アウディ TTSクーペ フロント

達人「松下 宏」が斬る!

アウディ TTSクーペ 評価

松下 宏

職業:自動車評論家
中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員としても、その信念は変わらない。そのため、大本命といわれている車種さえ外して...

ベースモデルのTT 2.0TFSIにもクワトロが追加された

アウディ TT フロントグリル

 アウディはA4に対するS4やA8に対するS8など、特別のチューニングを施したモデルにSの文字を冠している。今回追加されたTTSクーペもSの文字が後になっているが、アウディのSモデルであることは変わらない。また今回のTTSの追加に合わせて従来はFF車だけだった2.0TFSIにもクワトロモデルが追加されている。
 最初に試乗したのは2.0TFSIクワトロ。147kW(200ps)の直噴DOHC+インタークーラー付きターボ仕様のエンジンを搭載したモデルで、これくらいパワフルなエンジンを搭載したモデルになると、FFではパワーを路面に伝えきれない感じもあり、クワトロの追加が待たれていた。アウディの特徴がクワトロにあることを考えると、これがTTシリーズの中核を成すモデルともいえる。
 エンジンの拭き上がりは相変わらず軽快で、停止状態からアクセルを踏み込んでいくとレッドゾーンの中まで一気に吹き上がって2速に変速していく。Sトロニックによる自動変速は実にスムーズで気持ち良く加速が伸びていく。改めてTFSIエンジンの良さを再認識した。
 クワトロの良さはパワーを効率的に路面に伝えられること。4輪を使ってパワーを伝えるので、発進時にはトラクションコントロールなどによってエンジン出力を絞ることなく存分に性能を発揮できる。発進時以外にもクワトロは効果を発揮し、特に雪や雨などの滑りやすい路面では格段に安心感が高まる。
 2.0TFSIクワトロが十分に良くできたクルマだったので、同じ2.0Lの直噴エンジンを搭載するTTSクーペの必要性がどれくらいあるのかが試乗前に気になったところだった。
 ところが乗って見ると大違いで、同じ2.0Lの直噴ターボとはいえ、ブロックにも手を加えピストンやコンロッドなどのエンジンの主要部品が専用のものに変更されたTTS用のエンジンは、2.0TFSI用のエンジンよりも格段にスムーズな吹き上がりを見せる。エンジンの回転上限も500回転ほど高められていて、そこまできっちり吹き上がると同時に、ケタ違いの力強さを感じさせる。

アウディ TT 2.0TFSIクワトロ フロント
TTSクーペの登場にあわせて、TTクーペの2.0TFSIにもクワトロが追加された。TTSに比べて、やや落ち着いた雰囲気の顔つきだ。
アウディ TT 2.0TFSIクワトロ リヤ
丸みのある美しいフォルムや張り出したフェンダーがとても印象的だ。18インチの大径ホイールは、デザインもスポーティな雰囲気。
アウディ TT 2.0TFSIクワトロ 2リッターターボエンジン
FFモデルとパワーなどの数値に変更はない。だが、クワトロとなったことで、パワーを余すところなく路面に伝えられるようになった。
アウディ TT 2.0TFSIクワトロ インテリア
フラットボトムのステアリングをはじめ、インテリアもスポーティな雰囲気だ。質感の高さはさすがアウディらしいものがある。
アウディ TT 2.0TFSIクワトロ フロントシート
ファブリックと本革を組み合わせたシートは、形状もよく体をしっかりと包み込んでくれる。長距離ドライブでの疲労感は非常に少ない。
アウディ TT 2.0TFSIクワトロ 走り
駆動方式がアウディのお家芸であるクワトロになり、さらに安定感を増した走りが味わえる。普通のユーザーならこちらでも十分満足できる。

豪快でスポーティな走りのTTSクーペ

アウディ TTSクーペ フロントマスク

 2.0TFSIが200psであるのに対して、TTS用は200kWの実力。パワーに換算すれば272psという数字になる。いわばランエボXやインプレッサWRXのようなモデルに相当するのがTTSということになるが、ランエボやWRXに比べると格段にしつけの良いエンジンという印象だ。単にパワーを絞り出すだけでなく、滑らかに力強さを発揮するからだ。
 もちろん停止状態から発進していくようなときには、ややテールを沈ませながら豪快な加速を見せるので、2.0TFSIとはひと味もふた味も違う加速感となるのだが、豪快ではあるものの乱暴ではないのがTTSクーペの良いところだと思う。
 磁性体を使って足回りの硬さをコントロールするマグネティックライドは、2.0TFSIクワトロにはオプションでTTSクーペには標準の設定。これもTTSクーペ用は専用のチューニングが施されており、パワーに対応したよりしっかりした乗り味となる。2.0TFSIでもオン/オフによってメリハリの効いた乗り味が味わえたが、TTSクーペでは操縦安定性と乗り心地のバランスがより高い次元に高められている。
 アウディTTは今では、スポーツカーの中で最も良く売れているモデルである。輸入車の中だけでなく、ロードスターやフェアレディZ、S2000などと比べても良く売れているのがアウディTTなので、そのスペシャルモデルとしてTTSクーペの存在意義はそれなりにあると思う。外観の違いなどはやや控えめながら、動力性能を始めとする走りの性能には、それくらいに明確な違いがあった。
 多くのユーザーにとっては2.0TFSIクワトロでも十分に速いが、腕に自信があって懐に余裕のある人にはTTSクーペも十分にお勧めできるクルマである。

アウディ TTSクーペ フロント
TTSクーペとノーマルモデルとの違いはフロントグリルの形状など、わずかしかない。大人の雰囲気が漂うスペシャルモデルといえる。
アウディ TTSクーペ リヤ
リヤのデザインの違いもわずかなものだ。だが、マフラーが左右2本ずつの4本出しになるなど、さりげなくスポーティさをアピールする。
アウディ TTSクーペ ヘッドランプ
A4やA5をはじめとする最近のアウディファミリーに共通するイメージのヘッドランプ。ポジションランプは視認性に優れるLED式となる。
アウディ TTSクーペ リヤコンビランプ
リヤコンビランプの形状はノーマルモデルと同様のスポーティなデザインのもの。レンズの透明度が高く、質感の高さを感じさせてくれる。
アウディ TTSクーペ リヤウイング
電動格納式のリヤウイングを採用する。自動的にせり出してくるのはもちろん、室内のスイッチで出し入れすることもできる。
アウディ TTSクーペ 18インチホイール
ホイールのサイズこそノーマルと同じ18インチだが、スポークのデザインは非常にスポーティ。スポーティなハンドリングが楽しめる。
アウディ TTSクーペ インテリア
ステアリングはTTSのバッジ付きの専用タイプで、パドルシフトも装備している。シートも専用品で、さりげない差別化が図られている。
アウディ TTSクーペ フロントシート
シートはTTS専用のスポーツタイプが奢られている。オプションのシルクナッパレザーは手触りが非常によく、高級感をプラスしてくれる。
アウディ TTSクーペ リヤシート
フロントシートと同じく、白いステッチが印象的だ。さすがにスペースは広いとはいえず、あくまでも緊急用のシートと割り切るべきだ。
アウディ TTSクーペ メーター
スピードメーターは300km/hのフルスケールで、TTSのロゴが入れられている。視認性もよく、非常に見やすいメーターだ。
アウディ TTSクーペ 2リッターターボエンジン
ブロックやヘッド、そしてターボチャージャーを改良し大幅にパワーアップ。レスポンスにも優れたスポーティな味付けがなされている。
アウディ TTSクーペ ラゲッジ
ラゲッジスペースは広いとはいえないが、実用上困るほどではないはずだ。リヤシートを収納すれば、スペースを稼ぐことができる。
アウディ TTSクーペ 走り
アウディ TTSクーペ 走り
アウディ TTSクーペ 走り

written by 松下 宏

アウディTTの新車見積もり
希望しない電話は一切なし
2日以内のスピード回答
よくわからない諸費用を含めてお見積もり
新車見積もりはこちら
代表グレード
アウディ TTSクーペ
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
4200×1840×1380mm
車両重量[kg]
1470kg
総排気量[cc]
1984cc
最高出力[ps(kw)/rpm]
272ps(200kw)/6000rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
35.7kg-m(350N・m)/5000rpm
ミッション
6速AT
10・15モード燃焼[km/l]
10.8km/l
定員[人]
4人
税込価格[万円]
675.0万円
発売日
2008/9/2
レポート
松下宏
写真
佐藤靖彦