
オールシーズンタイヤの賛否はプロの整備士同士でもSNSで議論され、ユーザーの間でもここ数年で認知度が大幅に向上しています。
大切なことは、オールシーズンタイヤをチョイスする場合、その特性や性能をしっかりと理解したうえで使うことです。
そこで現役の整備士がオールシーズンタイヤの特徴やデメリット、タイヤの選び方、どういった人におすすめなのかを分かりやすく解説します。
- オールシーズンタイヤとは
- オールシーズンタイヤはやめた方がいい?
- オールシーズンタイヤがおすすめの人はどんな人?
- オールシーズンタイヤの寿命は?交換時期の目安
- オールシーズンタイヤの選び方
- おすすめのオールシーズンタイヤ2選
- 整備士のまとめ
オールシーズンタイヤとは
オールシーズンタイヤは、その名のとおり1年を通して使用可能なタイヤのことで、ノーマルタイヤとスタッドレスタイヤの両方の性能を兼ね備えたタイヤです。
ただし、双方の性能をそのまま維持できているわけではないので注意が必要です。
ノーマルタイヤとしての性能はノーマルタイヤの方が上
ノーマルタイヤも製品によって大きな性能差がありますが、基本的なノーマルタイヤとしてのグリップ力や雨天時の排水性は、オールシーズンタイヤよりノーマルタイヤの方が優れています。
スタッドレスタイヤとしての性能を兼ね備えるためには、どうしてもこれらの要素をある程度犠牲にする必要があるためです。
冬用タイヤとしての性能はスタッドレスタイヤの方が上
オールシーズンタイヤはノーマルタイヤとしての性能も維持しつつなので、特に冬用タイヤとしての性能は劣ります。
スタッドレスタイヤは凍結路での使用も想定したタイヤですが、オールシーズンタイヤだと凍結路での制動距離が大きく伸びてしまうことがタイヤメーカーが公表しているテスト結果からも分かります。
タイヤメーカーも、オールシーズンタイヤでの過酷な積雪路や凍結路の走行は控えるようにアナウンスしています。
スノーフレークマークの有無に注意が必要(冬用タイヤ規制時)
ASTM(米国試験材料協会)の規格を満たし、積雪時でも性能を発揮できる冬用タイヤとして認められたオールシーズンタイヤには、サイドウォールに「スノーフレークマーク」が刻印されています。
冬期に冬用タイヤ規制のかかった道路を走行する場合には、スノーフレークマークの刻印されたタイヤを装着していなければいけません。
オールシーズンタイヤには、このスノーフレークマークの刻印があるものと無いものがあります。
マークの無いものは積雪路走行可能を謳っていても、冬用タイヤ規制された道路は走行することができないので注意が必要です。
オールシーズンタイヤはやめた方がいい?
ここまでの解説だと、オールシーズンタイヤはやめた方がいいのではないかと考える方も多いでしょう。
オールシーズンタイヤのデメリットも解説しつつ、どういった使用環境の人におすすめなのかもお伝えします。
冬用タイヤとしての性能は不十分
上記で解説したように、ノーマルタイヤとして必要な性能は当然、ノーマルタイヤに軍配が上がります。
冬用タイヤとしての性能も同様ですが、その性能差はより顕著です。
雪の降りはじめや薄っすら積もる程度では問題ありませんが、アイスバーンでの制動距離はむしろスタッドレスタイヤよりノーマルタイヤに近いという検証結果もあります。
参考:[Q]「オールシーズンタイヤ」って、どんなタイヤですか?(JAF)
オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤの代わりにはなり得ません。
この点は勘違いされやすい大きなデメリットです。
冬用タイヤ、ノーマルタイヤとどちらの性能も必要以上に期待しないようにしましょう。
しかしながら、年々オールシーズンタイヤも改良・進化しており、最新のオールシーズンタイヤの中には、こうしたデメリットが大幅に改善されたモデルも出てきています。
オールシーズンタイヤとしての寿命は短い
冬用タイヤには「プラットホーム」と呼ばれる、冬用タイヤとしての使用限度溝残量を示す目印があります。おおむね新品タイヤの半分程度の残量になったとき、プラットホームが出てきます。
一方で、タイヤには「スリップサイン」と呼ばれるタイヤとしての使用限度を示す目印もあり、これは溝残量「1.6mm」の位置にあり、1.6mm以下になると車検にも通らなくなります。
オールシーズンタイヤには、この両方の目印がついているわけですが、冬用タイヤとしての使用限度目安となるプラットホームが出てしまうと、オールシーズンタイヤでも走行可能な冬の路面において安全走行が難しくなります。
オールシーズンタイヤは1年を通して履くことが想定されており、またノーマルタイヤよりも柔らかいコンパウンドが使用されていることもあり、摩耗が早い傾向にあります。
これらのことから1年を通して使用できる代償として、寿命が短い点はデメリットだと言えるでしょう。(※特に冬用タイヤとしては)
オールシーズンタイヤがおすすめの人はどんな人?
ここまでオールシーズンタイヤのデメリットが目立つ内容となっていますが、当然ながらオールシーズンタイヤをおすすめできるケースもあります。
- 年間走行距離が多くない
- 冬に何度か薄っすら雪が降る日がある(降雪がほとんどない)
- 氷点下になることはほとんどない地域
- タイヤを保管する場所の確保が難しい
- 夏⇔冬タイヤの付け替えが面倒
- 万が一の積雪時に備えておきたい
これらの条件に複数当てはまる人であれば、オールシーズンタイヤは十分に検討に値するタイヤと言えるでしょう。
走行距離の多い人はコスパも悪い
先ほども触れたように、年間走行距離の多い人はタイヤの摩耗も早く、肝心の冬の季節には十分な残り溝がないことも考えられ、むしろコスパが悪く安全面でも不安が残ります。
オールシーズンタイヤは積雪の心配がない地域の人におすすめ
オールシーズンタイヤが向いているのは降雪地帯ではなく、むしろ普段はあまり雪の心配がいらない地域に住んでいる人です。
たまに雪がチラついたり、薄っすらと雪化粧になる程度だったり、冬に日帰りの出先での万が一の天候の悪化に備えたい…といった住環境の方におすすめです。
氷点下になりアイスバーンが発生したり、シーズン中に何度も雪が降るような地域においては、スタッドレスタイヤと比較して性能が劣るオールシーズンタイヤでは役不足となるケースが多いです。
タイヤの保管場所がない
お住まいの場所によっては、タイヤの保管場所の確保が難しいケースもあるでしょう。
昨今、タイヤの保管サービスを提供してくれる車屋さんも増えていますが、決して安いお値段ではありません。
スタッドレスタイヤが必須というほどの地域ではなく万が一に備える程度の住環境であれば、シーズンごとにタイヤを付け替える手間もなく、外したタイヤの保管場所を確保する必要もないのでオールシーズンタイヤは魅力的な選択肢です。
オールシーズンタイヤの寿命は?交換時期の目安
オールシーズンタイヤの交換時期は冬用タイヤとしての最低限の性能を見込むのであれ4mm程度、夏用タイヤとして使い切るなら3mm程度の残り溝が目安です。
オールシーズンタイヤは、冬用タイヤとしての使用限度を示す「プラットホーム」という目印がタイヤの溝部分にあります。プラットホームは新品時と比較して残り溝が半分になると突出します。このときの残り溝はおおむね「4mm」ほどとされています。
なお、残り溝が十分にあっても5年程度を目安にタイヤ交換をすることをおすすめします。
タイヤは残り溝だけではなくゴムの柔らかさやヒビ割れの有無などもタイヤとしての性能を維持するためには大切な要素です。特に冬用タイヤとしての性能の維持にはゴムの柔らかさ重要です。使用環境によってタイヤのゴムの劣化スピードは大きく変わってくるので気を付けましょう。
オールシーズンタイヤの選び方
オールシーズンタイヤ選びで重視したい性能は主に「雪上・氷上性能」、「ロングライフ性能」、「排水性能」、「静粛性」の4つがあげられます。
タイヤ選びにおいて各性能が高いことにこしたことはありませんが、ここでは上記4つのタイヤ性能に着目して重視することをおすすめします。
タイヤとしての基本的な運動性能
オールシーズンタイヤを選ぶときの主な動機となる、「万が一の機会に備えたい」という意味では、特に雪上・氷上性能を重視して選ぶことをおすすめします。
また、年間を通して履き続けることからロングライフ性能も意識したタイヤ選びが大切です。
スタッドレスタイヤは従来、ノーマルタイヤと比較して雨の日の排水性能が劣る点がデメリットでもあるので、オールシーズンタイヤを使う上で年間を通して安心安全に使い続けるためにも、排水性能に優れたタイヤがおすすめです。
タイヤとしての基本的な運動性能
一方で、直接的にタイヤの運動性能とは関係がないものの、静粛性もタイヤ選びをするときに大切な要素です。
タイヤによって走行中のロードノイズは大きく異なり、静粛性に劣るタイヤは走行中、常に車内に気になるロードノイズが入ってくるので、気になりだすと煩わしくストレスにもなりかねません。
おすすめのオールシーズンタイヤ2選
オールシーズンタイヤの需要は海外の方が高く、製品ラインナップもミシュランやピレリ、コンチネンタル、グッドイヤーといった海外メーカーの方が充実しています。
ここでは国産メーカーと海外メーカーから1つずつ、おすすめのオールシーズンタイヤをご紹介します。
ダンロップ シンクロウェザー
ダンロップの「シンクロウェザー」はSNS上での実際に使用しているオーナーからの評判が高く、オールシーズンタイヤでは高い性能が見込めない氷上でも、冬用タイヤとしての性能を発揮できるポテンシャルを持った国産ブランドのタイヤです。
従来のオールシーズンタイヤとは一線を画す、次世代オールシーズンタイヤを謳ったシンクロウェザーは、温度や水といった外部環境に応じてゴムの性質が最適に変化する「アクティブトレッド」という新開発技術を採用。
ウェット路面、夏のドライ路面、積雪路や凍結路と1年を通してあらゆる路面で高いグリップ力と安定性を確保してくれます。
SYNCHRO WEATHER(DUNLOP 商品説明ページ)
グッドイヤー ベクター フォーシーズンズ ジェンスリー
グッドイヤーの「ベクター フォーシーズンズ ジェンスリー」は高剛性で、ドライ路面での高いハンドリング性能を実現。
また、一般的には摩耗が進むほど排水性(ウェット性能)が低下しますが、このタイヤは摩耗が進むと溝幅が広くなる構造によってウェット性能の低下を抑制します。
ウェット性能評価ラベリングはほとんどのサイズでもっとも高い評価である「a」です。
乗り心地も静粛性も評価が高く、すべての性能が高次元で実現されており、こだわりを持ったドライバーの方におすすめのタイヤです。
VECTOR 4SEASONS GEN-3(日本グッドイヤー 商品説明ページ)
整備士のまとめ
1つのタイヤメーカーでラインナップされているオールシーズンタイヤが1種類だけというメーカーも多く、まだまだその選択肢は少ないです。
「オールシーズンタイヤさえ履いておけば雪道も安心」…という過信は禁物ですが、徐々にオールシーズンタイヤの認知度と需要が高まっており、年々その性能も進化しています。
ここまで解説してきたようにオールシーズンタイヤの特性や、どういった人が使うのに適しているのか自分自身がしっかり理解していれば、オールシーズンタイヤも魅力のある選択肢のひとつになるでしょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。