
ホンダのBEV(バッテリー電気自動車)であるSuper-ONE(スーパーワン)が売れている。2026年5月の発売から、わずか2週間程度で約1.1万台を受注したという、爆発的なヒットとなっている。
スーパーワン(JG6系)は、すでに発売されている軽BEVのN-ONE e:をベースに、スポーティなブリスターフェンダーを装着したモデルだ。片側50mm、左右合わせて100mmもN-ONE e:よりワイドになっている。また、専用エアロパーツによってボディサイズを拡大している。そのため、軽自動車ではなく普通車となった。
スーパーワンのようなスポーティなカスタマイズ車は人気が高い。売れるのも理解できる。しかし、短期間で1.1万台という受注は、販売が低迷しがちなBEVとしては異例の数字だ。
なぜ、スーパーワンはこれほど爆発的なヒットモデルになったのか?その理由は、補助金にある。普通車になったことで、補助金が軽自動車のN-ONE e:より大幅に増額された。その結果、実質的な購入価格は、普通車のスーパーワンが軽自動車のN-ONE e:より約53万円も安価になったのだ。
そこで今回は、大ヒットモデルとなったスーパーワンを試乗し、その魅力を解説する。
- シティターボⅡを彷彿とさせるスーパーワン
- ノスタルジーさがあるスーパーワンのデザイン
- スーパーワンの内装は専用スポーツシートが魅力的
- スーパーワンとベース車N-ONE e:のスペックを比較
- スーパーワンは軽特有の自主規制から解放されたパワートレイン
- アクティブサウンドコントロールの是非を問う
- 電動カート感覚で曲がるハンドリング
- まさかのアルミ鍛造フロントロアアームを採用
- スーパーワンは硬めな乗り心地
- スーパーワンの大ヒットの要因は「補助金」?
- 予想の難しいスーパーワンのリセールバリュー
- ホンダ スーパーワンの新車価格
- ホンダ スーパーワンの航続距離、電費などスペック
シティターボⅡを彷彿とさせるスーパーワン
スーパーワンは、手に入れやすい価格の個性的なスポーツBEVであり、本来なら若年層向けのモデルともいえる。
ところがホンダは、1982年にデビューし、一世を風靡したシティターボⅡ(通称:ブルドッグ)の再来として、スーパーワンをアピールしている。中高年世代には懐かしく感じられる存在だが、1982年頃の話をアピールしても、若年層にはメッセージが届きにくい。なぜホンダは40年以上も昔のモデルを持ち出すのか。
もしかすると、最近のホンダは中高年世代をターゲットにしているのではないか、と考えた。
2025年に24年振りに復活したプレリュードも、高価格帯ということもあり、中高年世代を意識したモデルであることがうかがえる。このプレリュードが大ヒットしていた時期も1980年代だ。
スーパーワンとプレリュードの両車がイメージさせるのは、ホンダがF1で「最強時代」を築き、ホンダ車が数多く売れていた1980年代である。ホンダブランドが強かった時代を想起させることで、再びホンダ車を選んでもらう狙いがあるのではないかと考えられる。
もちろん、まったく根拠がないわけでもない。ホンダの調査によると、「チャレンジング精神のあるメーカーイメージ」は、2020年以前はホンダが圧倒的なナンバー1だった。しかし、2020年以降は徐々に右肩下がりとなっている。
さらに、メーカー別・年代別の好意度を見ると、年齢層が下がるにつれて、ホンダへの好意度も下がっていく傾向があるという。
そう考えると、好意度が低い若年層を狙うよりも、もともと好意度が高い中高年世代を狙う方が、販売につなげやすいということなのかもしれない。まさに、ノスタルジーを活用した販売戦略ともいえる。
そのうえ、補助金を使えば約209万円という価格でスーパーワンが手に入る。地方で駐車スペースに余裕がある人なら、普段使いのクルマとは別に、もう1台増やしてもいいと考えて購入した人も多いだろう。
ノスタルジーさがあるスーパーワンのデザイン
スーパーワンは、まさに中高年世代に刺さる外観デザインとなっている。ホンダがアピールする通り、シティターボⅡを彷彿とさせるデザインだ。
ハイト系のシルエットにブリスターフェンダーを組み合わせており、相性もよい。ハイト系は背が高く、幅が狭いため、やや安定感に欠けるシルエットになりがちだ。しかし、スーパーワンでは、左右合計10cmもブリスターフェンダーによってワイド化している。これにより、どっしりとした安定感が増した。
さらに、丸型の少しカワイイ系のヘッドライトと、ワイルドなブリスターフェンダーを組み合わせることで、カッコかわいいスタイルにまとめられている。スポーティで好感度の高いデザインに仕上がっている。
また、デザインとは直接関係ないが、スーパーワンは最新のBEVだ。ノスタルジックなデザインに、未来を感じさせるBEVを組み合わせたことで、独特のワクワク感が生まれている。ただの懐古主義的なモデルではないことも、売れている理由のひとつといえる。
スーパーワンの内装は専用スポーツシートが魅力的
スーパーワンのインテリアは、ベース車であるN-ONE e:と基本的に同じだ。しかし、色味や専用装備などで違いをアピールしている。
まず、インパネは水平基調のシンプルなデザインで、基本的な構成は共通している。ただし、スーパーワンではブラックをベースにブルーのアクセントを加えており、クールな印象に仕上げられている。
装備面では、Google搭載の9インチディスプレイを標準装備する。液晶メーターは共通だが、バッテリー温度計、瞬間電費計、出力計のトリプルメーターを表示できる。さらに、SPORTモードやBOOSTモードでは、瞬間電費計が疑似タコメーターに変化する。かなり凝った表示だ。
一方で、その他の部分は素材感がややチープに感じられるのが残念だ。
最も気に入ったのは、スポーツドライビングの必須アイテムともいえる専用スポーツシートだ。軽BEVがベースなので、あまり期待していなかったが、肌触りはしっとりとしていて気持ちがよい。グレー、ブルー、ホワイトという色の組み合わせも、高級シートとはいかないまでも、なかなかオシャレだ。
専用スポーツシートながら、やや大きめのサイズで、サイドサポートもある。そのため、通常時はリラックスして運転できるのがよい。もちろん、スポーツドライビング時には、しっかりと体を支えてくれる。
スポーツ走行から普段使いまで対応できる、よくできた万能なシートだった。
スーパーワンとベース車N-ONE e:のスペックを比較
| 車名(グレード) | N-ONE e: (e: Lグレード) | スーパーワン |
|---|---|---|
| 車両区分 | 軽自動車 | 普通車(小型乗用車) |
| 新車価格 (税込) | 2,699,400円 | 3,390,200円 |
| 全長 | 3,395 mm | 3,580 mm (+185mm) |
| 全幅 | 1,475 mm | 1,575 mm (+100mm) |
| 全高 | 1,545 mm | 1,615 mm (+70mm) |
| トレッド (前 / 後) | 1,305 mm / 1,305 mm | 1,345 mm (+40mm)/ 1,345 mm (+40mm) |
| ホイールベース | 2,520 mm | 2,520 mm (±0) |
| 車両重量 | 1,030 kg | 1,090 kg (+60kg) |
| タイヤサイズ | 155/65R14 | 185/55R15 |
| 最高出力 | 47 kW<64 PS> | 70 kW (+23kw)<95 PS(+31㎰)> ※ブーストモード時 |
| 最大トルク | 160 N・m | 162 N・m(+2N・m) |
| 航続距離 (WLTC) | 295 km | 274 km(−21km) |
| オーディオ | 標準スピーカー | BOSEプレミアムサウンドシステム |
| 走行演出機能 | なし | 仮想7段シフト / エンジンサウンド再現 |
※スーパーワン()内数値:N-ONE e:に対しての増減
スーパーワンは軽特有の自主規制から解放されたパワートレイン
軽自動車には、パワートレインの最高出力を64psとする自主規制が長年続いている。そのため、軽BEVであるN-ONE e:は、潜在能力が高いにもかかわらず、あえて最高出力を64psに抑えている。
しかし、スーパーワンは普通車扱いだ。そのため、自主規制の制約を受けない。最高出力は64psから一気に31psアップし、ブーストモード時には95psを発揮する。
31psの出力アップにより、スーパーワンはN-ONE e:と比べて、高速域でもより伸びのある加速が可能となった。低速から高速域までスムースで豪快な加速は、まさにBEVならではだ。とても気持ちがよい。
また、ブーストモードを使用していないときは、とてもスムースで扱いやすい。BEVは、発進時から強大なトルクを発揮できるのが特徴だ。そのため、一部のBEVでは、BEVらしさを強調するために、瞬時にトルクを立ち上げて力強さをアピールするモーター制御を採用している。こうした制御も、確かに楽しい。
しかし、スーパーワンはあえてこうした制御を採用せず、通常走行時には穏やかに加速する設定としている。ガソリン車から違和感なく乗り換えやすいというメリットもある。
また、ラフなアクセルワークでは、ギクシャクして運転しにくいと感じることもある。同乗者も前後に大きく揺さぶられるため、不快に感じる可能性がある。こうした点を考えると、穏やかな制御を選択したのは正解だ。
もちろん、アクセルをグッと踏み込めば、強大なトルクが一気に立ち上がり、豪快な加速を楽しめる。通常時の扱いやすさと、BEVらしい力強さを両立している。
アクティブサウンドコントロールの是非を問う
ブーストモードを使用すると、車内にはブーンという疑似エンジン音が響く。さらに、トランスミッションを持たないBEVでありながら、減速時には疑似ブリッピング音も鳴る。
このサウンドは、標準装備されているボーズサウンドシステムから再生されるため、なかなか質が高い。アクティブサウンドコントロールは、運転していて楽しい演出として評価できる。
ただ、個人的には、このようなアクティブサウンドシステムが本当に必要なのか、疑問に感じる。そもそもBEVはエンジンを搭載していないため、高い静粛性が魅力のひとつだ。それなのに、なぜあえて音を出す必要があるのだろうか。
「運転している感覚」が欲しいという意図も、理解できないわけではない。しかし、それは長年ガソリン車に乗ることで身に付いた感覚でもある。ガソリン車とはまったく異なるパワートレインを持つスーパーワンに、なぜあえてガソリン車の感覚を再現する必要があるのだろうか。スーパーワンはBEVであり、ガソリン車ではないのだ。
しかも、スーパーワンは高Gがかかるような優れた旋回性能を楽しめる。疑似エンジン音がなくても、走る楽しさを十分に感じられるクルマだからこそ、なおさらそう感じる。
BEVのレースであるフォーミュラEのマシンが、F1の疑似音を出して走っていたら、フォーミュラEとしてのアイデンティティを失ってしまう。それと同じようなものではないだろうか。
電動カート感覚で曲がるハンドリング
スーパーワンが得意とする走行シーンは、タイトターンが連続するような場面だ。とにかくよく曲がる。車体の傾きもグッと抑えられており、まるで電動カートのように、ステアリング操作に対してダイレクトに反応する。
しかも、大きく重い駆動用リチウムイオンバッテリーを床下に搭載しているため、重心高がかなり低い。ペタッと路面に張り付いたような安定感がある。
「こりゃ、たまらん」と、思わず笑顔になるハンドリングだ。ガンガン走っているときだけでなく、ゆっくり走っていても楽しいのが特徴である。
まさかのアルミ鍛造フロントロアアームを採用
卓越した走りを支えているのが、足回りの設計だ。ブリスターフェンダーによるワイドトレッド化に合わせ、サスペンションセッティングを大幅に変更。多くの新開発パーツが投入されている。
フロントサスペンションには、なんと専用設計のアルミ鍛造ロアアームを採用している。軽BEVをベースとしたモデルでありながら、アルミ鍛造ロアアームを採用しているのだ。思わず「凄い!」とうなってしまうほどである。
アルミ鍛造パーツといえば、本格的なスポーツカーにも使われる高コストな素材だ。こうしたパーツを採用していることからも、ホンダがハンドリングにこだわっていることがよく分かる。その結果、足回りの軽量化と路面追従性の向上を実現している。
そのほか、ハブ剛性の向上や左右等剛性ドライブシャフトによるトルクステアの抑制、電動パワーステアリングの最適化、ブレーキの強化も行われている。185/55R15という大径タイヤのグリップ力を十分に生かせる足回りに仕上げられている。
リヤサスペンションも、アクスルビームの板厚を高め、ダンパー減衰力やスプリングレートを最適化している。さらに、ブッシュゴムの高硬度化なども実施。リヤタイヤのスタビリティを向上させ、高い旋回性能を実現している。
スーパーワンは硬めな乗り心地
キレのあるハンドリングを誇るスーパーワンの乗り心地は、街中ではかなり硬めに感じる。路面状態がよければスーッと滑らかに走るが、凹凸が大きい路面では、とくにリヤサスペンションがピョコピョコと跳ねる。
ただ、車体の揺れは一発で収まるため、それほど不快には感じない。本来なら、こうしたリヤサスペンションの動きは気になるところだが、スーパーワンでは、それも個性のひとつとして受け入れられる。
ピョコンと跳ねるたびに、少し気になるものの、これも爽快なハンドリングを実現するためのサスペンションセッティングと考えれば納得できる。快適性よりも走りの楽しさを重視した、スーパーワンらしい味付けといえるだろう。
スーパーワンの大ヒットの要因は「補助金」?
スーパーワンは、大幅なカスタマイズが施されていることから、ベース車のN-ONE e: e:Lグレードより約20万円高価だ。これだけ大幅にカスタマイズされていることを考えれば、スーパーワンはかなり買い得感がある。売れているのも納得できる。
こうした状況に拍車をかけたのが、国のCEV補助金だ。スーパーワンには、なんと130万円もの補助金が支給されている。ベース車のN-ONE e:は58万円となっているため、補助金を考慮した実質価格が逆転。高価なスーパーワンの方が、N-ONE e:より約53万円も安く購入できるようになったのだ。
わずかながら普通車の税金は軽自動車より高くなるとはいえ、約53万円もの差があれば、N-ONE e:ではなくスーパーワンを選択するのも当然だろう。
しかも、スーパーワンの実質購入価格は約209万円。軽オープンスポーツのダイハツ コペンも約200万円からとなっている。BEVであることを考慮すれば、スーパーワンは非常に買い得感の高いスポーツモデルといえる。
これだけ価格面でのメリットがあれば、若年層も購入しやすい。さらに、中高年世代であれば、趣味車として増車するという選択肢も考えられる。こうした条件が重なったことが、スーパーワンの大ヒットにつながった要因のひとつといえるだろう。
国のCEV補助金、適用時の実質価格比較
| 項目 | スーパーワン(普通車) | N-ONE e: 「e:L」(軽自動車) | |
|---|---|---|---|
| 車両価格 | 3,390,200円 | 3,198,800円 | |
| 国のCEV補助金 | −1,300,000円 | −580,000円 | |
| 補助金適用後の実質価格 | 2,090,200円 | 2,618,800円 | |
| 実質的な差額 | ― | +528,600円(N-ONE e:の方が高価) | |
予想の難しいスーパーワンのリセールバリュー
スーパーワンのリセールバリューを予想するうえで、とても重要なのが、中古車市場での人気だ。リセールバリューは、中古車の需要と供給によって決まる。中古車需要は、中古車市場での人気と考えてもよい。
中古車の人気が高く、需要が供給を上回る状況ではリセールバリューが上がる。一方、中古車の人気が低く、供給が需要を上回るとリセールバリューは下がる。
基本的に、一部の特殊なクルマを除けば、新車人気がそのまま中古車人気につながるケースが多い。そのため、スーパーワンのリセールバリューは高くなると予想できる。ただし、この人気が一過性のものなのか、長く続くのかは予想が難しい。補助金の金額によって、販売動向が大きく変化する可能性があるからだ。
さらに、BEVは総じてリセールバリューが低い傾向にある。補助金が支給されるため、新車価格から補助金を差し引いた金額が実質的な購入価格として見られるからだ。この点を考慮すると、スーパーワンのリセールバリューが低くなる可能性もある。
一方、現在のスーパーワンは人気が高く、これから購入する場合、納車まで1年以上かかるともいわれている。そうなると、すぐに乗りたいというユーザーが現れ、新車価格より高値でも中古車を購入するケースが出てくる可能性がある。中古車相場が上昇し、新車価格を上回る中古車が多く流通すれば、リセールバリューも大きく上昇する。
このように、スーパーワンのリセールバリューは、現時点ではどちらに転ぶか不透明な状況だ。そのため、リセールバリューを重視した購入は、慎重に判断した方がよいだろう。
ただ、現状の人気は衰えていない。そのため、しばらくの間は補助金を差し引いた実質購入価格を上回る可能性が高いと予想する。リセールバリューは、やや高めになる可能性がありそうだ。
ホンダ スーパーワンの新車価格
- Super-ONE:3,390,200円
- CEV補助金:1,300,000円(2026年8月現在)
ホンダ スーパーワンの航続距離、電費などスペック
| 代表グレード | Super-ONE | |
|---|---|---|
| 全長×全幅×全高 | 3,580×1,575×1,615mm | |
| ホイールベース | 2,520mm | |
| 最低地上高 | 140mm | |
| 車両重量 | 1,090kg | |
| 乗車定員 | 4名 | |
| 荷室容量 | 155L | |
| モーター型式 | MCF7 | |
| モーター最高出力 | 70kW(95ps) | |
| モーター最大トルク | 162N・m(16.5kgf・m) | |
| 一充電走行距離(WLTCモード) | 274km | |
| バッテリー種類 | リチウムイオン | |
| バッテリー総電力量 | 29.6kWh | |
| 電費(一充電走行距離÷バッテリー総電力量) | 約9.3km/kWh | |
| 駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
| サスペンション形式(前/後) | マクファーソン式/車軸式 | |
| タイヤサイズ(前後) | 235/45R19 | |
| 最小回転半径 | 5.2m | |
