他に類を見ないクロスオーバー・ミニバン
三菱自動車は、約13年ぶりとなる1BOXタイプミニバンの老舗ブランド「デリカ」のフルモデルチェンジを実施し、1月31日より発売を開始した。
新型は「5代目デリカ」から由来する「デリカD:5(ディーファイブ)」名を名乗る。『アクティブな生活を大事にする、あなたの元気を応援します』のスローガンをもとに、ミニバンの「スペース」「使い勝手」とSUV・クロカンの「走破性」「力強さ」などを併せ持つ、他に類を見ないモデルとなった。
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縦と横のラインだけを使ったシンプルなリアビュー。風洞実験により、テールゲートの落とし込み角や丸みの適正化も図っているという
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「ジープ」「パジェロ」や「デリカ」など、三菱自動車が長年に渡り培ったオフロード車の伝統を巧みに生かした、力強いフロントマスク。
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足回りは225/55R18マッド&スノータイヤと光輝タイプアルミホイールの組み合わせが標準。ただしベーシックなMグレードのみ215/70R16+ホイールカバーとなる。
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新型デリカD:5と開発責任者のプロダクトエクゼクティブ 中尾 龍吾氏。(1月31日に都内で行なわれた「新型デリカD:5」発表会会場にて)
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つい先日ゴールを果たした2007ダカールラリーにサポートカーとして7000kmを走破した「チーム レプソル 三菱ラリーアート デリカD:5」。砂漠の砂もそのままに発表会場に展示されていた。
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発表会場では、デリカD:5の高い悪路走破性を示す対地障害角をアピールする展示が行なわれていた。SUV並みのグランドクリアランスと対地障害角が見てとれる。
歴代デリカの伝統を継承したエクステリア
新型デリカD:5は歴代デリカの伝統を継承し、オフロードでの高い走破性を予感させるスタイルが与えられた。特に、スペースの広さを感じさせつつ、ヨンクらしい力強さも感じられるクリーンで精悍なスタイルが自慢だ。地上高は高められ、さらにクロカン4WD並みの前後のアングル角(対地障害角)を取りグラウンドクリアランスを確保する本格派である。そのいっぽうで直線基調の基本フォルムにより効率的なパッケージングも実現し、高いユーティリティも確保している。
デリカD:5はエクステリアだけで見れば、大柄なモノフォルムミニバンの先代「デリカスペースギア」より、むしろ先々代に相当するコンパクトな1BOXワゴン「デリカスターワゴン」の後継車、といえるかもしれない。
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三菱デリカ歴代モデル「初代デリカ」(1968〜1979)
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三菱デリカ歴代モデル「3代目デリカスターワゴン」(1986〜1999)
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三菱デリカ歴代モデル「4代目 デリカスペースギア」(1994〜2007)
高いけど、低くて広い!?
新型デリカD:5で最も特長的な「高い地上高」。先代デリカスペースギアに比べても最低地上高をさらに20mmアップし、走破性をより高めている。またそのいっぽうで全高は100mm低く抑えることで、デリカD:5独特のフォルムを生み出している。しかし基本パッケージングの最適化により室内高は100mmも拡大し、十分な室内空間を確保している点が最新モデルならではだ。
3列シートの車内は、前席から2+3+3人掛けのレイアウトで計8名乗車可能。セカンド・サードシートにはロングスライド機構を採用し、乗員の十分な膝前スペースを確保しながらも、必要に応じて十分な荷室スペースが得られる設定とした。またシート自体についても、フラットシートアレンジを可能としながら、クラストップのシートバック高や十分な厚みを持たせることで、快適な掛け心地を目指したという。
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全車電子制御4WD+ASC標準装備で高い走破性を実現
また特徴的なのは、現時点では新型デリカD:5は4WDのみのラインナップとなる点だ。4輪駆動のシステムは、同社のSUV「アウトランダー」に採用されている電子制御4WD。2WDモード、4WDオートモード、4WDロックモードの3ツの駆動モードからセレクト出来る。
この電子制御4WDに加え、ASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)を全車標準装着するところに注目したい。ASCは急ハンドルや滑りやすい路面での横滑りの挙動を、電子的にブレーキ、エンジン、駆動系などを総括制御する横滑り防止装置と、ホイルスピンを抑制するトラクションコントロールを兼ね備えたもの。このASCと電子制御4WDの組み合わせにより高い操縦安定性を実現するとともに、本格的なクロカン4輪駆動車並みの高い走破性も確保出来たという。
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FFモード、4WDオートモード、約1.5倍のリア駆動力を配する4WDロックモード、これら3つの駆動モードを持つデリカD:5の電子制御4WDシステム。
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三菱 新型デリカD:5のマクファーソンストラット式フロントサスペンションは、基本シャシーを共有する同社のSUV「アウトランダー」と同等のものだ。
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一方のリアはトレーリングアーム式マルチリンクサスペンションを採用。こちらは多人数乗車や積載を行なうデリカD:5にあわせコイルスプリングとショックアブソーバーを別置きに配した。
リブボーンフレームの堅牢・安全ボディ
開口部の大きい1BOXタイプボディだけに、新型デリカD:5では環状構造の「リブボーンフレーム」によりボディ剛性アップを図った。もちろん、三菱の衝突安全ボディ思想「RISE」により、衝突時の安全性についても、社内テストでは国内衝突テストJNCAPの最高ランク6ツ★レベルに相当する実力を誇るという。その他、運転席ニーエアバッグ、SRSカーテンエアバッグなどの設定や、セカンド・サードシートの強度アップやレイアウトに配慮した荷物侵入抑制シートの採用など、最新モデルに相応しい安全仕様となっている。
また外観でも、軽衝突時に復元性の高い樹脂フェンダーを採用するほか、3分割の前後バンパーでSUVらしい力強さをアピールしつつ、部分補修に対応する機能的なデザインとする。
さらにノーズビューカメラ、サイドビューカメラ、リアビューカメラの3点をセットにした「マルチアラウンドモニター」は2面を1画面に映すマルチビュー画面機能を搭載し、車両周辺の死角をほぼ解消することが出来たという。ただしこちらは一部グレードのみの装着となる。出来れば全車に設定してほしい装備だ。
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「安全・安心」を生み出す『リブボーンフレーム』の模式イメージ。まるでクジラかゾウの肋骨(ろっこつ)のような、いかにも堅牢そうなイメージだ。
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側方からの衝突に対応するSRSカーテンエアバッグ。三菱車初だという全席対応式で、乗員の頭部を保護する。もちろん、全席の乗員がシートベルトを装着することが前提だ!
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新型デリカD:5のフロント及びリアのバンパーは3分割構造。左右には別体のスキッドプレートを採用しSUVらしさもアピールする。フェンダーは三菱車初の樹脂製を採用。軽い衝突でのダメージも少ない。
2.4リッターMIVECエンジンが生み出す余裕の走り
エンジンは、アウトランダーなどに積まれる2.4リッター DOHC 16Vエンジン「4B12」型。吸排気可変バルブタイミング「MIVEC」を採用し、最高出力170ps(125kW)/6000rpm、最大トルク23.0kg-m(226N・m)/4100rpmを発生させる。また平成17年基準排出ガス規制75%低減レベル(★★★★)を達成している。全車がINVECS-III CVTとの組み合わせになり、「G-Power Package」以上のグレードでは6速スポーツモード機能が追加される。燃費は10.15モードで10.4km/Lをマークし、平成22年度燃費基準+10パーセントを達成し、グリーン税制の対象となっている。
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ノーズ・サイド・リアビューカメラの3点セットから構成されるマルチアラウンドモニター。背が高く死角が生じがちなミニバンには必須な装備といえる。「G-NAVI package」以上に標準設定。
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トランスミッションはINVECS-III6速CVTを採用。「G-Power package」以上のグレードではさらにパドルシフト付きのスポーツモード機能を追加する。
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2.4リッター MIVEC DOHC 16V 4B12型エンジンを横置きに積む。最高出力170ps(125kW)/6000rpm、最大トルク23.0kg-m(226N・m)/4100rpmと十分なパワー・トルクを発生させる。
cocochiインテリアで快適な車内環境
新型デリカD:5には、乗員が快適に過ごせるインテリアの機能も多彩に用意されている。
「cocochiインテリア」は、「クリーン」「ストレスフリー」「リリーフ(安心)」の3つのテーマとしたコンセプト。生地表面にフッ素樹脂でアクリル樹脂をバインダーし、撥水・防汚機能を持ったシート生地や、UV&ヒートプロテクトガラス、さらに消臭天井や脱臭機能付きクリーンエアフィルターなど、乗る人に優しく快適な車内環境を目指したという。
グローブボックスは上下2段式。大容量を誇る照明付きアッパーグローブボックスには保冷・保温機構を加えた他、底面トレイは取り外しができ、ロア部と一体化することで2リッターのペットボトルを2本立てて収納することも可能だという。
また調光機能付きのリラックスルームイルミネーションを設定するほか、3列席それぞれの頭上に設置されたトリプルパノラマルーフも全車にオプション設定するなど、様々な趣向が施される。
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機能性や使い勝手を損なわないよう、エクステリア同様極めてシンプルにまとめられたインパネ。しかし実際にはディテールに至るまで細やかな配慮が与えられている。
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上下2段式のグローブボックスはアッパー側の底面トレイを取り外すことで、2リッターのペットボトルを2本立てて収納することも可能とする。
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3列各席を明るく照らすトリプルパノラマルーフは全車にオプション設定。センターのみ電動開閉可能で、他はチルト式となる。全てサンシェードが付く。
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3列目シート
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2列目シート
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フロントシート
オーディオ面では、12スピーカーにクラス最大860Wのハイパワーアンプを搭載し、5.1chシアターサラウンド機構を内蔵した「ロックフォードフォーズゲートプレミアムサウンドシステム」を設定。ドアのエンクロージャー化やデットニングなど本格的なチューニングも施され、臨場感溢れる自慢のシステムとなっているという。また7インチワイドモニタ付きHDDナビ、DVD内臓後席9インチワイドディスプレイなど、現代のミニバンに求められるエンターテイメント性もばっちりだ。
製造は三菱自動車の子会社「パジェロ製造」で行なわれる。価格は「M」グレードの261.45万円から「G-Premium」341.25万円まで。
ボディカラーは7色だが、ボディ下部をグレー系もしくはシルバー系(色毎に異なる)に塗り分けたツートンカラーと、モノトーン(1色)の2パターンから選ぶことが出来る。また内装色もダークグレーとベージュの2色からセレクト可能なのがうれしい。月販目標台数は2300台の設定。
三菱ファンにとっても待望の新型ミニバンである「デリカD:5」。発売日の時点で、既に3400台もの受注を受けているという。その売れ行きに注目が集まる!
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7インチワイドディスプレイHDDナビ(MMCS)を装着したインパネ。30GBの大容量を誇り、ミュージックサーバー機能も搭載する。またVTRアダプターから携帯音楽プレーヤーや地デジチューナーの入力も可能だ。
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DVD内蔵後席9インチワイド液晶ディスプレイ。「ロックフォードフォーズゲートプレミアムサウンドシステム」を装着すれば5.1chドルビーデジタルシアターサラウンドシステムも楽しめる。また赤外線ヘッドホンも付属する。
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サードシートはオーソドックスな左右跳ね上げ式。5:5に分割でき、シチュエーションに応じたアレンジが可能だ。また340mmのロングスライド機構とすることで、荷物を積みながら定員乗車することも可能。その際にも十分な足元スペースを確保する。
新型デリカD:5のライバルとは
新型デリカD:5は、Mクラスミニバン「ホンダ ステップワゴン」「トヨタ ノア/ヴォクシー」「日産 セレナ」などの5ナンバーミニバンが直接のライバルとなる。しかしデリカD:5のボディサイズはこれらに比べ一回り大きく、またエンジン排気量も2.4リッター・4WDのみの設定。さらに価格帯もやや上に位置している。そのことから、Lクラスの「トヨタ エスティマ」やLLクラスの「ホンダ エリシオン」「トヨタアルファード」「日産 エルグランド」などの2.4リッター(2.5リッター)版4WDモデルも十分比較の対象となるだろう。
ボディサイズや価格帯で観ると、ちょうどMクラスとLクラスの間に飛び込んで、独自のポジションを狙った格好だ。
しかし高い地上高を持つ4WD車、というキャラクターはやはり独特であり、真のライバルはSUVとなるかもしれない。「トヨタ ハリアー」「ホンダ CR−V」「日産 ムラーノ」「マツダ CX−7」のほか、3列シート車を有し価格帯も重なる「トヨタ クルーガー」「三菱 アウトランダー」などは、実際の商談の場でも比較対象となるケースが多いだろう。
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代表グレード | G-NAVI package(4WD) |
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4730x1795x1870mm |
車両重量[kg] | 1780kg |
総排気量[cc] | 2359cc |
最高出力[ps(kw)/rpm] | 170ps(125kW)/6000rpm |
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 23.0kg-m(226N・m)/4100rpm |
ミッション | INVECS-III スポーツモード機能付き6速CVT |
10・15モード燃焼[km/l] | 10.4km/L |
定員[人] | 8人 |
消費税込価格[万円] | 313.95万円 |
発売日 | 2007/01/31 |
レポート | 徳田 透 |
写真 | 和田 清志/三菱自動車工業 |