ジックリ見れば見るほど味がでる個性派スタイル
味わい深いデザインだ。NEWキャデラックSTSを30分ほど眺めていたら、ふとそんな気持ちになった。正直なところファーストインプレッションは、あまりに強烈な個性を放つボディデザインに少々戸惑った。ところがグリルから、そしてバンパーから流れる彫りの深い造形などなど、細部を眺めていくと「なんだかカッコイイじゃない!」に変化してきたのだ。
サイドビューもなかなか痺れる処理が施されている。ボディサイドを流れるキャラクターラインは、先端から後端にかけて触れれば手が切れるようなシャープなもの。まるで、ライオンなどの肉食獣が獲物を狙って、今にも飛びかからんばかりのフロントがグッと低く見せたクラウチングスタイルが、いかにもスポーツモード全開だ。さらに、ボディ下部で一度絞り込み、ボトム部でフレア形状にしたサイドステップも、まるでエアロパーツを装着したようなディテールへのこだわりを感じさせる。絢爛豪華で押し出しの強い先代キャデラックに比べると、明らかに上品でスポーティな印象が強い。
走りの上品感を求めるために、高級車の世界標準に合わせて駆動方式がFFからFRに変更された。とくに、ヨーロッパの高級車に負けないためにも、走りの水準を高めるという点において、やはりFRが最適なようだ。NEWキャデラックの4.6リッター車には、AWD(全輪駆動)も用意されている。
今のところ、日本に導入されるNEWキャデラックは、すべて左ハンドル。少々、使い勝手という意味では残念なポイント。アメ車といえば、V8エンジンというわけでNEWキャデラックには4.6リッターのV8エンジンが搭載される。このV8エンジンは、先代のキャデラックのFFからNEWキャデラックのFRという駆動方式の変更に合わせ、約80%もの部分でFR用のエンジンとして変更されているという。そのV8エンジンは、324馬力のパワーと42.8kg-mという怒涛のトルクをアウトプットする。V8にこだわらないという人向けには、3.6リッター(257馬力/34.8kg-m)も用意されている。3.6リッター車は、来年春以降の導入予定だ
インテリアは、エクステリアに比べると意外なほどオーソドックス。ユーカリ・ウッドをタップリっと使った高級感あふれたもの。高級車らしい走りを支える足まわりは、ドイツのザックス社製ショックを使用。日本仕様では、ドライバーの好みに応じて一般走行とスポーツの2モードの切り替え可能な世界最速のリアルタイムダンピングシステム「マグネット・ライド・コントロール」を4.6リッターV8モデルに標準装備した。
前モデルの押し出しの効いた少々ワルっぽいキャデラックから、イッキに上質でスポーティ路線へと大きく変化したNEWキャデラック。ヨーロッパの競合と真っ向勝負ができる仕上がりだ。NEWキャデラックに少しでも興味があるのなら、まずはスグそばでジックリと観察して欲しい。もしかしたら、新しい発見があるかも・・・。