前回の市街地走行から高速度道路に入り、今度は編集部・徳田がドライブ。コリマネはドカッと助手席に陣取り、プントへの愛を改めて確かめる。バイトYはリヤシートへ。

首都高から東名へ、某試乗地を目指す車中では、リヤシートのYがアツーくクルマへの思いを語る。
クルマ好き同志をちっこいクルマに詰め込んで、あれやこれやとクルマ談義。
いいなぁ、こういうクルマ生活。学生時代以来の懐かしい空気に和んだ。
フィアット グランデプント ワインディングは楽しい

走行速度が上がると乗り味も予想通り変化

高速道路では予想通り、
「やはり雰囲気変わったね、走りの。」(徳田)
明らかに振動が減り、ピッチングの収束もよくなった。助手席に乗っていても、それがわかる。
路面の継目でも跳ねることには跳ねるが、一般道(の速度域)での振動よりも収まりは格段に良い。
スタビリティも十分で、路面に吸い付く安定感が頼もしい。
(それでもこのタイヤは・・・うーむ)
特にボディ剛性が高いわけでもないのだが、巡航速度もソコソコ○×△な速度域でも余裕がある。
高速走行での足周りは、運転する人も同乗している人も安心して乗っていられる懐の深さだ。
「これが欧州車かー」(知ったかぶりコリマネ)
なんて、輸入車シロートのコリマネが気取ってみる。
だが・・・

ひたすらトロイ

確かに快適ではある。
でも、決して楽チンではないし、リラックスも出来ないクルマである。
他車の視線が気になる人、イライラと運転が神経質な人は覚悟しておいた方が良い。
街中の走行でも露呈したエンジンのパワー不足は、高速道路を走ったからって変わるわけでもない。

道が空いているときは気持ちよく流せる。
が、追越などで加速をしなければならない状況になったら非常にメンドイことになる。
トロイ。とにかく加速がトロイ。
3人も乗っているから?確かにそうなのだが、
「1人しか乗車していないときでも変わらなかった。」
(後日、1人でも乗り回した徳田談。)

6速MTもなかなか厄介

6MTでスペック好きにも訴求できるよねグランデプント

そもそもこの6速MT、日本の速度域にあっていない。
皆さんが高速道路を走るぐらいのスピードからの追い越加速では、4速だとトルクが薄いため加速は絶望的。
3速でもだめ。
かといって2速だとギヤが離れていて、レッドゾーンの手前付近でンガーッ!といったところ。
ハイギヤード(高速寄り)???と思ってしまうが、↓のスぺック表の通り、実は国産よりも低速寄りである。

無題ドキュメント
グランデプントと国産車1200〜1500ccクラスのMT車ギヤ比
車名
日産 マーチ
フィアット グランデプント
マツダ デミオ
エンジン
CR12DE(1200cc)
199A6(1400cc)
ZY-VE(1500cc)/ZJ-VE(1300cc)
1速
3.727
3.909
3.416
2速
2.047
2.158
1.842
3速
1.392
1.480
1.290
4速
1.029
1.121
0.972
5速
0.820
0.921
0.775
6速
-
0.766
-
ファイナル
4.066
4.071
4.105

やっぱり、MTだけじゃなくエンジンパワー自体も?なのです。
例えば、前方を走る車に追いつき、前の車が「先にどーぞ」と気を使って道を空けてくれちゃったりしても、なかなかご要望にお応えできない。
3速でエンジンをうわあぁぁぁぁ〜んんん・・・と唸らせながら、ゆっくりと前方のクルマを追い抜く。
後方からはマジェスタなんかがグングンと近づいてくる。
筆者のようにエンジンは回してウヒャウヒャという人間には、深夜の高速道路で流すときぐらいしか6速を活かすシーンなんてあまりなさそう。

ただ、ひとまず流れにさえ乗ってしまえば、前を走る遅いクルマと遭遇しない限り、比較的快適なことには間違いはない。
それなりの速度に乗れば、減速のない限りどんどん他のクルマを追い越していけるし、同乗者にも不安がないスタビリティはさすが欧州車(陳腐な表現力だなぁ)。

高速道路の途中のサービスエリアで、徳田から再びコリマネのドライブへとスイッチした後は、遅い車に遭遇しても追い抜かず、もう流れに任せて快適さを優先することにした。

実は気持ちがいいエンジンなんですけどね

紫陽花がきれいな某所を流すオサレーなプント

コイツのレブリミットは、メータ目測で6500rpm付近だ。
回転は滑らかで気持ちがいいし、引っかかりはない。
筆者がコダワリって乗り続けたホンダエンジンのように突き抜けて回りはしないし、期待もしていない。ごくフツーのフラットなエンジンだ。
が、そこそこ回転の盛り上がりを楽しめるエンジンでもある。
サウンドもDOHCエンジンらしい和音が心地よく響き、はっきり言って官能性は期待以上だった。

スーパーチャージャーでも入れてくださいといわんばかり、スカスカのエンジンルーム。そして、そうしたくなるエンジンパワーのグランデプント。

ところがこの「レブリミットはメータ目測で6500rpm付近」というのがクセモノ。
高速道路の料金所ダッシュで「おおおっ!!!」いい気分になったところに、突然「ワワワワワワワワオーン」と燃料カットが始まる。くやしー。
もちろん国産車の同クラスもリミットは大抵6500rpm付近だし、特別グランデプントが悪いわけではない。
しかし、16V Sportと名乗って差別化して大袈裟なタイヤを履いているのだから「もももうちょっと・・・」を期待してしまうのが人情。
実際、6500rpm付近から「まだもう少し回せそう」とトルクの持続を感じさせるだけに、ますますその想いは募る一方。じらされてる感じ。
これが先のMTとの相性につながっていて、街中や高速道路でのメンドクサさを助長している。
もったいないなぁ。いい車なのになー。
(と思う筆者を編集部一同はハナで笑うのであった。)

そうこうしているうちに高速走行を終了し一般道へ、そして目的地に到着。
料金所の入り口から急な上り坂のワインディングを駆け抜けながら、一気に標高が高くなる。
わくわくしてきた!不思議と先ほどまでよりクルマが元気になった錯覚を覚える。テンションの高まりが、積極的な走りを誘う。
「そこで停めて。定番ポイント。」(徳田)
そうだ、グランデプントの撮影(掲載している写真)をしないと。

室内はいいねぇ!

さて、をゆっくりと見てみよう。
筆者的にはセンスが良いなぁ、と思う。その1で述べたようにごく普通の操作系に好感が持てる。操作に迷いもないし、フィーリングも上質(国産比)。
「印象ないけど、それって悪くないってことの裏返し。ごくごくフツー。」
(インパネ系についての徳田 談)

筆者はかっこいいと思うグランデプントのインパネ
ホワイトメーター好きの皆さんグランデプントをよろしく

シートはオプションのレザーシート装備だが、フロント・リヤともにシートの座り心地は良い。欧州車に詳しい、というかこの辺(内装とか使い勝手)にうるさい徳田(身長180cm)も
「良い。ドイツ車っぽい矯正感が気になるけど、乗り心地もいいし長時間でも疲れない。」とのこと。
標準のファブリック?に乗っていないので絶対的な評価は出来ないが、国産車との違いをもっとも感じる部分であった。
気持ちいいなぁ。

なかなか快適なリアシートはのんびり過ごせる・・・音さえ我慢すれば

室内空間にも不満なし。特にリヤシートは膝元も頭上も広い。街中の移動なら4人乗車でもいけるのではと思わせる。長距離移動の場合はエンジンパワーも含め3人が限界だろう。
しかし、これはあくまでもシートや空間の快適度であって、走行中の場合は話が変わる。とにかくロードノイズがすごいし、バタバタ感もリヤシートがもっとも影響を受ける。
筆者は音振に無頓着なので、気付いてはいても「気にはならない」タイプ。復路でのリヤシート乗車は楽しく過ごせたが、気になる人は許せないはず。
すべてを求めてはいけないクルマ。大らかな気持ちになろう。

キモチよかったよグランデプントのこのシート
乗り心地はともかくとして、座り心地はよかった。
オプションのレザー装備というところが、公平な判断を妨げるかもしれないが。
鉄板剥き出しだよグランデプント
リヤラゲッジルームはごく普通。
室内空間であっても、荷室は鉄板剥き出しというのもおもしろい。
筆者は鉄板剥き出しも好きだからいいけど、皆さんはどうでしょう?
実用的だよグランデプント
その分、実用的ではある。
しっかりとフラットになるシートアレンジは美点。
思わずへヴィな使い方をしてしまいたくなる。

・・・・とか言いながら、趣味性は理解できるものの、クルマ選びとして見た場合「まぁこんなもの」で許せる車両価格でもないところが課題。
また、アフターサービスを含めた総合的なインフラの不備による不安も、国産車が好きだがホントは欧州車に乗りたい!という予備軍を取り込めない要因の一つだろう。

上りはキツイが下りは楽し

内外装の撮影や、徳田ドライブによる走行シーンの撮影を一通り終え、今度は1人での乗車でワインディング走行を、それぞれ楽しむことにした。
まずは撮影場所から峠のサミットを目指し、上り勾配の走行となるが、やはりここでもパワー不足が露呈する。
6500rpm前後のレブリミットによる苛立ち、が高速道路での走行時よりもさらに気になる。
「まだ伸びるのに」と心でつぶやきながら3速で6000rpm以上をキープ、かといって4速に上げるとキツイ。

やっぱりワインディングは楽しいグランデプント

しかし、高速道路よりも不快ではなく、むしろどうやって走ろうか引っ張ろうか思案するだけでわくわくする。
少なくとも、筆者にはそう思わせるだけのムードと味わいを持っている。
あくまでも後方に速いクルマがいない前提ではあるが。
グランデプントはストイックにスピードを追求するクルマではないし、乗り味や操る楽しさを満喫するのが正解だろう。

それにしては特徴が無さ過ぎる、という意見も周囲に多く聞かれるが、コリマネとっては、なんともいえない魔味が満載だ。とやかく言われれば言われるほど地味な存在ではない。特にデザインを見れば明らかだろう。パーキングエリアでも、フツーのパパさんドライバーから結構な視線を集めた。

下りに入ると「やっぱり楽しい!!!」

下りのワインディングでコンパクトカーならではの振り回す快感は、グランデプントにも備わっている。
コーナー手前、「ンワォーーー」とヒールトゥーでシフトダウン。
(筆者の腕程度の)コーナリングはそれほどトリッキーではなく、電動パワステの割には接地感がつかみやすい。
んんん、気持ちいい。
気持ちいいだけに、6500rpm近辺の燃料カットはやっぱり気になる。
惜しい。
そういえば、ここがあのでっかいタイヤ性能に頼っている部分でもあるわけだ。

では、グランデプントだからの気持ちよさは?と問われれば、それはもう「見た目と雰囲気と味わい」というしかない。そもそも輸入車という選択肢は、そういう特性を強く持っているのではないだろうか。
それは、ある意味日本の販売店の思惑でもあるとは思いながらも、同時にだまされてもいいかな、という魔力でもある。
ユーザはそこに投資できるのか?
はたして代理店は本当にシェアを伸ばしたいのか?それとも・・・

筆者は根っからの国産車党。しかし、欧州ハッチバック車への憧れもある。
今回の試乗で分かったことは、スペックや官能性、快適性で上回る国産車が並んでいても、本気で購入の選択肢に食い込むだけの価値をグランデプントがもっているということだ。
スイフトスポーツとグランデプントの選択肢を与えられたら、絶対性能以外のところで大いに悩むことだろう。

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フィアット グランデプント コリマネ私情の試乗記その1【ファーストインプレ&街乗り編】

【CHECK&TRY】  written by コリマネ (2006.07.11)

念願のリクエスト試乗!グランデプントにラブラブなコリマネ。でもパワー不足なおマセさん。 >> 記事全文を読む


written by コリマネ
職業:Webディレクター兼プロデューサ