ホントに雪道で大丈夫なの?
「だいたい、タイヤに布みたいなものを巻きつけただけで、雪道でグリップするワケないでしょ!」。誰もがオートソックを見た瞬間にそう思うはずだ。ボク自身もはじめてオートソックを見たときにそう感じた。
ところが、先にオートソックを装着したクルマで雪道を走行した経験があるコリズムの達人、菰田さんと丸山さんは「ムチャクチャいいよぉ! すごくタイヤがグリップするんだ!」を連発する。さんざんオートソックのパフォーマンスを聞いたのだが、イマイチ納得いかない。ならば、実際に装着したクルマで納得行くまで走ってやろうと、長野県の女神湖で行なわれたオートソックの試乗会に参加した。
装着は超簡単! お年寄りや不精者でも楽々取り付けできる!
まずは圧雪路の坂道での発進。夏タイヤは想像通りホイールスピン! なかなか前に進まない。タイヤと回転で雪が溶け、タイヤと雪の間に水膜ができ、さらにタイヤのグリップが落ちるという悪循環だ。
そこにオートソックの登場だ。まず驚いたのは、取り付けの簡単さ。タイヤの上部からオートソックを被せて、ちょっとバックする。まだ被さっていないところを被せて終了。初めて装着したボクですら、5分程度で2輪とも装着できた。慣れれば、3分ほどで装着可能だろう。多少ズレて装着されていても、ちょっと走行すると自動的にセンタリングされるというから、不精者にも安心だ。装着の簡単さは、今まで使ったことののあるどのタイヤチェーンより簡単。それこそ、小学校の高学年くらいの子供の力でも十分だ。このイージーさは、お年寄りなどにはとくにありがたい。
見た目より強力なグリップ力。洗って干せば、また使える。
さあ、走り出す。ワザと滑るかどうかのチェックのため、アクセルを多めに踏んでみた。すると、拍子抜けするほど簡単にスタックしていた場所を脱出。担当者に理由を聞くと、オートソックの化学繊維が水を吸い込むので、最大のグリップが発揮できるという。オートソックの化学繊維はポリエステル系。繊維の織り方にもノウハウがあるという。オートソックの寿命は、白い繊維がなくなり黒くなってきたら交換時期。そのままポイっと燃えるゴミの日に出せばよい。通常のタイヤチェーンは粗大ゴミだから、環境にもいい。そもそもただの布。それだけに、保管場所には苦労しない。サイズにもよるが、1セットで1キロ以下の重量。鞄の中に入れて持ち歩いても、それほど気にならない。メンテも超簡単! ドロなどの汚れを水洗いして、干しておけばまた使える。
次は氷上でのテスト。当日の湖面(路面)はツルッツルのピッカピカ。まるで磨きこまれた鏡のような氷上状態。もはや真直ぐ走らせることすら困難な路面だ。まずは、時速20kmからの急制動。夏タイヤでは、時速20kmまで速度を上げることすらむずかしい。ガツンとブレーキを踏んだ瞬間からABSがゴッゴッと効き始める。クルマはもうドライバーの想像を越えスルゥーとドンドン前に進む。次はオートソックを装着してトライ。クルマが動き始める瞬間のトラクションは、明らかに非装着の時より上。初期のブレーキングでは、非装着の場合と大きな差は感じられないものの、停止する少し前の速度域からのグリップ力を感じる。結果としては、制動距離は約5メートルほど短くなっていた。
ESPなど横滑り防止装置をOFFにしなくても使える高い安全性
ブレーキングの次は、定常円旋回。特筆すべきは、ESPなどの横滑り防止装置を解除しなくてもいいのだ。通常のタイヤチェーンの場合、チェーンの装着によりタイヤの外径が変わることにより、ESPのセンサーが誤作動をする恐れがあるという。せっかくの安全装備も滑ってリスクの高い雪道でESPを解除しなくてはならないのは、あまりにも理不尽。オートソックの場合は、薄い布なのでESPをONにしたままで走れる。もしもクルマが横滑りしたときには、ESPが介入してクルマを安全な姿勢へと導いてくれるのだ。
実際にオートソックを履き、ESPのONとOFF両方を試してみた。もはや試すことが無駄なくらい明確に違う。多少ラフな運転をしてもESP+オートソックのほうが滑らずに安心して旋回できた。もはやクルマのコントロールが効かなくなるということは、ほとんどなかった。ESPオフの場合は、とにかくラフなアクセル操作をすると駆動輪がすぐに滑り出す傾向にあり、一旦滑るとなかなかすべりを止めるのが難しい。
また、チェーンを装着するとガタガタという振動はもはや諦めの境地。乗り心地を語るなんて、もってのほか。タダひたすらガマンするしかなかったが、オートソックならほとんど振動もなく、乗り心地も通常のものと遜色ないのも利点。確かにこれなら、自動車メーカーの純正品として納入されているのもよく分かる。
もしものために、トランクにひとつ入れておきたい!
オートソックの使い方は、降雪地帯はスタッドレスタイヤを装着した上での雪道でスタックしたときの緊急脱出用。首都圏などの非降雪地帯は、もしもの雪のときに備えとして使える。事実、ヨーロッパでも南フランスやスペインといっためったに雪の降らない地域での販売が伸びているという。また、年に数回スキーやスノボに行くという人にもお勧め。スキー場近くのインターチェンジまで夏タイヤのままで行き、降雪が予想される近くまで行きオートソックを装着。スキー場まで約片道20キロ。そんなシチュエーションなら、年4回は使える。価格はサイズにもよるが、1万円台半ばが中心。通常の非金属チェーンよりは若干割安なイメージだ。
ちなみに、ボクは神奈川県横浜市に住んでいる。去年は暖冬で雪が積もることはなかったが、今年はもしものとき用にオートソックをトランクに入れてみようと思った。