三菱ふそう、新型大型トラック・バス用「尿素SCRシステム」

SCRシステムで新長期規制 + 燃費向上に対応

 ダイムラークライスラートラックグループの三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下三菱ふそう)は4月13日、07年に登場予定の大型トラック「スーパーグレート」に搭載するディーゼルエンジン用「尿素SCRシステム」の概要を発表した。なおSCRシステムは日産ディーゼルと部品を共有化し、コストアップを抑制する。

 ディーゼルエンジンに関して世界一厳しいとも言われる「平成17年度排出ガス規制(新長期規制)」。ディーゼル車の排出ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)を、大幅に規制し大気汚染を抑制するものだ。
しかしいっぽうで、NOxを減らすことで反比例に悪化する傾向にある燃費の向上も、長距離利用の多い大型トラックでは大きな課題となっている。
 これらの相反する課題を克服するものとして、三菱ふそうが大型車向けに採用したのが「尿素SCRシステム」だった。

排ガス浄化 + 燃費6.5%アップ!

 尿素SCRシステムとは、エンジンからの排出ガスを3ツの触媒を介して浄化するものだ。
 まず「前段酸化触媒」によりHC(炭化水素)やCO(一酸化炭素)を無害化。次に、AdBlueと呼ばれる尿素(Urea)を添加し、SCR触媒でNOxを無害化。最後に、AdBlueに含まれるアンモニアを「後段酸化触媒」を用いて無害化。排出ガスをクリーン化する、という流れになる。

 05年モデルの大型トラック(新短期規制対応車)との比較では、高速道路走行時の燃費でSCR車はおよそ6.5%もの燃費向上に寄与したという。

 なお先に記したように、既に先行して尿素SCRシステムの市販化および新長期規制対応に成功している日産ディーゼル社のSCR触媒内蔵マフラー(東京濾器株式会社の製品)や尿素水タンク、ポンプモジュールなどを共有することで、開発時期の短縮とコスト抑制を図っているのが特長だ。

 いっぽうで、やはりSCRの開発に成功しているダイムラークライスラーグループが有するノウハウを活かし、VGターボ付きコモンレール式ディーゼルエンジンやその制御システムなどは、三菱ふそうの独自開発によるものとした。

三菱ふそうトラック・バス株式会社 パワートレーン開発統括部 秋川 文雄 統括部長
記者発表を行なう三菱ふそうトラック・バス株式会社 パワートレーン開発統括部 秋川 文雄 統括部長
三菱ふそうの「尿素SCRシステム」
「尿素SCRシステム」カットモデル。左から1.前段酸化触媒、2.SCR触媒、3.後段酸化触媒。1と2の間に添加ノズルが装着される。
「尿素SCRシステム」用尿素水タンク
「尿素SCRシステム」用尿素水タンク。他の液体混入を識別する尿素水識別センサー、水位を見るレベルセンサー、解凍用温水配管が備わる。

全国1500ヶ所で供給可能の「AdBlue」

 SCRで添加される「AdBlue」は、尿素(32.5%)と純水(67.5%)で生成される。無色・無臭・無害で不燃性があり、安全性の高い物質といわれている。各地のトラックステーションを始め、07年4月時点で全国約1500ヶ所もの供給インフラが構築されているという。


 この尿素SCRシステムは、間もなくデビュー予定の大型トラック、新型「スーパーグレート」から採用される見込みだ。三菱ふそうによれば、大型トラック・バスに関しては燃費に優れるSCRで、いっぽうで中・小型トラック・バスには軽量で済むDPF(Diesel Particulate Filter:PMを取り除くフィルター)により、新長期規制に対応する予定だという。
 なおSCR採用によるコストアップの度合いについては、新型車発表前の現時点ではまだ公表されていない。

( レポート/写真:CORISM編集部 )