トヨタは、ハイブリッドセダンのカムリに新グレードとなるWSを設定し発売を開始した。
カムリWSは、前後のバンパーやインテリア、足回りなどをスポーティ仕様に変更したモデルとなる。

この記事の目次 CONTENTS
北米をメインに開発されたため日本での使い勝手が悪かったカムリ
優れた操縦安定性と低燃費を誇る
地味なデザインから脱却した10代目カムリ
日本で扱いにくくても、販売好調のカムリ
カムリの持つスポーティさをより際立たせたデザイン
パドルシフトやスポーツ仕様サスも装備
カムリの売却は要注意?
トヨタ カムリ価格

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

北米をメインに開発されたため日本での使い勝手が悪かったカムリ

初代トヨタ カムリは、1980年に登場した。現行カムリが10代目なので、歴史あるモデルといえる。しかし、日本では販売台数が少なく、知名度があまり高くない。それは、カムリが北米マーケットを中心に開発されたからだ。北米のニーズが最優先になるため、どうしても日本マーケットのニーズとは合致しない傾向になる。

日本の立体駐車場に入らない

北米向けといくこともあり、ボディは大きい。全長4885×全幅1840×全高1445mm。全幅は1,800を大きく超えているので、都市部に多い立体駐車場に入らないケースが多い。また、最小回転半径は、5.7mと大きく、18インチホイール装着車になると、まさかの5.9mという数値になっているのだ。

アルファード/ヴェルファイアよりも小回りが利かない

最小回転半径5.7m程度で、トヨタの大型ミニバンであるアルファード/ヴェルファイアと同等。18インチホイール装着車の5.9mになると、アルファード/ヴェルファイアより小回りが利かない状態になる。こうしたスペックを見ただけでも、カムリが日本マーケットで扱いにくいことは一目瞭然だ。

優れた操縦安定性と低燃費を誇る

カムリに搭載されたパワーユニットは、最新の2.5Lハイブリッドのみ。燃費性能は、GやWSグレードで28.4㎞/Lと優れた低燃費性能を誇る。この燃費値は、ハイブリットを好む日本マーケットにおいて、かなり力強い武器となる。

地味なデザインから脱却した10代目カムリ

先代カムリのデザインは、少々地味目。しかし、10代目カムリは、かなりユニークで、なかなかスポーティ。しかも、プラットフォーム(車台)は、TNGAにより新しくなり、低重心パッケージになった。リヤサスペンションも、先代カムリのストラット式から、新開発のダブルウィッシュボーン式へグレードアップした。

安定性、乗り心地も飛躍的に向上

ハイブリッドシステムで重要なバッテリーも、先代カムリはトランク付近に設置されていたが、10代目カムリではリヤシート下に設置された。これにより、より低重心化され、前後の重量バランスも向上している。その結果、カムリの操縦安定性や乗り心地は飛躍的に向上している。

日本で扱いにくくても、販売好調のカムリ

ボディサイズが大きかったり、小回りが利かないなど、やや日本での扱いにくいカムリだが、これが売れているのだ。スポーティなデザインや圧倒的な燃費性能、優れた運動性能が評価されているようだ。

販売台数はクラウンに次いで2番手

カムリの販売台数は、2018年1~6月で12,057台。車種別販売台数ランキングでは34位となった。34位というと、それほど大したことないように感じるかもしれない。しかし、中型・大型クラスのセダンとして見ると、クラウンに次ぐ2番目に売れているモデルなのだ。

セダン復権を託されたカムリ

売れているクルマには、何もしないのがトヨタのやり方だが、カムリは1年目ですでに新グレードを追加。これには、トヨタ側の危機感を感じる。セダンマーケットは、元々人気が無い。しかも、カムリは発売から1年が経過。そろそろ新車効果も薄れ、販売台数が落ち始める時期だ。セダン復権を標榜したカムリだけに、1年で息切れ感は出したくないのは当然のこと。
そこで、新グレードWSを投入し話題喚起するのはセオリー通りといえる。とくに、日本マーケットはスポーティグレードの人気が高いことが特徴。このタイミングでのWSの新設定は、まさに外さないマーケティング戦略だろう。

カムリの持つスポーティさをより際立たせたデザイン

カムリに新設定された新グレードWS。カムリがもつ素性の良さを生かしたグレードになった。グレードは名のWSとは、Worldwide&Sportyの略だ。

レーシングカーのようなリヤバンパー

まず、外観デザインも変更されている。前後バンパーデザインは、よりアグレッシブなものに変更。とくに、リヤバンパーは、レーシングカーのようなディフューザー形状のデザインになった。さらに、左側2本出しのマフラーカッターが装備され、ひと目でスポーティモデルであることが分かる。リヤスポイラーも追加された。もちろん、見た目だけではなく、空力性能の向上にも貢献する。こうしたエアロフォルムをまとったことで、カムリがもつワイド&ローなフォルムをより際立たせている。

ホイールも精悍さを演出

ホイールは、切削光輝+ブラック塗装の18インチを用意。タイヤサイズは、235/45R18だ。この18インチホイールは、切削光輝処理とブラック塗装のハイコントラスト仕様。精悍さと洗練されたスピード感のあるデザインになり、足元を引き締めている。

パドルシフトやスポーツ仕様サスも装備

カムリWSには、専用シートが用意されている。WS“レザーパッケージ”には、本革シートが採用されていて、革の質感とヘキサゴンパターンのデザインパーフォレーションにより、スポーティさと上質感をプラスした。

パドルシフトも装備

また、スポーティモデルには必須となるパドルシフトも装備された。Sポジション走行時だけでなく、Dポジションの走行時でも、ステアリングから手を離すことなく指先の操作で俊敏なシフトアップ、シフトダウンを可能とした。走りを楽しむときだけでなく、市街地走行で軽くエンジンブレーキをかけて減速したいときなどにも、日指先ひとつでシフトダウンできるので便利だ。

そして、カムリの低重心さや優れた前後の重量バランスをより生かすために、WS専用チューニングを施したサスペンションを装備。より応答性の高い操舵フィーリングとフラットな走りを追求した。

カムリWS外板色には、WS専用色としてアティチュードブラックマイカ×ダークブルーマイカメタリックを含む3種類のツートーンカラーを新規設定している。
そして、一部改良も施された。オート電動格納式ドアミラー、インテリジェントクリアランスソナーを標準装備し、利便性と安全性を向上。豪華装備として、ナビゲーション・オーディオにJBLプレミアムサウンドシステム(9スピーカー)を新規設定している。

カムリの売却は要注意?

現行カムリのリセールバリューは、まずまずといったところ。ただ、現行カムリに関しては、まだ流通量が少ないため、かなり中古車価格は幅がある。2017年式で300万円を切っているものもあれば、400万円オーバーもある。300万円前後の上級グレードなら、新車よりもかなり買い得感がある。

必ず下取りと買い取りのか価格をチェックすること

今後、カムリの相場は安定してくるはずだが、カムリを売却する場合は要注意だ。相場が安定していない場合、ディーラー下取りだけでなく買取店での査定をしっかりとしておくことが重要。価格の幅が大きくなる可能性があるので、下取りと買取り、両方しっかりと比較する必要がある。

9代目の先代カムリがお買い得

9代目の先代カムリは、順調に中古車価格が下がっている。あまり人気の無いクルマではあるものの、ハイブリッド車なので燃費は抜群。室内の広さや乗り心地も、高いレベルにある。中古車価格は、比較的安めなので、コスパに優れた中古車をおすすめする。
順調に価格が下がっているので、先代カムリは乗り換えが決まったら、なるべく早く売却するといい。

トヨタ カムリ価格

カムリWSの価格は3,672,000円。カムリの中で、最上級グレードに位置付けられた。従来の上級グレードであるGに対して、約14万円高だ。それほど高価な価格設定ではないので、スポーティなルックスや走りを好む人は、積極的に選んでもよいだろう。

グレード 価格
WS 3,672,000円
WS“レザーパッケージ” 4,341,600円
G 3,531,600円
G“レザーパッケージ” 4,228,200円
X 3,298,320円