トライアル世界選手権ウイダー日本グランプリ

そんなトコ走れるんですか? 超絶テクニックの連続ワザを堪能!

 トライアルの世界選手権日本グランプリを観戦するチャンスをいただいた。もともとオートバイには興味があるが、ロードレース派である。トライアルは減点方式でイマイチだれがトップなのか、すぐに分からないという難しさとオートバイらしい疾走感に希薄なため、正直あまり興味がなかった。ところが、何事もそうだが「食べず嫌い」はいけないということを痛感することになった。
 
 日本グランプリが行なわれるツインリンクもてぎに着き、まるで壁のような岩肌に設置されたコースを目の当たりに。もはや人が登ることすら難しいと思えるほどのものだ。岩肌は厚化粧のオバちゃんのファンデーションのように、今にも崩れ落ちそうなほど。

 こんな難所をいかに足を着かずにクリアするのかがトライアル競技。制限時間内に設定された多くのセクションを走破しなくてはならない。成績は減点法。足つき1回で減点1、2回で減点2、3回以上で減点3、コース外走行や転倒、1分半の規定時間オーバーなどが減点5となる。
 

意外と緻密にルートを探す! 

トライアル世界選手権ウイダー日本グランプリ

 そうこうしているうちに、難関セクションに続々とライダーが集結。まずは、下見。ライダーは自分の通るルートをジックリとチェックする。ときには、足で地面を踏みつけて地面のグリップを確かめるようにして歩く。 
 ライダーには帯同する「マインダー」と呼ばれるスタッフがいて、彼らと打ち合わせをしながらコースどりなどを決めていく。このマインダーという人たちは、レース中ライダーに指示したり、崖から落下するマシンやライダーを支えるなどしてくれるお助けマンでもある。

 さあ、スタートだ。エンジン音が高まったと思った瞬間マシンは空中を飛ぶかのごとく、ほとんど垂直に切り立った山肌をなめるように疾走する。「ありえない!」そんな言葉がついつい出てしまう。思わず見とれてしまうぐらいの美しさと迫力だ。

 ボクが見ていたセクションは、ほんの数人がクリーン(減点0)を記録しただけで、ほとんどの選手が減点5という超難関セクション。クリーンの選手も減点5の選手との差はなんなのか、その差はまったく分からなかったが気分は爽快だ。

 ただ、あまりの難関セクションのためかチャレンジせずに減点5で済ませてスルーする選手が何人かいた。少なくとも観客がいて、興行として成り立っているスポーツなのに最初からチャレンジもしないとは正直なところ閉口した。そんな選手と果敢にもチャレンジをし、失敗した選手の減点が同じというのは、トライアル初体験のボクでも不公平を感じる。

快適観戦可能なツインリンクもてぎ

トライアル世界選手権ウイダー日本グランプリ

 今回のトライアルでとくに感じたのは、選手とマシン、そして観客の距離がものすごく近いということ。選手とマインダー、選手同士がコースを見ながら話す声すら聞こえる距離で競技を見られるのだ。その迫力といったら・・・。

 とくに、日本グランプリが行なわれたツインリンクもてぎは、サーキットを利用したセクションや自然を整備したセクションなどが機能的に配置されていて、とても効率よく観戦できる。ヨーロッパなどでは、自然の地形で山の中で行なわれるため泥や汗でドロドロになるのはもちろん、セクション間の移動距離が長かったりと、効率的な観戦には根性とキャリアが必要といわれているが、ツインリンクもてぎでは普段の軽装でも汚れることすらないのも魅力だ。それでいて、チケットもリーズナブル。当日券でさえ大人5,000円(前売り4,000円)、中学生以下なら700円。さらにファミリー(大人2人と駐車代、中学生以下の子供がパックにになったもの)と呼ばれるさらにリーズナブルなチケット(9,000円)も用意されている。ツインリンクもてぎにはレース観戦以外にも子供が遊べる施設もあるので、子供も大人も満足というところだろうか。
 
 観戦した6月3日のレース結果は、スペインのボウ選手が優勝。04年に日本人初のチャンピオンに輝いた藤波選手は惜しくも4位という結果だった。藤波選手はイマイチの結果となったが、初のトライアル観戦は想像以上の面白さに大感動。選手をとにかく身近に感じるモータースポーツである。みなさんも来年の日本グランプリを観戦してみてはどうだろうか。

トライアル世界選手権ウイダー日本グランプリ
次の障害物にチャレンジ前の藤波選手。理想のラインをイメージ中。
トライアル世界選手権ウイダー日本グランプリ
超難関ポイントでのクリーン(減点0)。その難しさを目の前にしているファンだけに、クリーンが出ると思わず熱くなる!
トライアル世界選手権ウイダー日本グランプリ
ツインリンクもてぎには、このような人工的なセクションも用意され、観客を飽きさせないだけでなく集中して観戦できる場所も提供している。
達人プロフィール: 大岡 智彦
職業:コリズム編集長
自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。