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「気になるくるま」第9回 マツダ オートザム AZ-1(1992)


ひとことでくるまと言っても、誰にも知られていないようなマイナーなものから、みんなの憧れのようなスーパーカーまで、実に様々です。そんなクルマたちの中から、マニアックカー・マニアでもある遠藤イヅルが、独断と偏見で選び出したくるまたちをイラストとともにみなさんにお送りいたします。第9回は、世界最小のスーパーカーともいわれる、マツダ・オートザム AZ-1をお送りいたします。


◆マツダ販売の多チャンネル化の産物


1990年代のはじめまで、俗にいうバブルの時代でした。国内自動車メーカーも拡大路線に入り、クルマの高級化、大型化、ハイパワー化が進んだほか、メーカーによってはひとつ上のステップに入らんとすべく、販売網の拡充を図ったところもあります。マツダはその1社でした。トヨタがレクサスを、日産がインフィニティを別ブランドで立ち上げたように、マツダは国内で一挙に5ブランド(5チャンネル)を構築。

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その5チャンネルとは、本家マツダ、ちょっと高級かつスポーツカー系のアンフィニ、海外のクルマをイメージした車種展開を行うユーノス、小型車販売を軸に中小自動車販売店や整備工場を中心に展開したオートザム、そしてフォード店です。ちなみにアンフィニは旧来の「マツダオート店」の看板変えで、フォードは元来あったブランドをそのまま流用していました。

結果として5チャンネル化は早々に失敗してしまうのですが、一方でごく短期間に猛烈な数の車種、しかも記憶に残る独特なモデルが矢継ぎ早に登場したことは副次的な効果になりました。


◆時代が生み出した強烈な個性を持つ名車


その中の1台、1992年から3年間だけ販売された「オートザム AZ-1」は、あとにも先にも出ていない極めて個性の強い軽自動車として知られています。その「個性」とは、

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  • ・ ミッドシップ
  • ・ ガルウイング
  • ・ 2シーター
  • ・ スケルトンモノコック+FRPボディ
  • ・ クイックなステアリング(ロックtoロック2.2回転!)
  • ・ 窓の開口部が極めて小さい

などなど枚挙に暇がありません。全長3.3m、全幅わずか1.4mの小さな車体なのに「スーパーカー」の要素に溢れ、荷物が積めない、乗降がしにくい、キャビンが小さいので体格によっては乗車さえ出来ない、などのハードかつストイックなキャラクター、バブル期設計の贅沢な作りなどとあいまって現在ではカルトカー的な人気を得ています。生産台数は5000台に満たないことも、その稀少性を後押ししています。

エンジンはスズキ・アルトワークス用の660ccで、自主規制枠いっぱいの64馬力。車重は720kgでした。また、兄弟車に「スズキ・キャラ」という車種もありました。こちらの生産台数はさらに少なく、たったの531台。AZ-1の上を行く希少車になっています。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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