6000rpm
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最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
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15.1kg-m(148N・m)/4400rpm
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ミッション
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フルレンジ電子制御4速AT(E-ATx)
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10・15モード燃焼[km/l]
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16.2km/L
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定員[人]
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2[5]人
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税込価格[万円]
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135.765万円
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発売日
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2007/1/19
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写真/レポート
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徳田 透(CORISM編集部)
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ADバンのカタログ情報
- 平成11年6月(1999年6月)〜平成19年1月(2007年1月)
- 新車時価格
- 89.4万円〜281.9万円
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