三菱ミラージュ

<安いだけでは売れない厳しい日本マーケット。充実装備で安価、上質感で再び勝負!>

三菱ミラージュ三菱は、グローバルコンパクトカーのミラージュを大幅マイナーチェンジし発売を開始した。

ミラージュは、2012年8月にデビューした。2000年に一旦姿を消してから、12年ぶりの復活となった。ミラージュのコンセプトは、「低燃費」「低価格」「コンパクト(扱いやすさ)」。コンパクトカーの不変的な価値を追求した。グローバルで販売されるコンパクトカーなので、高い価格競争力が求められる。そのため、ミラージュはタイ生産となった。

ミラージュがデビュー当時に搭載していたエンジンは、直3の1.0Lのみ。アイドリングストップ機能や減速エネルギー回生機能、軽量で空気抵抗の少ないボディが組みあわされた結果、燃費は27.2㎞/Lと当時クラストップの数値を叩き出していた。

燃費のカタログ数値では、売れるクルマだったのだだが、デビュー直後こそ好調だったものの、直近では500台/月売るのも厳しい状況となってしまった。そもそも、日本マーケットにおいて全長3.7m前後のコンパクトカーは、価格的に軽自動車と比べられる傾向が強い。日本の軽自動車は、非常に優れていてスペース効率や価格、品質感は高く、さらに税金も安い。単に低燃費で低価格なコンパクトカーというだけでは売れないのが、日本マーケットの特徴でもある。その後、ミラージュは1.2Lエンジン車を追加し、力強さ面で差別化を図るが、状況に大きな変化はなかった。ミラージュは、当初、タイ生産ということもあり、若干質感面では厳しい状況にあったもの要因のひとつだった。

三菱ミラージュそこで、マイナーチェンジでは、パワーユニットを1.2L直3エンジンだけに絞った。これなら、軽自動車では非力と感じる顧客層を取り込める。さらに、1.3Lエンジンを搭載していたコルトの顧客がミラージュに乗り換えやすくするためだ。この1.2Lエンジンは、78ps&100Nmを発揮。燃費は従来の1.2Lより0.4km/L向上させ25.4km/Lとしている。アイドリングストップ機構に、減速時(約13km/h以下)からエンジンを停止させるコーストストップ機能の追加などにようるものだ。同じ1.2Lの排気量をもつマーチの燃費が23.0㎞/Lなので、燃費では圧勝している。ただし、高コストのエンジンを搭載した同じ1.2Lクラスのスイフトが26.4㎞/L。さすがに、ここまでのアップはできていない。スイフトは、高価なエンジンを搭載していることもあり、車両価格もかなり高価なものとなっている。

ただ、多少のパワーアップや燃費だけでは日本マーケットでj評価されないことは、マイナーチェンジ前のモデルが証明している。マイナーチェンジでは、クルマそのものの質感アップにも力を入れた。まず、サスペンションの取り付け部の剛性をアップし、サスペンションチューニングを最適化し、走りの質感を向上させている。CVTは、クラッチ制御を改良。駆動トルクを遮断することでアイドリングストップ後から、エンジン再始動時のショックを抑制した。また、ダウンシフト制御も見直して、中間加速時のレスポンスを向上させている。

こうした走りの質感の他に、安全装備も強化された。ようやくというべきなのだが、自動ブレーキである「FCM-City」が装備された。ただし、この自動ブレーキは30㎞/h以下の低速域タイプで、歩行者検知式でもない。日産ノートは、歩行者検知式の自動ブレーキが標準装備されている。ミラージュの自動ブレーキは、現在標準レベルではあるもののトップレベルと呼べるものではなく、やや物足りない仕様だ。同時に誤発進抑制機能(前進時)も装備されたので、高齢者は初心者も安心だ。性能面では、やや物足りない自動ブレーキ関連の安全装備だが、全車標準装備化された点は高く評価したい。未だオプション設定というメーカーも多いからだ。ただ、自動ブレーキを標準装備化しながらリヤ中央席のヘッドレストはオプション設定というのはいただけない。ヘッドレストは安価で、もはや当たり前の安全装備。乗車定員分装備されていて当たり前といえる装備。今時、珍しい仕様だ。さらに、このヘッドレストはサイド&カーテンエアバッグとのセットオプション。安全装備の設定には、少々疑問が残る。

三菱ミラージュ外観デザインも大幅に変更されている。ボリューム感のあるボンネットフード、クロームメッキで加飾した上質感のあるアッパーグリルとロワーグリル、下部にエアダム形状を配したスポーティなフロントバンバーを採用。上質感をアップさせている。ダウンサイザーの受け皿となるよう、安っぽさを感じさせないデザインとなった。

なんと、Gグレードには、ライトチューブ式LEDポジションランプを組み込んだ省電力ディスチャージヘッドライトを採用。リヤビューは、ロー&ワイドな印象を与える大型リヤバンパー、存在感のあるLEDリヤコンビランプ、優れた空力性能と後方視認性を両立する新形状のルーフスポイラーを採用した。ホイールは、ブラック塗装&切削光輝仕上げの15インチアルミホイールを採用している。なかなか豪華な仕様だ。

インテリアは、一部にピアノブラックやメッキ加飾を施し、Gグレードには、リモコンスイッチ付きの本革巻ステアリングを採用し上質感をアピール。Mグレードは、ブラック&アイボリー内装とし、やや明るくカジュアルな雰囲気にまとめられている。

使い勝手面も向上している。ミラージュは、最小回転半径4.6mという軽自動車並みの小回り性能をもっている。それに加えて、ラゲッジフロアに分割収納が可能なカーゴフロアボックスを採用して収納性を高めた。さらに、後席シートバックを前倒しした際に、ラゲッジフロアをフラットにすることで、積載性を向上させている。ただ、ミラージュには、残念ながら4WDの設定が無い。そのため、降雪地域の顧客は選びにくい状態だ。

ミラージュの価格は、Mが1,380,240円、Gが1,485,000円となっている。MもGも自動ブレーキが標準装備で、キーレス、アルミホイール、オートライトなど装備は充実しているのが特徴だ。これだけの装備が標準装備されて、この価格は買い得感がある。低価格を維持しながら、質感と装備を高めたマイナーチェンジといえる。コンパクトカーセグメントへの再チャレンジとなる三菱のやる気を感じる価格だ。MとGとの価格差は約10万円。Mでも十分といった装備内容だ。

ミラージュのライバル車は、軽自動車の他に日産マーチやトヨタ パッソ。競合させたいのは、軽自動車とマーチといったところになる。パッソは、やや高価だが、このクラスではかなり売れているので、値引き勝負には出てこない可能性が高い。値引き勝負に挑んできそうなのがマーチだ。日産は2015年度は新型車が1台も無く、店舗の集客・販売に苦労している。一度訪れた顧客を逃がしたくないはず。装備関連や燃費では、ミラージュが圧倒。マーチと競合させていることを伝えることで、三菱もマイナーチェンジ直後とはいえ一定の値引きを提示せざる負えない。装備と価格のコストパフォーマンスが高いミラージュが値引き対応してくれれば、かなりお買い得になクルマとなる。ただし、ミラージュのリセールバリューは期待できないので、乗り潰すつもりで選びたい。

■三菱ミラージュ価格
・M 1,380,240円
・G 1,485,000円