昨年秋に受注が始まり、今年の始めからデリバリーが開始されたケイマンSに乗りました。ケイマンSは、いわゆる“ボクスター クーペ”で、ボクスターのシャシーや足回りをベースにしています。ポジション的にはボクスターよりは上で、911の下という、両車の間を埋めるモデルとして開発されています。
搭載されるエンジンも、またその中間です。ボクスターは2.7&3.2リットルで、911は3.6&3.8リットルなのに対し、ケイマンSは両車の間の3.4リットルに設定しています。でも、ケイマンは今のところ、上級車と思われるSモデルしかないので、いずれもう少し小排気量のベースモデルも設定されてくると予想されています。
ケイマンのスタイリングはフロントはボクスターに似ていますが、リヤ周りは今までのポルシェにはない雰囲気に包まれています。同じクーペの911はリヤエンジンなのに対し、ケイマンはミッドシップなので、ルーフラインからの傾斜が大きく、リヤフェンダーも大きく膨らんでいるので、より戦闘的なスタイリングに仕上がっています。968以来のハッチバックボディを採用しているのも大きな特徴です。
インテリアはボクスターとほぼ同じ。シートのすぐ後ろにエンジンがあるので、定員は2名になりますが、エンジンの上や、その後ろにもラゲッジスペースが用意されています。もちろん911同様に、フロントフード下にも深くて意外に大きなトランクもあります。
ケイマンの走りは予想通り素晴らしかったデス!エンジンパワーは295PSと、フェアレディZと同じようなモンですが、その味付けはさすがポルシェと思わせてくれるものでした。街中の低速域ではギクシャクすることもなく、低速トルクもソコソコあるので全然普通に扱えます。
でも、ひとたびアクセルを全開すれば、その雰囲気は一気に変貌します。4000回転ぐらいから高速カムに切り替わり、回転は瞬時に鋭さを増し、6000回転ぐらいから、さらに伸びます。この高回転の気持ちよさは、ポルシェのフラット6でなければ味わえないものでしょう。もちろん911にも似たテイストですが、3.4リットルという排気量と最新のヘッドを組み合わせた吹け上がりの軽さはケイマンS独特のものといえるでしょう。
ハンドリングもミッドシップの恩恵で回頭性がよく、なおかつ重量バランスがいいので、非常に安心感があります。911も限界は高いのですが、リヤヘビーという先入観があるので、おいそれとは攻め込めませんが、ケイマンならちょっとクルマの限界を試してみたくなります。それぐらい安定感があります。
ケイマンSの価格はMTで777万円(5ATのティプトロSは819万円)と、価格的にもボクスターと911の間。やっぱり、それなりに高いですが、このスタイリングとポルシェのブランド、911にも肉迫する走りを考慮すれば充分に納得できる内容だと思います。
久しぶりに新車でも欲しいクルマに試乗しましたが、やっぱり800万円近い資金はないので、次回は現実的に、今狙い目のポルシェの中古車をレポートしたいと思います。
今回試乗したケイマンSは、内外出版社発行の「輸入車中古車情報5月号(3/20発売)」で取材した時のものです。そちらにはGTレーサーでもある松田秀士さんのインプレッションが掲載されていますので、是非そちらもご覧下さい。