9月1日土曜日、東京・有明の「東京ビックサイト」で、交通安全講習『母と子の楽ラク運転講習会〜お父さんもご一緒に〜』が開催された。これは、雑誌やWeb、テレビなどで活躍するモータージャーナリストで構成される任意団体「日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)」が、母親と子供の交通安全促進を図る目的で、年に一度のボランティア事業として開催している安全運転講習会。今年で既に9年目を迎える。事前申込をすれば、無料で参加することが出来るというからウレシイ。
交通事故による死亡者は、自動車の安全性能の飛躍的向上もあって、近年減少傾向にある。しかしその数はさらに減らすことが出来る。そのために必要なのは、ドライバーの安全に対する知識・認識。それも、交通標語のような「精神論」ではなく、正確な理論に基づいた知識だ。
クルマのことを、誰よりも深く愛するAJAJ会員たち。そんな彼らの交通安全に対する「熱い」思いが込められたイベントの模様を、速報でお届けする!
基礎からみっちり覚え直す!
オリエンテーションのあと、さっそくドライビングポジションの講習が行なわれた。
安全な運転を行なうためには、まず乗員全員のシートベルト装着。これはもう、基本中の基本だ。運転席・助手席こそ高い装着率だが、チャイルドシートや後席シートベルトの装着率といったら、もうガッカリするくらい低いのが現状なのだ。
先の国会では後席シートベルト装着の義務化が決定した。法令に反映されるのはまだ先とはいえ、「法律で禁じられるから」とかではなく、まだの方は今すぐ実践して欲しいと、CORISMでもお馴染みの達人「こもだ きよし」講師のお言葉。
そしてドライバーは、正確なシートポジションとステアリングの位置設定を行なう必要がある。万が一の時、的確なブレーキや的確なステアリングさばきをするために、絶対に欠かせない儀式だ。
そして忘れがちなのがヘッドレストの調整。ヘッドレストというとヘッド(頭)をレスト(休める)モノ、と考えてしまうが、本来の意味は「ヘッドレストレイント」。追突時などに頚部を痛めないため、頭部を拘束する装備なのだ。ご存知でした? 参加されたほとんどの方は「知らなかった!」。
もう、これだけでも今日参加した甲斐がありましたね!
え、まだまだ!? そうそう、その意気です。
慣れているヒトこそ危険!?「ブレーキング」の重要性を知る
さて、今回の講師は、AJAJ会員のモータージャーナリストと、実践的安全運転講習を行なう講師陣の団体「セーフティドライビング・インストラクターズ・アカデミー(SIA)」のメンバーだ。
日頃、自動車メーカーやタイヤメーカー主催のドライビングスクールなどで、一般ユーザーやプロドライバー向けのレッスンを行なっている講師たちの、分かりやすく理論的なレッスンが「無料で」受けられるというワケ。
会場を屋外の特設コースに移し、「ブレーキング」に関する講習が開始した。
男女問わず、「毎日クルマに乗っているから、運転には慣れているよ」という方でも、意外にちゃんと出来ていないのがブレーキング。クルマのブレーキ性能を100%出し切れず、それによって起こる事故が案外少なくないのだという。
いざという時のための正しい「急ブレーキ」の踏み方・・・といえ、タイヤがキュッとなるくらいの急制動を、そこらの公道で実験するのはとても危険。こういう貴重な機会にぜひ体験しておきたいところだ。最近の乗用車は、一部の軽自動車を除きABS(アンチロック・ブレーキ・システム)を標準装着する。この機能が、実際に作動することも体験することが出来るのだ。
「ブレーキング」に必要なものとは
ABSは、濡れた路面などでもタイヤのロックを防ぎ、しっかり路面を捉えるために最低限必要な装備(※したがって、ABS非装着のクルマは、もはや「買ってはいけない」)。実際に路面に水を撒き、滑りやすい路面としてテストが行なわれた。
ここで重要なのは、とにかく「しっかり踏む」こと。え、とにかくギュッと踏めばいいんでしょ? いやいや、気合いや根性ではない。ここで効くのが、先ほど習った「ドライビングポジション」なのだ。実際にやってみるとわかるが、正しいステアリング位置、正しいシート位置・高さでないと、正確に急ブレーキを踏み、ステアリング操作するなど出来ないことに気付くはず。「改めて身が引き締まる思い」とは、ある参加者の声。
ホントは、みょーに背もたれを倒したりして、だらしなく『危険』なドライビングポジションでダラダラと走る輩(何か「カッコいい」とでも勘違いしているのだろうか、思いのほか良く見かけるのだ)にこそ、受けて欲しい、とても重要なレッスンなのだ・・・。
みんなびっくり! エアバッグの開く瞬間!
さて、その他にも数多くのプログラムが用意された。なかでも注目は『エアバッグの展開デモンストレーション』だ。
万が一の事故を起こしたときに、乗員を守ってくれる「エアバッグ」。白いエアバッグがボヨンと膨らんだ様子を一度は目にしたことがあるはず。しかし、膨らむ瞬間を観たことがある!というヒトは、ほとんどいないのでは。会場では、実際にエアバッグを膨らませるデモンストレーションが行なわれたのだが、その様子は『炸裂!』という表現が相応しい。火薬を用いて瞬時(まさに、まばたきする間くらいの時間に)に膨らみ、そしてしぼむのだ。あまりに強烈な爆発音に一同、ただただ圧倒。ただし実際の事故の際には、衝突音のほうがさらに凄いので、あまり気にならないのだとか。
しかし、もしシートベルトをしないでエアバッグが開いたとしたら。その時、ひざに子供でも抱えていようものなら・・・そんな想像をして、自らを反省するヒトもいたはず。正しい知識がないと、安全装備の効果も半減どころか逆効果。エアバッグは、あくまでシートベルトの補助装置。そんなことを、身をもって感じられたデモンストレーションなのでした。
『AED(自動体外式除細動器)』の器械、触ってみたことありますか?
最近、駅や空港、サービスエリアなどで「AED」と呼ばれる自動体外式除細動器を見かける機会が増えた。これは、心室細動などの致死性不整脈を、心臓に電気ショックを与えることで正常に戻す器械のこと。平成16年7月より一般市民による使用が認可されたことから、公共施設への設置が進んだのだ。見たことはあるけど、やったことはない・・・そんなヒトは多いはず。会場では、参加者の子供たちが実際に取扱ってみることで、その操作のカンタンさを披露した。
毎日の買い物や送り迎えなど、実はお父さんよりハンドルを握る機会が多いお母さんたち。しかし、運転の技は自己流、という方がほとんどのはず。「母と子の楽ラク運転講習会」は、目からウロコの連続となったことだろう。
今回は参加されなかった皆さんも、ぜひ来年こそは参加してみて欲しい!