ホンダ エリシオン・プレステージ フロントフェイス

ミニバンデザインの王道「ちょいワル」がテーマ

 世の中ちょいワル系が流行りだ。ホンダはエリシオンのマイナーチェンジと同時に3.5リッター、300馬力を発揮するクラス最強最速エンジンを搭載したホンダ エリシオン・プレステージを投入した。
 とにかく顔がちょいワルになった。ひと目でホンダ エリシオン・プレステージと分かる。ドーンとインパクトのあるグリルにヘッドライトの造形パターンは、トヨタのアルファードをかなり意識したデザイン。ただでさえ大きなミニバンをさらに大きく見せて、威圧感を与える手法は、ちょいワル系ミニバンの王道ともいえる。どちらかというと、マイナーチェンジ前のエリシオンは、今ひとつ割り切れなかったようだ。エスティマ系の洗練さも欲しいしアルファードのちょいワルさも表現したかったはずだ。そのためか、スタイリングにメリハリがないというか、個性が伝わらない印象があった。実際、他メーカーのミニバンに対して、大きく販売台数でも遅れをとってきた。というワケで、今回のマイナーチェンジでエリシオン・プレステージは、その個性を明確に打ち出してきたのだ。

全グレードをプレステージフェイスにすればいいのに・・・。

 で、通常の3.0と2.4リッター車に関しては、ちょいワルテイストが加わったもののまだ完全に割り切れていない印象。日産のちょいワル系といえばエルグランドだが、エルグランドもエントリーモデルに当る2.5リッター車を出したとたん売れた経緯がある。そういった流れから考えると、すべてのモデルをプレステージスタイルに統一するべきだったのかもしれないと思ってしまうのだ。

ホンダ エリシオン・プレステージ フロントスタイル
ホンダ エリシオン・プレステージ リヤスタイル
ホンダ エリシオン・プレステージ リヤスタイル
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高い3列目シートの実用性

 インテリアの座り心地は、クラストップレベルにある。とくに3列目シートは格納できなくてもいいという割り切りが効いてか、座面の長さもしっかりと取られていて実用度はかなり高い。セカンドシートも同様で、シートアレンジを多少犠牲にしてでもしっかり座れる事を優先にしているのは好感が持てる。ただ、その快適な室内に乗り込むときに気になるところがあった。エリシオンのフロアは1段で乗り込むのに対して、エスティマなどは2段ステップを採用している。撮影のために何度か乗り降りしたが、低床フロアとはいえ1段ステップは、2段ステップに比べると多少乗り込みにくい。とくに、お年寄りや子供などは、その違いを明確に感じ取るのではないだろうか。

VSA(横滑り防止装置)が標準装備という高い安全性だが・・・。

 安全装備に関しては、エリシオン・プレステージに全車VSA(横滑り防止装置)が装備された。背の高いミニバンは、高速走行時になればなるほど重心の高さから不安定になり、最悪、事故の瞬間など横転する危険性も高い。VSAは、横滑りはもちろん、横転の危険性も低くしてくれる装備のひとつ。日本に導入されている欧州車には、ほとんどといっていいくらい標準装備されているが、日本車は一部の高級車を除きオプション装着かできないモデルがほとんど。
この横滑り防止装置は、すでに世界レベルで見るとシートベルトに次ぐ安全装備といわれていて、エアバッグより優先順位が高い。つまり、エリシオン・プレステージは、安全性能に関しては世界標準と肩を並べたといってもいい。ただ、アメリカを主要マーケットとしているCR-Vは、日本仕様も全グレードVSA付だ。しかし、残念ながらエリシオンの他のグレードでは、3.0リッターの一部に標準、2.4リッターは装着不可という現実には、どんな意味があるというのだろうか・・・。

ホンダ エリシオン・プレステージ フロントシート
ホンダ エリシオン・プレステージ セカンドシート
ホンダ エリシオン・プレステージ サードシート
ホンダ エリシオン・プレステージ インパネ
ホンダ エリシオン・プレステージ シフト
ホンダ エリシオン・プレステージ リヤモニター

2トン弱の重さをまったく感じさせないホンダ・エンジンの秀逸さ

 さて、エンジンはというと思わず「気持ちいい!」と叫んでしまうほどだ。アクセルを全開にすると、ストレス無くレブリミットまでシャイーンとよく回る。この瞬間だけは、まるで大きくて重いミニバンに乗っているとは思えないほどスポーティ。やっぱりホンダのエンジンは気持ちいい。2トン弱という重いボディをものともせず、あっという間に車速を伸ばしていく。さすが300馬力。クラス最速は間違いない。振動もほとんど感じないのも美点。プレステージの名は伊達ではない。

鈍重さを感じさせないシャープなハンドリングと上質な乗り心地の両立

 ハンドリングは想像以上にシャープな設定。大きなボディを感じさせないほど、クイッとノーズの向きが変わる。中高速コーナーなどは、意外と得意分野。想像以上のスピードで曲がっていく。ミニバンでも「軽快ハンドリング」は、ホンダのミニバンに共通するエッセンスだ。乗り心地も快適。18インチという大径タイヤを履いているものの、ちょっとした段差もスゥイっと何事も無かったようにこなす。ハンドリングを生かすために、必要以上に足を固めていない。これなら、同乗者からクレームも出ない。サスペンションの取り付け部の剛性アップ効果だろう。
少し気になったのは、ブレーキの容量。長い下りの山道でのことだ。それもそこそこスピードの出るルート。速いエンジンにスポーティなハンドリングを満喫していると、だんだんとブレーキが頼りなくなってきたのだ。2トン弱のボディに多人数乗車が効いたのだろうか・・・。パワーと車重に見合ったブレーキが欲しいと感じた瞬間だ。

ホンダ エリシオン・プレステージ エンジン
ホンダ エリシオン・プレステージ ホイール
ホンダ エリシオン・プレステージ 走り
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ちょいワル系ミニバンNO1?!

 威圧感のある大迫力フェイスに300馬力の実力を誇るエリシオン・プレステージ。スタイルからのライバルは、エルグランドとアルファード。両車ともモデル末期ということで、エリシオン・プレステージ圧倒的有利。デザインの方向性は違うが、3.5リッター比較ならエスティマ。この対決は、甲乙つけ難し。ユーザーの好みの差か? 個人的に選ぶとしたら、エスティマ・ハイブリッドかな。エコ派なんで。エッ? 全然関係ないって???

代表グレード
エリシオン プレステージSG HDDナビパッケージ
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
4,920×1,845×1,790
車両重量[kg]
1,940
総排気量[cc]
3,471
最高出力[ps(kw)/rpm]
300(221)/6,200
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
36.0(353)/5,000
ミッション
5AT
10・15モード燃焼[km/l]
8.5
定員[人]
7人
税込価格[万円]
395.85
発売日
2006年12月21日
レポート
大岡智彦
写真
和田清志
達人プロフィール: 大岡 智彦
職業:コリズム編集長
自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。