この記事の目次 CONTENTS
エンジンオイルの役割
エンジンオイルの劣化によるリスク
エンジンオイル交換時期の目安
エンジンオイルを交換する方法と費用
まとめ

ライター紹介

現役整備士車専門Webライター

太田 りく 氏

所有資格は整備士3級。得意な記事は車の構造やメンテナンス関連。趣味はドライブ。車が好きだったため、車とは関係のない職場から整備工場へ転職。現在は働きながら2級を目指して奮闘中。現場でのリアルな情報を読者の方にお伝えできるよう心がけていきます。

エンジンオイルが劣化するとリスクが増えるので、交換目安の時期を守ることが大切です。
オイル交換を自分で行うのは難易度が高く、費用も抑えられないので、業者に依頼すること良いでしょう。
今回はエンジンオイルの交換時期と、各業者の特徴と交換費用を解説します。

エンジンオイルの役割

エンジンオイル

エンジンオイルには、大きく分けて5つの役割があります。

1.潤滑作用

クルマのエンジン内部にある金属同士の摩擦を軽減します。
エンジン内部の金属同士が直接触れる部分を滑らかに動かすために、オイルが必要です。
オイル交換を怠ると、オイルの滑らかさが減り、金属部の摩擦や焼き付けの原因になりかねません。

2.密閉作用

エンジンのピストン運動の気密性を保ちます。
密閉作用によって爆発や圧縮ガスの吹き抜けを防止し、効率のよい燃焼を行うことができます。

3.冷却作用

燃料の燃焼や金属の摩擦などで生じた熱を、循環しながら冷却しています。
エンジン内部は、熱を持ちすぎるとパーツの破損に繋がるため、オイルで熱を冷ます必要があります。

4.洗浄作用

エンジン内部で燃料を燃焼する際、スラッジという汚れがどんどん蓄積されます。
エンジンオイルは汚れを取り除きながら循環します。
オイル交換を怠ると、どんどん汚れが蓄積します。

5.防錆作用

エンジン内部のサビを防ぐ効果もあります。
運転中はエンジン内部が高温になるので、温度差によってエンジンに水分がたまりやすくなっています。
オイルで金属をコーティングすることで、サビを防ぎます。

他にも、消泡作用や応力分散作用などの役割があります。

エンジンオイルの劣化によるリスク

エンジンオイルは、エンジン内を循環することで少しずつ劣化し、性能が引き出せなくなっていきます。
オイルが劣化すると、以下のようなリスクが発生します。

  •  
  • ピストン運動がスムーズに行えなくなり、ノッキングなどのトラブルが発生
  • 再循環した鉄粉がエンジン内部を削り、パーツの寿命が縮まる

汚れたエンジン内部を洗浄するのは簡単なことではありません。
汚れすぎたオイルはスラッジと呼ばれる粘着物になるため簡単には流れなくなります。
エンジンを分解し、オーバーホールする必要があるため、費用もかさみます。

エンジンオイルには鉄粉も含まれています(エンジン内部で金属同士がぶつかるため)。
通常、鉄粉はオイルフィルターでろ過されますが、オイルフィルターが汚れすぎているとろ過しきれず、鉄粉も再循環してしまいます。
再循環した鉄粉はピストンやシリンダーなど、エンジン内部のパーツを削りエンジンの寿命を大幅に減らしてしまうので注意しましょう。

リスクを未然に防ぐためにも、定期的にエンジンオイルの交換を行うことが大切です。

エンジンオイル交換時期の目安

エンジンオイルの交換時期は、クルマの使い方によって変わります。
走行距離や、前回の交換からの経過日数を目安に交換しましょう。

車種 走行距離 交換時期
ガソリン車 5000km~7500km 6か月に1回
ターボ車 3000km~5000km 3か月~6か月に1回
ディーゼル車 3000km~5000km 3か月~6か月に1回

ガソリン車のエンジンオイル交換時期は、走行距離が5000㎞、もしくは半年に1回交換が一般的です。
先に条件を満たしたほうのタイミングで交換しましょう。

ターボ車はガソリン車よりも早めに交換することが推奨されています。
ターボ車は高回転で熱を持ちやすいことに加え、ホースが細いのでスラッジが溜まると目詰まりしやすいからです。

ディーゼル車が燃料とする軽油には、硫黄成分が多く含まれています。
ススなど汚れが溜まりやすいため、ガソリン車よりも早めの交換が推奨されています。

乗車頻度が低くても、定期的にオイル交換すべき

クルマにあまり乗らない場合でも、エンジンオイルの交換目安時期は守ることをおすすめします。
オイルの汚れが少なく、あまり循環していない場青でも、エンジンオイルは劣化するのです。

オイルを交換してから時間が経過すると、オイルが酸素と化合し、酸化したり、エンジン内の水を含み乳化したりします。
乗車頻度の低いクルマのオイルフィラーキャップを開けると、白いドロドロした牛乳のような物質が付着していることがあります。
この物質が、乳化したエンジンオイルです。
「クルマに乗らない=クルマの状態がよい」というわけではないのです。

特にシビアコンディションの方はマメに交換しておくことを推奨します。

エンジンオイルを交換する方法と費用

エンジンオイル交換はディーラーやカーショップなどに頼むことができます。
使えるエンジンオイルはクルマによって異なります。
自分のクルマのオイル粘度を調べるには、クルマの取り扱い説明書を確認しましょう。

各業者のエンジンオイル交換費用とメリット・デメリットを比較しました。

 

ディーラー

ディーラーでオイル交換を行う場合、約6000円~1万円ほどかかります。
オイル代が1リットルあたり約1300円、工賃が2000円ほどです。
軽自動車に必要なエンジンオイルは約3リットル≒4000円なので、工賃と合わせると約6,000円です。

【メリット】
ディーラーでエンジンオイルを交換する場合は、純正オイルや純正部品を使用するため、安心安全性はかなり高いです。

購入時からの担当営業がいるのもメリットです。
クルマの状態をしっかり管理しているため、車両状態を把握しています。
オイル交換で入庫した場合でも、一緒に交換した方がよいものなどを提案してくれます。

【デメリット】
エンジンオイルやオイルフィルターなど、純正品や推奨品を使うため価格は高めです。

基本的に予約制なので、待ち時間が長くなることもあります。

民間整備工場

民間整備工場は、個人経営の地域密着型工場が多く、地域によって価格はバラバラです。
エンジンオイルの値段帯も幅広いのですが、1リットルあたり1000円ほどです。
なかにはもっと安いオイルを使用している店もあり、オイルの交換工賃をもらっていない工場も多くあるのです。
軽自動車であれば3リットル分のオイル代≒3000円のみで交換できることもあります。

【メリット】
民間整備工場はお客さんとの距離がかなり近く、より親身に車両管理について考えてくれます。
そのため、ついでに空気圧やウォッシャー液などの確認をしてくれるなど、手厚いサービスを受けられる可能性があります。

【デメリット】
初めての場合、紹介などがないと行きにくいかもしれません。
一見さんをお断りしている店舗も多いので、「作業してもらえるか」「値段はいくらなのか」の確認を事前にしておきましょう。

店によって価格差があるので、相見積もりをとるなどの対策をするといいかもしれません。

整備工場によって対応が全く異なります。
仲良くなれば親身になって話を聞いてくれる可能性もありますが、その関係になるまでに時間がかかるというデメリットがあります。
しっかりした対応を望むのであれば、ディーラーがおすすめです。

ガソリンスタンド

ガソリンスタンドも使用しているオイルによって値段は違いますが、軽自動車であれば3リットル≒3000円~5000円ほどで交換できます。
ガソリンスタンド独自のオイルを販売している店舗もあります。
メーカー独自のオイルを使えば、比較的安く交換してくれるでしょう。
工賃に関しては500円ほどで行っているので、ディーラーよりも安く抑えられます。

【メリット】
ガソリンスタンドは気軽に行きやすく、燃料を給油したついでにオイル交換もお願いできます。
大手のスタンドではネット予約もできるので、時間を効率よく使えます。

【デメリット】
入店しやすく、気軽に店員さんと話ができる反面、バッテリーやワイパーゴムなどの交換も勧められる可能性があり、煩わしく思う人もいるかもしれません。

スタンドによっては、アルバイトがオイル交換をすることもあります。
整備士免許を持っていない人も多く、クルマに関してあまり詳しくない場合もあるでしょう。
もし勧められた内容に関して不安があれば、ディーラーなど信用できる店舗で確認しましょう。

カー用品店

カー用品店では、販売しているエンジンオイルを購入してから交換します。

購入するエンジンオイルの種類によって値段は変わります。
通常1000円ほどのエンジンオイルが多いので、軽自動車であれば3リットル≒約3000円で交換してもらえるでしょう。
工賃は、ガソリンスタンドと同じ約500円です。

【メリット】
カー用品店の会員になることで、工賃が無料になったりポイントを貯まったりするサービスを受けられることがあります。
オイルの交換中もお店の中で商品を見たり、必要な物があれば購入も可能なので退屈な時間が少ないのもメリットの一つです。

取り揃えているエンジンオイルの種類が多く、自分の好きなオイルを使うことができます。
乗り方やグレードなどで選ぶこともでき、クルマに合ったエンジンオイルを選択できます。
また、前もってネット予約もできるお店も多いため、待たずに気軽にオイル交換ができます。

【デメリット】
急に行くと待ったり、時間を変えて来てほしいと言われたりする可能性が高いので注意が必要です。
オイル交換のついでに点検などを行ってもらうのは難しいでしょう。

大手のカー用品店はスタッフの人数が多いので、親密な関係性を築くことはあまり望めません。
クルマの履歴などを個別で残さないことがほとんどなので、自分で判断して作業をお願いしなければなりません。

自分で行う場合

自分で行う場合、工賃は無料です。
材料費は、どんなエンジンオイルを使うかによって変わります。
安いオイルなら1リットル数百円のものもありますし、高いと1リットル数千円する場合もあるでしょう。
相場は、4リットル缶で4000円前後です。
廃油の処理袋(500円ほど)も併せて購入する必要があります。


【メリット】
好きなオイルを入れることができ、クルマの足回りなどを自分で確認することもできます。
自分でオイル管理をすることで、交換時期などを意識することも多くなり、クルマの状態を把握しやすくなるでしょう。

作業工賃が発生しないこともメリットのひとつです。
作業をすることが好きな人や、クルマに興味がある人は自分の愛車を楽しく点検できるきっかけにもなります。

【デメリット】
自分で行う場合、手間が多いという点がデメリットです。
交換に必要な工具を揃え、作業をするのに安全な場所を確保する必要があります。
また廃油の処理や、ジャッキアップしてクルマの下に潜り込んでの作業は簡単なものではありません。
少しでも不安な場合は業者に依頼することをおすすめします。

自分でエンジンオイルを交換するには4種類の費用が発生します。

  • オイル代
  • 廃油処理代
  • 工具代
  • ウエスなどの消耗品代

工具は1度購入すれば何度でも使えますが、オイル代や廃油処理代は毎回費用が発生します。
自分で作業をしても費用をそこまで減らせず、交換の難易度も高いので、各業者に依頼するのが無難でしょう。

エンジンオイル以外に定期的にメンテナンスが必要なものがあります。車検前といった機会にメンテナンスが必要な項目をまとめているので併せてこちらもご確認ください。

まとめ

エンジンオイルはクルマの血液とも言われ、エンジン内部の潤滑、洗浄、冷却作用など様々な役割を果たします。
オイルが劣化すると多くのリスクを抱えることになるので、交換目安の時期をしっかり守ることが大切です。

オイル交換はディーラー、カー用品店、ガソリンスタンド、民間整備工場などに依頼することができます。
店舗によって特徴があるので、自分に合ったお店を選びましょう。