バッテリー電気自動車(以下BEV)というと、エコカーのイメージが強い。しかし、BEVは強大なトルクと低い重心高、電光石火のアクセルレスポンスなど、スポーツカーに必要な要素も併せ持つ。
今回は、そんなBEVのスポーツ性を際立たせたモデルである韓国のヒョンデ アイオニック5と、日産のレース活動を支えるNISOMOがチューニングしたアリアNISMOを徹底比較評価した。
ヒョンデ アイオニック5Nの特徴
韓国のヒョンデは、世界3位の自動車メーカーへの急成長を遂げた。
そのヒョンデのBEVとして販売されていたSUVがアイオニック5だ。これをベースとしてスポーツモデルとしたハイパフォーマンスBEVが、2024年6月に導入された「アイオニック5N」だ。「N」の名の由来は、韓国にあるNamyang(ナムヤン)R&Dセンターと、ドイツのサーキットNürburgring(ニュルブルクリンク)の頭文字である。
アイオニック5Nは、ハイパフォーマンスブランド「N」が掲げる3つの柱である「コーナリング性能」、「サーキットを本気で走れる能力」、「日常もドライビングを愉しむ」を実現した。モータースポーツで培ったテクノロジーを兼ね備えたモデルとなっている。
アイオニック5Nのパワートレインは、フロントとリアそれぞれにモーターを搭載し、システム合計出力は609psを発生する。バッテリー総電力量は84kWhで、満充電時の走行可能距離はWLTCモードで561kmを達成している。さらに「Nグリンブースト」を使用すると最高出力は650psとなる。
組み合わされるトランスミッションは、ギアシフト音を模倣するNeシフトを用いた。これはエンジン車に搭載したNブランド車に搭載されている8速デュアルクラッチトランスミッションとエンジン音を忠実に再現している。
駆動方式はNモデル初の四輪駆動だ。最高出力650psというハイパワーをしっかりとコントロールできるように採用されたのだろう。「Nトルクディストリビューション」というシステムは、各軸の強力なモーターを使用してフロント、リアトルクを完全に可変的に制御する。
新たに開発した「Nドリフトオプティマイザー」は、ハードウェアとソフトウェアの連携によりドリフト角度を補助してくれる。ドリフトを終えるとフロントモーターが即介入し、直ちに加速できるようにサポートする。
日産アリアNISMOの特徴
日産が2020年に新時代のBEVとして発表したのが、クロスオーバーBEVのアリアだ。アリアはBEVならではの力強い加速、滑らかな走り、静粛性、心地良い室内空間を兼ね備えたスタイリッシュなSUVだ。
先述のアリアを、日産のレース活動を支えるSMOが専用チューニングしたのが2024年3月に登場した「アリアNISMO」だ。アリアB6/B9のe-4ORCEをベースに風格と高い空力性能を併せ持つ新世代 BEVと言える。NISMO開発の専用得エアロやサスペンションなどにより、高次元のハンドリング性能と爽快な旋回性を誇る。
アリアNISMOは、ベースモデルのアリアに対して、最高出力を約10%向上させた。さらにNISMO専用の加速チューニングを施したことで、圧倒的な動力性能を引き上げ、気持ちの良い加速を実現している。
専用のNISMOドライブモードでは、レスポンスを最大化し、BEVならではの加速力をフルに発揮するためのチューニングを施している。
ハイパワー化したパワートレインに合わせ、専用タイヤと軽量・高剛性を両立した20インチアルミホイールを装着した。また、シャシーを構成する各部品にもNISMO専用チューニングを施すことで、車両の安定性と回頭性を高め、軽快で滑らかな走りを実現している。
駆動方式は、「NISMO turned e-4ORCE」を採用。電動4輪駆動制御技術であるe-4ORCEにNISMO専用のチューニングを施したものだ。限界走行時においても高いライントレース性能を実現し、思い通りのコーナリング性能を実現している。
満充電時の航続距離は、NISMO B6 e-4ORCEが460km(バッテリー総電力量66kWh )、NISMO B9 e-4ORCE が560km(ベース車、バッテリー総電力量91kWh )となっている。
電費性能に優れたアイオニック5N
電費比較
アイオニック5Nの評価は4.5
アリアNISMOの評価は4.0
アイオニック5Nの一充電走行距離(WLTCモード以下同)、電費は以下の通り。
アイオニック5N
一充電走行距離5 |
561km |
総電力量(バッテリー容量) |
84kWh |
電費(航続距離[km]÷総電力量[kWh]) |
約6.7km/kWh |
アリアNISMOの一充電走行距離(WLTCモード以下同)、電費は以下の通り。
アリアNISMO B9 e-4ORCE
一充電走行距離 |
504km |
総電力量(バッテリー容量) |
91kWh |
電費(航続距離[km]÷総電力量[kWh]) |
約5.5km/kWh |
*アリアNISMOのスペックは非公表。ベース車に対して、約10%程度一充電走行距離は短くなるとのこと。これをベースに計算したため参考値。
アイオニック5NとアリアNISMOの共通点は、前後にモーターを搭載し、駆動方式は4WDを採用しているところだ。
アイオニック5Nは、最高出力226psを発生するフロントモーター。そして最高出力383psを発生するリアモーターという2つのモーターを搭載し、システム合計出力650ps(ブースト時)を発生する。バッテリーの総電力量は84kWhで、一充電走行距離はWLTCモードで561kmを実現している。
アリアNISMOは、バッテリー総電力量66kWhのNISMO B6 e-4ORCEと、バッテリー総電力量91kWhのNISMO B9 e-4ORCEの2モデルを用意している。両モデルともにフロント、リアモーターは最高出力218psを発生。アリアNISMOの一充電走行距離は、非公表。ベース車より出力アップやハイグリップタイヤ装着などにより約10%程度航続距離が短くなるとのことなので、これをベースに計算するとアリアNISMO B9 e-4ORCEで約504km(参考値)となった。
車両重量はアイオニック5Nが2,210kg。バッテリー総電力量が近いアリアNISMO B9 e-4ORCEが2,220kg。その差はわずか10kgしかない。この数値から考えると、バッテリー総電力量が少ないにも関わらず、満充電時の走行可能距離が長いアイオニック5Nのほうが電費性能は優れていると言える。
アイオニック5Nのシートはマニュアル式だが、BOSEの高級オーディオが標準装備
価格比較
アイオニック5Nの評価は4.5
アリアNISMOの評価は4.0
アイオニック5NとアリアNISMOの最上級グレードの価格は下記の通り。
アイオニック5N |
858万円 |
アリアNISMO B9 e-4ORCE |
944万1300円 |
アイオニック5Nの車両本体価格は858万円(ワングレードのみ)。アリアNISMOの最上級グレードであるアリアNISMO B9 e-4ORCE の車両本体価格は944万1300円。アリアNISMO B9 e-4ORCEのほうが、約86万円高い。
両車のボディサイズは、以下の通りほぼ同じだ。
- アイオニック5N :全長4,715mm×全幅1,940mm×全高1,625mm
- アリアNISMO B9 e-4ORCE :全長4,650mm×全幅1,850mm×全高1,660mm
両車共、前後にモーターを搭載した2モーターシステムで、駆動方式も4WDとほぼ同じだ。
装着しているタイヤはアイオニック5N のほうがホイールサイズも大きく、幅広のタイヤを装着している。
- アイオニック5N :275/35R21
- アリアNISMO B9 e-4ORCE:255/45R20
これは走りのパフォーマンスに比例していると考えられる。
装備面を比較してみよう。
アイオニック5Nのシート表皮は本革+アルカンターラを採用したホールド性に優れたスポーツシートを標準装備している。だが、リクライニングやスライドはマニュアル調整式だ。フロントシートとリアの外側2席にヒーター機能を採用している。
対するアリアNISMO B9 e-4ORCEのシートは、スエード調&合成皮革を表皮に使用したNISMO専用を搭載。運転席、助手席に電動調整式のパワーシートを標準装備し、全席にヒーター機能を備えている。
次は快適機能の比較だ。
アイオニック5Nは、家庭用電化製品が使用できるV2L・AC100V電気供給機能を室内と室外に標準装備。さらに、V2Lアダプター(室外)も標準装備している。
スマートフォンをはじめとした携帯機器の充電ができるUSB端子Type-Cをフロントに3個、リアに2個標準装備。さらに、スマートフォンワイヤレスチャージも標準装備する。オーディオでは7スピーカー+ウーハーのBoseサウンドシステムも標準装備するなど快適な移動空間を演出している。
アリアNISMO B9 e-4ORCEは EV専用の日産コネクトナビゲーションシステムを標準装備し、USBだけでなくHDMI接続も可能となっている。またNISMO専用BOSEサウンドシステム&10スピーカーはオプション設定となる。
運転支援機能を比べてみよう。
アイオニック5Nの運転支援機能は、以下を含む最新の運転支援機能も標準装備している。
- 前方衝突防止アシスト(FCA)
- 高速道路ドライビングアシスト2(車線変更アシスト機能付)
- スマートクルーズコントロール(SCC)(ストップ&ゴー付き)
- e-Call(緊急通報システム)
アリアNISMO B9 e-4ORCEは日産の最新鋭の運転支援機能を標準装備している。
- プロパイロット2.0(高速道路などで条件が揃えばハンズオフが可能)
- プロパイロット緊急停止視点システム(SOSコール機能付)
装備面を総合的に見てみると、アリアNISMO B9 e-4ORCEはフロントシートに電動調整機能やプロパイロット2.0を標準装備しているため、充実していると言える。アリアNISMO B9 e-4ORCE約86万円高価なので、これくらいの差は当然だろう。
一方、アイオニック5Nは7 スピーカー+ウーハーのBoseサウンドシステムを標準装備。そのうえ、標準装着されるタイヤのスペックもアイオニック5Nのほうが上であることを考えると、アイオニック5Nのほうがややバリューは高い。
オンライン販売のみのアイオニック5Nの値引きはなしと考えたい
購入時の値引き術
アイオニック5Nの評価は2.0
アリアNISMOの評価は3.0
アイオニック5Nを販売するヒョンデは、ショールームをもたず、オンライン販売のみだ。そのため、基本的に値引きという概念はない。
アリアNISMOは、ベース車の値引きは20万円程度といわれているが、NISMOは趣味性の高い特別なモデルなので、値引きはほぼゼロとなる可能性が高い。
とはいえ、オンライン販売のアイオニック5Nと比べれば、数万円程度の値引きが引き出せる可能性はある。値引き額ではアリアNISMOのほうが期待できる。
また、両車値引きはあまり期待できないため、下取車の処理がより重要だ。まずは、複数の買取専門店で査定。下取り額の目安を把握した上で比べるとよい。その上で、最も高額で買取ってくれるところに売却するとよい。
アプリーチは異なるが、両車ともにスポーティさを強調
デザイン
アイオニック5Nの評価は4.0
アリアNISMOの評価は4.0
アイオニック5 Nの外観は、標準のアイオニック5と共通のイメージをもつ。しかし、スポーティさとパフォーマンスの高さを予感させるデザイン要素が多く施されている。
ベース車のアイオニック5に比べ、アイオニック5Nはワイド&ローのフォルムが特徴だ。車高は20mm低く、車幅は大径タイヤの装着に合わせて50mm広く、全長は80mm長い。
フロントマスク(Nマスク)内のグラフィック・フェイシアには、冷却効果を高める機能的なメッシュ、エアカーテン、エアフラップが組み込まれている。
リップスポイラーは、車両の低いスタンスとパフォーマンス志向のデザインを際立たせた。ブラックのフロントバンパーに施された「ルミナスオレンジ」のアクセントは、サイドスカートにも続いており、サーキットにふさわしい外観を演出している。
専用のウイングタイプスポイラーとリアディフューザーが空気の流れをコントロールし、空力性能を最適化してくれる。リアハッチには、N専用のブラックバンパーカバーとリアウィンドウ・ワイパーを装備。チェッカーフラッグのリフレクターグラフィックが施されており、実用性を高めている。
対するアリアNISMOは、ベースのアリアのシンプルでありながら力強く、かつモダンな表現の「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」をデザインベースにしながら、NISMOによるエアロパーツなどにより、スポーティさをより際立たせている。
日産アリアはBEVなので、ガソリン車のように大きなエンジンルームの必要がない。そのため、ボンネットの長さを短くしてロングホイールベースとなった。また、エンジン冷却用のラジエーターも必要ないため、エンジン車のグリル部分には、スモークのパネルを装着している。パネルデザインは、日本の伝統的な組子パターンが立体的に表現された。
4つのLEDを配置したヘッドライドは非常に薄くデザインされた。日産のデザインシグネチャーであるVモーションは白い光で表現され、ウインカー点灯時にはシーケンシャルウインカーとしても機能する。
アリアNISMOの 外観は、NISMO専用のバンパー、リアスポイラー、ドア・サイドモールを採用している。日産アリアの上質さと、空力性能を向上させるNISMOらしいダイナミックなパフォーマンスを表現するためだ。洗練されたスタイリングでありながらも、空気抵抗の低減とダウンフォースの向上を高い次元で両立している。
乗員スペースに余裕のあるアリアNISMO。バランスの良さが光るアイオニック5N
室内空間と使い勝手
アイオニック5Nの評価は4.0
アリアNISMOの評価は4.5
アイオニック5NとアリアNISMO のボディサイズ、ホイールベース、荷室容量は以下のとおり。
アイオニック5N
ボディサイズ |
全長4,715mm×全幅1,940mm×全高1,625mm |
ホイールベース |
3,000mm |
室内サイズ |
室内長2,013mm×室内幅1,631mm×室内高1,209mm |
荷室容量 |
480L |
アリアNISMO
ボディサイズ |
全長4,650mm×全幅1,850mm×全高1,660mm |
ホイールベース |
2,775mm |
室内サイズ |
室内長2,075mm×室内幅1,540mm×室内高1,210mm |
荷室容量 |
408L |
アイオニック5NとアリアNISMOのボディサイズを比べてみると、スタイルの違いがハッキリと見て取れる。
全長はアイオニック5Nのほうが65mm長い。しかし、室内長はアリアNISMOのほうが62mm広く、逆転している。
室内の広さの目安となるホイールベースは、アイオニック5Nが225mmその差は全長以上に拡大しているが、スペースはアリアNISMOのほうが広くなっている。
この225mm差は、キャビンスペース広さに表れている。全長の短いアリアNISMOが室内長は長くなっているが、全幅の広いアイオニック5Nのほうが幅は広い。全高はアリアNISMO のほうが35mm高いが、室内高では1mm差まで縮まっている。アイオニック5Nのほうがスペース効率は優れていると言える。
この室内長の差は、キャビンスペースに余裕が生まれるだけでなく、ラゲッジスペースの容量にも影響を与えている。アイオニック5Nのラゲッジ容量は480Lだ。対するアリアNISMOは408Lと72Lも差がある。
人の乗るスペースの広さを優先するならばアリアNISMOがお勧めだ。対してアイオニック5Nは人の乗るスペースとラゲッジスペースのバランスが良いと言える。
取り回しの良さの指標となる最小回転半径は、アイオニック5Nは6.21m。対してアリアNISMOは5.4mとアリアNISMOの圧勝だ。3,000mmというロングホイールベースの影響だろう。
半自動運転を実現したプロパイロット2.0搭載のアリアNISMOが有利
安全装備&運転支援機能
アイオニック5Nの評価は4.0
アリアNISMOの評価は4.5
アイオニック5N、アリアNISMOは両車ともに2024年に登場したフレッシュなモデルなので、安全装備や運転支援機能は両車ともに充実している。
アイオニック5Nは、以下を含む10の運転支援機能を標準装備している。
- 前方衝突防止アシスト(FCA)
- 高速道路ドライビングアシスト2(車線変更アシスト機能付)
- リアクロストラフィックコリジョンアポイダンスアシスト
アリアNISMOは、プロパイロット2.0を搭載。制限速度をはじめとした道路状況を把握し、条件を満たすと同一車線内でハンズオフ走行を可能とする。安全でスムーズなドライビングを実現する機能だ。
さらに、準天頂衛星システムなどからの高精度測位情報を受信し、自車位置をより高精度に把握することが可能だ。アリアNISMOなら、プロパイロット2.0を装着したグレードがお勧めだ。
BEVでしかできない圧倒的なパフォーマンスを表現するアイオニック5N
走行性能の比較
アイオニック5Nの評価は4.5
アリアNISMOの評価は4.0
アイオニック5Nのモーター最高出力、最大トルク、車両重量は以下のとおり。
- フロントモーター:最高出力175ps、最大トルク370Nm
- リアモーター:最高出力412ps、最大トルク400Nm
- 車両重量:2,210kg
アリアNISMOのモーターの最高出力、最大トルク、車両重量は以下のとおり。
- フロントモーター:最高出力218ps、最大トルク300Nm
- リアモーター:最高出力218ps、最大トルク300Nm
- 車両重量:2,080~ 2,220kg
積極的にドリフトを楽しむBEV? が、アイオニック5N
アイオニック5Nがハイパフォーマンスモデルと言われる所以は「N Functions」様々な電子制御デバイスと搭載していることだ。例えば前輪と後輪の駆動比率をドライバーが可変させ、後輪のみ(RR)での走行も可能な「Nトルクディストリビューション」や、走行中のアクセルペダルをOFFにした際、回生ブレーキを利用して素早いコーナーへの進入を実現する「Nペダル」を装備している。
そして、アイオニック5N最大の魅力が「Nドリフトオプティマイザー」を搭載していることだ。ドリフト走行をスムーズに行うために前後輪の駆動比率と車両制御を最適化してくれるため、容易にドリフトが楽しめるBEVとなった。
ガソリン車より、圧倒的にアクセルレスポンスに優れ、瞬時に強大なトルクを得られるのでドリフトも比較的簡単に楽しめる。BEVというとエコのイメージが強いが、アイオニック5は操る楽しさに満ちている。
アイオニック5Nのすべてのパフォーマンスを解放できるのはサーキットだ。しかしその片鱗は公道での試乗でも体感できる。アイオニック5Nの走りはエッジの立ったシャープな切れ味が特徴だ。ハンドルを切り始めてから、クルマの挙動変化はスピーディかつ正確無比。どんなスキルのドライバーが運転しても、自分のスキルが向上したかのような感覚になるほどの走りを実現してくれる。
車両重量は2,210kgもあるが、その重量を全く感じさせない軽快な走りはエンジン車では実現できない。
レーシングな走りが楽しめるアイオニック5Nだが、乗り心地は電制サスペンションの恩恵もあり快適だ。やや締まった感のある乗り心地だが、不快な突き上げ感も無く街中でも気持ちよく走れた。
NISMOモードをセレクトすると豹変するドライブフィール
アリアNISMOは前後の最高出力218psを発生するモーターを搭載。e-4ORCEという4WDシステムが高いパフォーマンスを支えている。
e-4ORCEは、日産の電動化技術と4WD制御技術、さらにシャシー制御技術を融合させ、「走る、曲がる、止まる」性能を飛躍的に向上させた4WDシステムのことだ。前後に搭載した2基の電動モーターを繊細にコントロールすることで、車体の揺動を抑える制御を行う。このe-4ORCEをNISMOがチューニングを施し、旋回加速とライントレース性を向上させている。
コーナリング中の高度なライントレース性は高速域まで確保できる。そのため、前後モーターの駆動力配分を高いスタビリティで変更後輪への駆動力配分を高めているのが特徴だ。これにより、前輪をより積極的にコーナリングに用いることを可能としている。
同時に後輪のトラクションを増やすことで、コーナー立ち上がりでアクセルを踏み込んでいってもアンダーステアを発生することなく、狙ったラインを思いのままにトレースすることもできる。優れたハンドリングを可能とした。
また、モーターも日常ドライブでもその速さと愉しさを感じられることを目指しチューニングを実施。高速道路の追い越し加速やワインディングなど、アクセルを踏み込むシーンで、右足の動きに対して遅れのない、電動車ならではのレスポンスと息長く続く加速の良さを実現している。
さらに、市街地交差点などでもストレスなく走れるリニアな加速特性のためにSTANDARDの他にNISMOモードを設定した。NISMOモードを選択すると、STANDARDモードの穏やかさから豹変する。わずかなアクセル操作にも俊敏に反応。強大なトルクがに開放され、怒涛の加速を始めるのだ。豪快でスポーティな走りが楽しめる。
アリアNISMOの乗り心地は、なかなか良好だ。少し速度が上がるとしなやかさが増してくる。
あまり期待できないリセールバリューだが、ややアリアNISMOリードか?
リセールバリュー
アイオニック5Nの評価は2.5
アリアNISMOの評価は2.5
アイオニック5Nの中古車は、ほとんど流通していない。ベース車であるアイオニック5の中古車もわずかに流通している程度なので参考値だが、2022年の3年落ち(2025年比)で、ざっくり新車価格に対して約60%というレベルになっている。
BEVは全般的にリセールバリューが低い傾向にあり、アイオニック5も平均値程だ。これをベースとして、アイオニック5Nが特別なモデルであることを加味すると、リセールバリューは若干アップするとみられる。それでも約65~75%程度ではないかと予想した。
対するアリアNISMOも中古車流通台数が非常に少ないため、参考値だ。1年落ち(2025年比)の2024年式で約780万円前後の中古車相場と、新車価格に対して約83%にまで落ちている。中古車相場がこのまま順調に下がっていくと仮定すると、恐らくアイオニック5Nと同等レベルになると予想した。
新車購入時のリセールバリューは、両車共にあまり期待できない。ただし、逆に考えるとリセールバリューが悪い分、中古車価格は下がるので買い得感はある。
アイオニック5N、アリアNISMO共に、特別なモデルであり、非常に優れた性能をもつモデル。こうしたモデルを中古車なら格安で購入できる。まさに、両車共に中古車で買うべきモデルだ。
街乗り中心のアリアNISMO。サーキット走行も楽しめるアイオニック5N
まとめ・総合評価
アイオニック5NとアリアNISMOは、近いキャラクターを持つスポーツBEVだ。しかし、微妙な違いがある。それは、サーキット走行を前提にしているか否かということだ。
アイオニック5Nは、ドイツのサーキットであるニュルブルクリンクでのテストを重ね、サーキット走行を前提に開発。さらに、ドリフトまで楽しむための機能が満載だ。さらにヒョンデは「アイオニック5 N eN1カップ」と呼ばれるレースも行っている。まさに、サーキットを走るためのBEVだ。
アリアNISMOは、サーキット走行もそれなりにこなせるものの、主戦場は一般道だ。一般道をいかに楽しく気持ちよく走れるかがテーマでもある。この違いが大きい。
サーキット走行を最新のBEVで楽しみたいのならアイオニック5N。一般道メインで、スポーツBEVを楽しみたいのならアリアNISMOという選択になるだろう。
アイオニック5N | アリアNISMO | |
---|---|---|
総合得点(40点満点) | 31.0 | 32.5 |
1.燃費 | 4.5 | 4.0 |
2.価格 | 4.5 | 4.0 |
3.購入時の値引きしやすさ | 2.0 | 3.0 |
4.デザイン | 4.0 | 4.0 |
5.室内空間と使い勝手 | 4.0 | 4.5 |
6.安全装備 | 4.5 | 5.0 |
7.走行性能 | 4.5 | 4.5 |
8.リセールバリュー | 3.0 | 3.5 |
アイオニック5N価格
- アイオニック5N:858万円
アリアNISMO 価格
- NISMO B6 e-4ORCE:842万9300円
- NISMO B9 e-4ORCE:944万1300円
ヒョンデ アイオニック5N スペック
代表グレード |
アイオニック5N |
全長×全幅×全高 |
4,715mm×1,940mm×1,625mm |
ホイールベース |
3,000mm |
最低地上高 |
142mm |
最小回転半径 |
6.21m |
車両重量 |
2,210kg |
フロントモーター型式 |
EM型 |
フロントモーター最高出力 |
237ps(175kW)/4,600~10,000rpm |
フロントモーター最大トルク |
370N・m/0~4,000rpm |
リアモーター型式 |
EM27型 |
リアモーター最高出力 |
412ps(303kW)/7,400~10,400rpm |
リアモーター最大トルク |
400N・m(40.8kgm)/0~7,200rpm |
満充電時の走行可能距離 |
561km(WLTCモード) |
電力用主電池 |
リチウムイオン電池 |
駆動方式 |
四輪駆動(4WD) |
サスペンション型式 |
前:マクファーソンストラット式 後:マルチリンク式 |
タイヤサイズ 前後 |
275/35R21 |
日産アリアNISMO スペック
代表グレード |
B9 e-4ORCE(プロパイロット2.0装着車) |
全長×全幅×全高 |
4,650mm×1,850mm×1,660mm |
ホイールベース |
2,775mm |
最低地上高 |
165mm |
最小回転半径 |
5.4m |
車両重量 |
2,220kg |
フロントモーター型式 |
AM67 |
フロントモーター最高出力 |
218ps(160kW)/5,950~11,960rpm |
フロントモーター最大トルク |
300N・m(30.6kgm)/0~4,392rpm |
リアモーター型式 |
AM67 |
リアモーター最高出力 |
218ps(160kW)/5,950~10,320rpm |
リアモーター最大トルク |
300N・m(30.6kgm)/0~4,392rpm |
満充電時の走行可能距離 |
560km(WLTCモード)(B9 e-4ORCEプレミア) |
電力用主電池 |
リチウムイオン電池 |
駆動方式 |
四輪駆動(4WD) |
サスペンション型式 |
前:ストラット式 後:マルチリンク式 |
タイヤサイズ 前後 |
255/40R20 |