AEB(衝突被害軽減ブレーキ)装置とは?ASVとの違い、保険での割引について解説

AEB(衝突被害軽減ブレーキ)装置とは?ASVとの違い、保険での割引について解説

AEBとは自動ブレーキのこと

AEBとは「Autonomous Emergency Braking」の略で、いわゆる自動ブレーキのことです。AEBS(Autonomous Emergency Braking System)と略されることもあり、また「衝突被害軽減ブレーキ」や「先進緊急ブレーキ」と呼ばれることもあります。

AEBの説明

AEBは以下の3段階で作動します。

  1. カメラやレーザーが前方障害物/人を検知
  2. 衝突の可能性をドライバーに警告
  3. 衝突回避/被害軽減のためブレーキ作動

AEBの役割は警告音や自動ブレーキで衝突事故を回避したり、被害を軽減したりすることです。高齢者ドライバーの増加や、居眠り運転による重大事故の発生といった背景もあり、現在は国もAEBの普及に力を入れています。

AEBの効果

AEBの効果は以下の2つです。

  • 衝突事故が起こらないように予防・回避する
  • 衝突してしまった際の被害を軽くする

衝突の可能性を検知したら、AEBは警告音を発してドライバーに知らせたり、自動ブレーキを作動させて衝突事故を起こさないように試みます。実際に、AEB搭載車は非搭載車と比べてクルマ同士の追突事故率が50%前後低いというデータもあります(出典:公益財団法人交通事故総合分析センター)。

衝突を避けられない場合も、自動ブレーキによってスピードが下がるため、被害が軽くなることが多いです。

AEBが作動しない場合もあるので注意

AEBの事故率を下げる効果は高いですが、その技術を過信してはいけません。特に、以下のような環境ではAEBが作動しにくいので注意してください。

  • 作動条件の速度よりスピードが速い/遅い
  • 雪道など滑りやすい路面
  • 急な下り坂
  • 雨天
  • 夜道や周囲が暗い状況
  • 逆光による反射がある
  • 検出装置の前に物がある
  • 検出装置の前の窓が汚れている

国産の新型車は装備が義務化

日本では、2021年11月より国産の新型車に対して自動ブレーキの搭載が義務化されています。また輸入車の新型車は2024年7月より、国産の継続生産車は2025年12月より、輸入車の継続生産車は2026年7月より装備が義務化されます。

ASV(通称サポカー)との違い

AEBとよく混同される言葉としてASV(Advanced Safety Vehicle)があります。

ASVとは

ASVは日本語で「先進安全自動車」といい、事故予防や被害軽減のための先進技術(安全装備)を取り入れたクルマを指します。メーカーのWebサイトなどでは「サポカー」という通称が使われています。

ASVに搭載される安全装置には、以下のようなものがあります。

  • 衝突被害軽減ブレーキ(AEB)
  • ペダル踏み間違い時加速抑制装置
  • 車線逸脱警報装置(レーンキープアシスト)
  • 先進ライト(自動でのハイ/ロービーム切り替え)

つまり、AEBは「事故予防や被害軽減のための安全装備の一つ」で、ASVは「AEBなどの安全装備を搭載したクルマ」という関係です。

ASV割引について

ASV割引とは、AEBを搭載したクルマに対する保険料の割引です。多くの損害保険会社がこの割引を採用していますが、その適用条件は限られています。一般的に設定されている条件や割引率は以下の通りです。

対象 自家用自動車(普通・小型・軽)
条件 1. 自動ブレーキ(AEB)を装着している
2. クルマの型式発売年月(※1)が「保険適用開始日の3年前の年4月以降」
割引率 9%(ASV割引適用外の補償項目もあるので、純粋に9%安くなる訳ではない)

※1 型式発売年月とはその「型式」の車両が一般的に販売開始となった年月のこと。「型式」は車検証に記載。

【例】保険の契約開始が2022年3月の場合

保険の対象となるクルマが「自動ブレーキを装着」しており、その型式の車両が発売されたのが2019年4月以降であれば、ASV割引の対象になることが多い

自分のクルマがAEB搭載車か確認する方法

自身のクルマのAEB搭載状況を確認する最も確かな方法は、販売店に確認することです。

これからクルマの購入を検討している方は、メーカーのWebサイトを確認する方法もあります。最近は多くのメーカーが自社のサポカー一覧を公開しています。

なお、AEBの搭載状況の確認では以下の点に気をつけてください。

  • 車種だけではAEBの有無を特定できない(オプション装備の場合は特に注意)
  • 車検証にAEBの有無や名称は記載されていない

各メーカーごとのAEBの名称

AEBはメーカーごとに固有の名称があります。カタログなどを見る際は、以下の表を参考にしてください。

メーカー AEBの名称
トヨタ プリクラッシュセーフティ
衝突回避支援システム
レクサス プリクラッシュセーフティ
ホンダ 衝突軽減ブレーキ
ニッサン インテリジェントエマージェンシーブレーキ
マツダ スマート・ブレーキ・サポート
スマート・ブレーキ・シティ・サポート
アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート
スバル プリクラッシュブレーキ
三菱 低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム
衝突被害軽減ブレーキシステム
ダイハツ 衝突回避支援ブレーキ機能
スズキ レーダーブレーキサポート
デュアルセンサーブレーキサポート
デュアルカメラブレーキサポート
後退時ブレーキサポート

Q. AEBは後付けできるの?

残念がら、AEBは後付けできません。

しかし、ペダルの踏み間違いを防止する「誤発進等抑制装置」は後付けが可能です。詳しくは以下のページをご覧ください。

クルマ選びには安全装備の充実度も大切

予期せぬところで起きるのが事故で、だからこそクルマ選びでは安全装備をチェックすることが大切です。新車ならばASV割引の対象車を選ぶのも良いでしょう。

ガリバーではメーカー横断で安全性能を評価した「安全な車ランキング」を公表しています。クルマ選びの参考にしてください。

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noricoでは、安全装備や違反運転での罰則などについて解説しています。いざとなった時に対応しやすいよう、ぜひ以下の記事もお読みください。

Supervised by norico編集長 村田創

norico編集長_村田創

中古車のガリバーに勤務して20年以上のベテランが車の知識をわかりやすく解説します。車のことは、多くのメーカーを横断して取り扱うガリバーにぜひ聞いてください。「車ってたのしい!」を感じてほしいと思っています!