BセグメントのSUVは、選択肢の豊富さや使い勝手の良さもあり、人気を博している。ホンダは、ハイブリッドモデルが超人気のヴェゼルがあるものの、新たな選択肢としてインド生産で価格重視のDG5型WR-Vを投入した。対するトヨタ ヤリスクロスは、2020年8月のデビューながら、未だ人気が衰えないコンパクトSUVの定番だ。
今回はこの2車種の主にガソリン車同士をメインに徹底比較した(ホンダ DG5型WR-Vがガソリン車のみ、トヨタ 10系ヤリスクロスは、ガソリン車とハイブリッド車の設定となるため)。クルマ選びに失敗・後悔しないために役立ててほしい。
*トヨタ ヤリスクロスの画像は、改良前のもの
- ホンダ DG5型WR-Vの特徴
- トヨタ 10系ヤリスクロスの特徴
- 両車の排気量は同じ。しかし、燃費差は大きめ
- 10系ヤリスクロスは価格差以上に快適装備が充実している
- WR-Vは納期も短めで最大20万円の値引きも期待できる?
- タフさのWR-Vと洗練されたヤリスクロスのデザイン
- ボディサイズの大きなWR-Vが広さとユーティリティで優位
- ガソリン車同士ならば互角だが、ハイブリッド車は高度な運転支援をオプションで設定
- 静粛性は4気筒エンジンのWR-Vが有利。走行性能は互角
- ヤリスクロス、驚愕のリセールバリュー!
- まとめ・総合評価
- ホンダ DG5型WR-V価格
- トヨタ 10系ヤリスクロス価格
- ホンダ DG5型WR-Vのスペック
- トヨタ 10系ヤリスクロスのスペック
ホンダ DG5型WR-Vの特徴
※上図:DG5型WR-Vの全景
DG5型WR-Vは2024年3月に販売開始されたコンパクトSUVだ。インドで生産され日本に輸入されるモデルで、エントリーグレードXの新車価格が209万8800円からという低価格が話題となった。
DG5型WR-Vは、既成概念や固定観念にとらわれずに、より自由な発想で自分らしい生き方を表現する人々の思いに寄り添うクルマとなることを目指して開発された。走行性能は、徹底した走り込みによってサスペンション特性、電動パワーステアリングの特性などを突き詰め、扱いやすいリニアな操縦性を有する。
DG5型WR-Vに搭載されているエンジンは、1.5Lガソリンのみだ。アイドリングストップ機能は装備されておらず、駆動方式もFF(前輪駆動)のみである。
運転支援機能は、先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」を全グレードに標準装備している。衝突軽減ブレーキ(CMBS)をはじめ13の機能がパッケージ化されたものだ。車載通信モジュール「ホンダコネクト」も搭載しており、ディーラーオプションとしてナビゲーションとオーディオを設定している。
また、「ホンダトータルケアプレミアム」の充実したサービスも利用可能だ。ボタン一つでオペレーターが対応する「緊急サポートセンター」をはじめ、車内でゲーム機やタブレットなどを使える車内Wi-Fiなど、安心・快適なカーライフをサポートしてくれる。
トヨタ 10系ヤリスクロスの特徴
※上図:10系ヤリスクロスの全景
トヨタ10系ヤリスクロスは2020年8月に登場した、コンパクトカーであるヤリスの派生モデルだ。ヤリスシリーズらしい「軽快な走り」「先進の安全・安心技術」「低燃費」を受け継ぎつつ、新時代に求められるコンパクトSUVの新たな価値を追求した。
10系ヤリスクロスはヤリスと同じコンパクトカー向けTNGAプラットフォーム(GA-B)を採用している。全長4,180mmとコンパクトだが、荷室は390L(デッキボード下段時)という十分な容量を有する。また、トヨタのコンパクトSUVとして初めて、6:4分割のアジャスタブルデッキボードを採用(一部のグレードのみ)。このデッキボードにより、床面をフラットにすることが可能になった。
10系ヤリスクロスのパワートレインは、1.5Lガソリンエンジンと1.5Lガソリンハイブリッドシステムの2種類を搭載する。1.5Lエンジンには、アイドリングストップ機能が装備されていない。
駆動方式はガソリン車、ハイブリッド車ともに2WDと4WDだ。ガソリン車にはダイナミックトルクコントロール4WDシステムが採用された。3つのモードから選択できるマルチテレインセレクトなどの機能を搭載したものだ。一方のハイブリッド車にはE-Fourと呼ばれる電気式4WDを設定している。
運転支援システムには、最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を標準装備した。
10系ヤリスクロスは、2022年7月に一部改良を実施し、新たにGR SPORTとZアドベンチャーの2グレードを設定した。
GR SPORTは、GRによる専用チューニングや装備を施し、走行性能を高めたグレードだ。ガソリン車とハイブリッド車の両方に設定されているが、駆動方式は2WDのみとなる。Zアドベンチャーは最上級グレードのZをベースとし、アウトドア色を強調したグレードだ。専用の前後バンパーやシルバー加飾のルーフレールを装備し、合成皮革(サドルタン)とツイード調ファブリックを組み合わせた専用シート表皮を採用した。
また、この改良で、最上級グレードZにブラック内装色を新たに設定した。
2024年1月には2度目の一部改良を実施し、GR SPORTを除くグレードで外観とインテリアを刷新した。外観ではアッパーグリルのパターンをよりSUVらしい力強いデザインに変更し、インテリアでは上級グレードにコンソールボックス付フロントソフトアームレストを採用したほか、7.0インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイを標準装備した。
両車の排気量は同じ。しかし、燃費差は大きめ
燃費比較
DG5型WR-Vの評価は3.5
10系ヤリスクロスの評価は4.0
DG5型WR-Vの燃費は以下の通りだ(WLTCモード以下同)。
|
2WD |
4WD |
DG5型WR-V |
16.2~16.4km/L |
- |
10系ヤリスクロスの燃費は以下の通りだ。
|
2WD |
4WD |
1.5Lガソリン車 |
17.6~19.8km/L |
17.1~18.4km/L |
1.5Lハイブリッド車 |
25.0~30.8km/L |
26.0~28.7km/L |
両車のガソリン車2WDの燃費は以下の通り、最大で約3.4km/Lもの差が付いている。
|
燃費 |
DG5型WR-V 2WD |
16.2~16.4km/L |
10系ヤリスクロス 1.5Lガソリン車 2WD |
17.6~19.8km/L |
10系ヤリスクロスは直3エンジン、DG5型WR-Vは直4エンジンという違いがあるものの、通常は気筒数の違いだけでこれだけの燃費差が付くことはほとんどない。
この大きな燃費差には、車重が影響している。以下の通り、両車には100kgもの差があるのだ。
- DG5型WR-V:1,210~1,230kg
- 10系ヤリスクロス;1,110~1,130kg
この車重差は、ボディサイズの違いによるものが主要因。全長、全幅、全高すべてにおいて、10系ヤリスクロスのほうが小さい。この差が車重100kgの違いになり、燃費に大きく影響を与えている。
また、両車共にアイドリングストップ機能は装備されていない。装備されていれば、さらに燃費がアップするだけに、惜しいポイントだ。
なお、10系ヤリスクロスハイブリッドの燃費は25.0~30.8km/Lと、ガソリン車を大きく上回る驚異的な数値となっている。
10系ヤリスクロスは価格差以上に快適装備が充実している
価格比較
DG5型WR-Vの評価は4.0
10系ヤリスクロスの評価は4.5
DG5型WR-Vと10系ヤリスクロスのガソリン車の最上級グレードの価格は下記の通り。
|
最上級グレード 価格 |
ホンダWR-V Z+ |
248万9300円 |
トヨタヤリスクロスZアドベンチャー |
255万1000円(2WD) |
両車の最上級グレードの価格差は、6万1700円だ。この価格差の要因を探ってみよう。
搭載しているエンジンの排気量は1.5Lと同じ。しかし、DG5型WR-Vが4気筒に対して、10系ヤリスクロスのガソリン車は3気筒と1気筒少ない。だが、最高出力・最大トルク・燃費性能は3気筒エンジンを搭載した10系ヤリスクロスガソリン車が上回っている。
両車が標準装備しているタイヤは以下の通りだ。
|
タイヤサイズ |
ホイールデザイン |
DG5型WR-V Z+2WD |
215/55R17 |
ベルリナブラック+切削のアルミホイール |
10系ヤリスクロスZアドベンチャー2WD |
215/50R18 |
切削光輝の18インチアルミホイール |
タイヤ&ホイールサイズは、10系ヤリスクロスZアドベンチャー2WDのほうが走行性能を重視した仕様と言える。
シート表皮は以下の違いがある。
- DG5型WR-V Z+2WD:プライムスムース×ファブリックのコンビシート
- 10系ヤリスクロスZアドベンチャー2WD:合成皮革を採用
さらにヤリスクロスの運転席には、運転席6ウェイパワーシートを標準装備している。前後スライド+リクライニング+シート上下が電動で調整可能だ。加えてフロントシートにはシートヒーターを備えており、快適装備が充実している。
リアシートの分割は以下の通りだ。
- DG5型WR-V Z+2WD:6:4の分割可倒式
- 10系ヤリスクロスZアドベンチャー2WD:4:2:4の分割可倒式
ヤリスクロスには、リアセンターアームレスト(ボトルホルダー2個付)も内蔵している。
ナビゲーションは以下の違いがある。★はオプション、◎は標準装備だ。
|
内容 |
オプション価格 |
DG5型WR-V Z+2WD |
★ホンダコネクトナビ(9インチ) |
+20万7900円 |
10系ヤリスクロスZアドベンチャー2WD |
★ディスプレイオーディオPlus(車載ナビ付) |
+6万1600円 |
運転支援機能は、以下を標準装備している。
- DG5型WR-V Z+2WD:先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」
- 10系ヤリスクロスZアドベンチャー2WD:最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」
DG5型WR-V Z+2WDに標準装備で10系ヤリスクロスZアドベンチャー2WDに装着されていない装備は以下の通りだ。
- パドルシフト
10系ヤリスクロスZアドベンチャー2WDに標準装備でDG5型WR-V Z+2WDに装着されていない装備は以下の通りだ。
- ナビゲーション
- 運転席パワーシート
- 車載通信機
このように装備で両車を比較すると、10系ヤリスクロスのほうがパワーシートやシートヒーターなど快適装備が充実している。また、運転支援機能の内容は互角だが、10系ヤリスクロスは通信モジュールを標準装備。この装備差で価格差が約6万円なのであれば、10系ヤリスクロスの方が優勢と言える。
WR-Vは納期も短めで最大20万円の値引きも期待できる?
購入時の値引き術
DG5型WR-Vの評価は4.0
10系ヤリスクロスの評価は3.0
DG5型WR-Vは納期が短めなので、値引き目標額も最大で20万円と、かなり大きめだ。さらに、ディーラーオプションのサービスなどを要求してみるのもお勧めだ。
対する10系ヤリスクロスは、2025年1月現在、受注停止中。近々改良、もしくはマイナーチェンジが行われる可能性が高い。その場合、仮に受注を再開しても値引き額は相当渋くなる可能性は高い。値引きをしなくても販売が好調になるからだ。
車両本体価格の値引きが厳しい場合は、ディーラーオプションのサービスや下取り価格を上げてもらう作戦をとりたい。
値引き交渉の際は、必ず先にライバル車の見積りを取り、競合させることが重要だ。競合させることで、他車に取られたくないと値引きに応じる可能性が高くなる。
またDG5型WR-Vの場合、未使用車が多く流通している。未使用車の見積りを取り、新車より大幅に安くなれば、未使用車という選択も良いだろう。
タフさのWR-Vと洗練されたヤリスクロスのデザイン
デザイン比較
DG5型WR-Vの評価は4.0
10系ヤリスクロスの評価は4.5
WR-Vは直線を多用したデザインでSUVらしい逞しさを表現
※上図:DG5型WR-Vの後景
DG5型WR-Vのデザインコンセプトは「MAXCULINE(マスキュリン)&CONFIDENT(コンフィデント)。「自信あふれる逞しさ」だ。SUVとしての力強さを、キャラクターラインや複雑な造形に頼ることなく、骨太感のある極めてクリーンなデザインで表現した。人に自然と寄り添える、押しつけ感のないシンプルさと逞しさを両立させている。
DG5型WR-Vの外観デザインには、信頼感や安心感、風格がある。ベルトラインが高く体幹を貫くようなしっかりとした厚みのあるボディと、優れた走破性を体現する地上高の高いスタイリングが特徴だ。
※上図:DG5型WR-Vのフロントフェイス
フロントビューは、外観の力強さと車幅感覚の取りやすさを両立した安心感のあるロングノーズを有する。フロントフードを車両前端まで伸ばし、先端のワイドなクロームメッキ・フロントグリルガーニッシュとスクエアなフロントグリルと合わせることで、ノーズの厚さを強調。フロントノーズ上面の両端を一段隆起した形状にした。
※上図:DG5型WR-Vのリヤエンド
リアビューは、高く配置したテールランプによって、SUVらしいベルトラインの高さを表現。また、リア全体を水平基調とすることで、ワイド感を強調した。
※上図:DG5型WR-Vのインパネデザイン
インテリアは、安心感と運転のしやすさを追求し、逞しさを感じられるデザインを採用した。
水平基調のインストルメントパネルと柔らかいパッドに包まれる安心感のある空間。そして、先進装備の最適配置、優れた視界が持ち味だ。
※上図:DG5型WR-Vのメーター
ヤリスクロスは都市型SUVらしく、バランスのよいプロポーションが特徴
※上図:10系ヤリスクロスの後景
10系ヤリスクロスのデザインテーマは「EASY FAST SMART-楽に楽しくスマートに」。日常の生活を基軸にその中に見られる驚きや発見、そしてアクシデントも含めた「日常の中の“非日常”」に着目し、これまでのコンパクトSUVでは表現できなかった独自の魅力を追求した。
10系ヤリスクロスの外観デザインは「ENERGETIC SMART」がキーワード。アクティブで洗練されたバランスの良いプロポーションを追求した。
※上図:10系ヤリスクロスのフロントフェイス
フロントビューは精悍な印象。フロントグリル、ロア、フェンダーで構成された立体構成によるものだ。フロントグリルにはブランドメッセージを強化したダブル大径のグリルを採用した。
サイドビューは、SUVらしいロバストな骨格と姿勢により力強いサイドビューを形成。フロントからリアコンビネーションランプまで高い位置で一気に通り抜ける水平基調のラインが特徴的だ。加えて、平面折れとリンクしたキャラクターラインが力強さとユーティリティを表現している。
※上図:10系ヤリスクロスのリヤエンド
リアビューは、スクエア形状の中央部と大きな開口のバックドアにより機能性の高さを表現。大きく張り出したリアフェンダーがSUVらしい力強さを感じさせる。リアウィンドウと一直線のリアコンビネーションランプは、ミニマルイメージの強調に一役買っている。
※上図:10系ヤリスクロスのインパネデザイン
インテリアは、センターコンソールからディスプレイオーディオにかけての縦方向の流れを強調したデザインだ。外観同様、力強さを強調しているのが特徴である。
※上図:10系ヤリスクロスのメーター
ヘッドアップディスプレイの採用により、ドライバーの視線移動を最小限に抑えることができ、「Eyes On The Roadコンセプト」具現化した運転に集中できるインテリアとなっている。
ボディサイズの大きなWR-Vが広さとユーティリティで優位
室内空間と使い勝手
DG5型WR-Vの評価は4.5
10系ヤリスクロスの評価は4.0
DG5型WR-Vスと10系ヤリスクロスのボディサイズ、ホイールベース、荷室容量は以下のとおり。
DG5型WR-V
ボディサイズ |
全長4,325mm×全幅1,790mm×全高1,650mm |
ホイールベース |
2,650mm |
ラゲッジ容量 |
458L(5人乗車時) |
10系ヤリスクロス
ボディサイズ |
全長4,180~4,200mm×全幅1,765mm×全高1,580~1,590mm |
ホイールベース |
2,560mm |
ラゲッジ容量 |
390L(5人乗車時) |
以下の通り、いずれのサイズもDG5型WR-Vが上回っている。
- 全長:最大で145mm
- 全幅:25mm
- 全高:最大で70mm
- ホイールベース:90mm
ホイールベースは室内の広さに大きく影響する。ボディサイズのサイズ差との相乗効果により、DG5型WR-Vのほうが室内空間は広い。
※上図:DG5型WR-Vの運転席
※上図:DG5型WR-Vの後席
※上図:10系ヤリスクロスの運転席
※上図:10系ヤリスクロスの後席
ラゲッジスペースは、DG5型WR-Vが485L、10系ヤリスクロスは390L(いずれも5人乗車時)とDG5型WR-Vが優勢だ。
※上図:DG5型WR-Vの荷室
※上図:DG5型WR-Vのシートアレンジ
ただし、DG5型WR-Vが6:4の分割可倒式リアシートを採用しているのに対して、10系ヤリスクロスの上級グレードは4:2:4の3分割可倒式のリアシートなので、シートアレンジの多彩さが光る。
※上図:10系ヤリスクロスの荷室
両車ともにコンパクトなボディながら、居住スペース、ラゲッジスペースともに広く確保している。だが、ボディサイズが大きいDG5型WR-Vの優位性は揺るがない。
ガソリン車同士ならば互角だが、ハイブリッド車は高度な運転支援をオプションで設定
安全装備&運転支援機能
DG5型WR-Vの評価は3.5
10系ヤリスクロスの評価は4.5
DG5型WR-Vは先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」を全グレードに標準装備。衝突軽減ブレーキ(CMBS)をはじめ13の機能がパッケージ化されたものだ。フロントワイドビューカメラと前後8個のソナーセンサーを用いたシステムにより、安心・安全を追求している。
対する10系ヤリスクロスの運転支援機能は、最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を標準装備。以下を含む機能を搭載している。
- プリクラッシュセーフティ(①直進時の車両・歩行者検知機能、②交差点右折時の対向直進車・右左折時の対向方向から来る横断歩行者検知機能、③緊急時操舵支援機能を含む)
- レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)
- アダプティブハイビームシステム(AHS)
- レーントレーシングアシスト(LTA)+レーンディパーチャーアラート(LDA)
さらに、後側方を監視するブラインドスポットモニター(BSM)+安心降車アシスト(SEA)、パーキングサポートブレーキも標準装備だ。
またハイブリッド車には高度運転支援「トヨタチームメイト(アドバンストパーク)」をオプションで設定している。
※上図:DG5型WR-Vのサイドブレーキ
両車のガソリン車同士で比較すると、甲乙付けがたい機能を装備している。
しかしDG5型WR-Vは手引きのパーキングブレーキを採用しているので、アダプティブクルーズコントロール機能の停止保持ができない。アダプティブクルーズコントロール使用時は、車速が約25km/h未満になると自動解除されてしまうのだ。今時の新型車としては、やや物足りない。こうした部分は10系ヤリスクロスが優位だ。
さらに、10系ヤリスクロスのハイブリッド車には、高度運転支援「トヨタチームメイト(アドバンストパーク)」をオプションとはいえ設定しているので、安全装備・運転支援機能は10系ヤリスクロスがDG5型WR-Vをやや上回る。
静粛性は4気筒エンジンのWR-Vが有利。走行性能は互角
走行性能の比較
DG5型WR-Vの評価は4.0
10系ヤリスクロスの評価は4.0
DG5型WR-Vとエンジンの最高出力、最大トルク、車両重量は以下のとおり
■直4 1.5Lエンジン
最高出力 |
118ps |
最大トルク |
142Nm |
車両重量 |
1,210~1,230kg |
10系ヤリスクロスのエンジンの最高出力、最大トルク、車両重量は以下のとおり
■直3 1.5Lエンジン
最高出力 |
120ps |
最大トルク |
145Nm |
車両重量 |
1,110~ 1,230kg |
■1.5Lハイブリッド
システム最高出力 |
116㎰ |
車両重量 |
1,160~ 1,270kg |
走行性能は両車の1.5Lガソリンエンジン車に絞って比較する。
DG5型WR-Vは1.5L直列4気筒エンジン+CVTを搭載。駆動方式は2WD(FF)のみだ。
対する10系ヤリスクロスは1.5L直列3気筒エンジ+CVTを搭載。駆動方式は一部グレードを除いて2WD(FF)と4WDを選べる。
WR-V:ホンダ車らしい元気の良いエンジン
※上図:DG5型WR-Vのエンジンルーム
同じ1.5Lエンジンながら、DG5型WR-Vは4気筒エンジンだ。エンジン回転数の上昇が滑らかなだけでなく、静粛性も高い。いかにもホンダ車らしく、高回転域で元気が出てくるエンジンだ。
CVTには協調制御「G-design Shift」を採用。リニアな加速フィールを追求したことで、ステップ式のATのようなダイレクト感がある。パドルシフトが採用されているので、スポーティな走行時だけでなく、街中でエンブレを効かせちょっと減速したい時などに便利だ。
DG5型WR-Vの車両重量は1,210~1,230kgと10系ヤリスクロスと比べると約100kg重い。だが、フットワークは軽快だ。クルマの傾きを抑えたフラットな走りにスポーティさを感じる。低速域で大きな凸凹がある路面だとゴトゴトした乗り心地になるが、速度が上がるとシットリ感が出てくる。
ヤリスクロス:少し乗り心地がよくなる4WD
※上図:10系ヤリスクロスのエンジンルーム
10系ヤリスクロスは剛性を上げつつ低重心なTNGAプラットフォーム(GA-B)を採用。背の高いSUVにもかかわらず、コーナリング時やブレーキング時には車体の揺れを抑えており、優れた操縦安定性を誇る。DG5型WR-Vと比べると、より低重心なので、カーブでの安定感もやや上回る。乗り心地も良好だ。
静粛性とスムーズさは、4気筒のDG5型WR-Vが優位だ。ヤリスクロスの1.5L直列3気筒エンジンは、高回転域ではかなり賑やかに感じた。
逆に、ヤリスクロスは軽快で力強い走りが可能だ。DG5型WR-Vより100kg軽い車両重量が功を奏している。
4WDモデルの場合、リヤサスペンションがトーションビームからダブルウィッシュボーンになる。そのため、突き上げ感が少し減り、乗り心地が向上する。
ヤリスクロス、驚愕のリセールバリュー!
リセールバリュー
DG5型WR-Vの評価は4.0
10系ヤリスクロスの評価は5.0
■DG5型WR-V
- 中古車相場参考値(2024年式):約210~250万円
- 新車価格:約210~249万円
- 新車価格に対する中古車相場比:約100%
■10系ヤリスクロス(ガソリン車)
- 中古車相場(2024年式):190~270万円
- 新車価格:約191~267万円
- 新車価格に対する中古車相場比:約100~約101%
■10系ヤリスクロス(ガソリン車)
- 中古車相場(2022年式):190~260万円
- 当時の新車価格:約190~256万円
- 新車価格に対する中古車相場比:約100~約102%
DG5型WR-Vは2024年登場だが、未使用車が多いため、中古車相場が形成されつつある。ただ、未使用車中心の相場なので、あくまで参考値としてほしい。
この未使用車の相場は、新車価格とほぼ同じ。新車納期も1カ月程度ということなので、あえて未使用車を買う理由はない。そのため、中古車価格は徐々に下がっていくと予想できる。DG5型WR-Vの中古車の購入は、しばらく待ってからがいいだろう。
とは言っても人気SUVなので、価格が大幅に下がることは無いだろう。リセールバリューは高めのモデルといえる。
10系ヤリスクロスのガソリン車の中古車価格は、驚くべき数値となった。2024年式でも2022年式でも、ほぼ新車価格並み。3年落ち(2025年比)でも新車価格並みという驚愕のリセールバリューだ。この価格だと、あえて中古車を選ぶ理由はない。
ところが現在、10系ヤリスクロスの新車は、受注停止中だ。仮に受注が再開されても納期は非常に長くなることが予想できる。すぐに乗りたい人は、新車価格並みの中古車を買うしかない状態だ。
ただ、10系ヤリスクロスのリセールバリューが突然大きく下がることもないと思われる。買うときに高額でも、売るときも高く売れるだろう。短期の乗り換えなら、なるべく年式の新しい年式の中古車を選ぶことと、10系ヤリスクロスがフルモデルチェンジする前に売却するのがお勧めだ。10系ヤリスクロスのリセールバリューは、しばらくの間非常に高い状態が続くだろう。
まとめ・総合評価
DG5型WR-Vがお勧めの人
- クラストップレベルの広い室内空間とラゲッジルームに魅力を感じる人
- 降雪地には行かない、悪路は走らない人
- シンプル装備でも安価であればOKな人
10系ヤリスクロスがお勧めの人
- 優れた燃費性能を重視する人
- 充実した快適装備が欲しい人
- 高いリセールバリューを求める人
- 軽快で快適な走行性能に惹かれた人
端的に言えば、DG5型WR-Vは室内が広くて安価であることに特化している。そのため、装備はシンプルでいいと割り切れる人にお勧めだ。また、荷室は非常に広いものの、4WDの設定が無いため、降雪地域や悪路を走るようなアウトドアスポーツを積極的に楽しんでいる人にはあまり向いていない。
10系ヤリスクロスは、バランス型だ。走行性能や使い勝手、装備など総合点が非常に高い。多くの人が購入後、後悔・失敗したと感じることはないだろう。惜しいのは、納期が非常に長いことだ。
ホンダ DG5型WR-V価格
WR-V 1.5X 2WD |
209万8800円 |
WR-V 1.5Z 2WD |
234万9600円 |
WR-V 1.5Z+ 2WD |
248万9300円 |
トヨタ 10系ヤリスクロス価格
|
2WD |
4WD |
1.5X |
190万7000円 |
213万8000円 |
1.5G |
215万0000円 |
238万1000円 |
1.5Z |
243万5000円 |
266万6000円 |
1.5Zアドベンチャー |
255万1000円 |
278万2000円 |
1.5 GR-SPORT |
257万1000円 |
- |
HV X |
229万5000円 |
252万6000円 |
HV G |
252万4000円 |
275万5000円 |
HV Z |
280万0900円 |
304万0000円 |
HV Zアドベンチャー |
292万5000円 |
315万6000円 |
HV GR-SPORT |
295万4000円 |
- |
ホンダ DG5型WR-Vのスペック
代表グレード |
WR-V Z+ 2WD |
ボディサイズ |
4,325mm×1,790mm×1,650mm |
ホイールベース |
2,650mm |
最低地上高 |
195mm |
最小回転半径 |
5.2m |
車両重量 |
1,230kg |
エンジン型式 |
L15D型 |
エンジンタイプ |
直列4気筒DOHC |
総排気量 |
1,496cc |
最高出力 |
118ps(87kW)/6,600rpm |
最大トルク |
142N・m(14.5kgm)/4,300rpm |
燃費(WLTCモード) |
16.2km/L |
駆動方式 |
前輪駆動(2WD) |
サスペンション型式 |
前:マクファーソンストラット式 後:車軸式 |
タイヤサイズ |
215/55R17 |
トヨタ 10系ヤリスクロスのスペック
代表グレード |
1.5Zアドベンチャー 2WD |
ボディサイズ |
4,200mm×1,765mm×1,590mm |
ホイールベース |
2,560mm |
最低地上高 |
170mm |
最小回転半径 |
5.3m |
車両重量 |
1,140kg |
エンジン型式 |
M15A-FKS型 |
エンジンタイプ |
直列3気筒DOHC |
総排気量 |
1,490cc |
最高出力 |
120ps(88kW)/6,600rpm |
最大トルク |
145N・m(14.8kgm)/4,800~5,200rpm |
システム最大出力 |
116ps(85kW) |
燃費(WLTCモード) |
18.3km/L |
駆動方式 |
前輪駆動(2WD) |
サスペンション型式 |
前:マクファーソンストラット式 後:トーションビーム式 |
タイヤサイズ |
215/50R18 |