• スバルインプレッサ 新型・旧型の比較レビュー

2016年10月にフルモデルチェンジしたインプレッサ。
ハッチバックはスポーツ、セダンはG4と呼ばれている。
5世代目になったインプレッサは、新型プラットフォーム(車台)であるSGP(スバル グローバル プラットフォーム)が採用された。
新旧インプレッサを比較する。

比較レビューのまとめ

  1. SGP(スバル グローバル プラットフォーム)が採用されたことで、先代インプレッサを圧倒する運動性能を手に入れた
  2. 歩行者検知式自動ブレーキ関連の安全装備「アイサイト」に加え、歩行者エアバッグが標準装備化された。このクラスでは、世界トップレベルの安全性能を得た
  3. 予算重視なら、2017年4月以降に中古車を買うのがおすすめ。ただし、アイサイト装備のものを選んで

概要

5代目となったスバル インプレッサ。残念ながら、ガソリン車のみの設定。エンジンは、水平対向4気筒の2.0Lと1.6Lが用意された。歩行者検知式自動ブレーキ関連の安全装備「アイサイト」が全車に標準装備化されただけでなく、歩行者エアバッグまで標準装備化された。この安全装備は、このクラスで世界トップレベルというもの。こうした装備を標準装備化しながら、エントリグレードは200万円を切る価格に設定されており高く評価できる。

インプレッサ新旧比較

コンセプト & エクステリア比較

新型はスポーティと高級感を両立したデザインに

新デザインフィロソフィー「DYNAMIC × SOLID」を量産モデルとしては初めて全面採用。機能性とデザイン性を両立した。全体的に彫の深い顔になり、ワイド&ローを強調。ヘキサゴンモチーフのフロントグリル、Cシェイプのポジションランプなどのデザインモチーフを際立たせることで、ひと目でインプレッサとわかるフェイスデザインとなっている。ボディサイドのシャープなキャラクターラインなど、全体的にスポーティさと高級感もプラスされている。
対して、先代インプレッサのコンセプトは、新しい価値を提供すべく「New Value Class」をコンセプトに開発された。やや、丸みを帯びたデザインが特徴で存在感があるデザインだ。ポテッとした可愛らしさをもったデザインだが、さすがに今となっては古さを感じさせる。

インプレッサ新旧比較

装備 & インテリア比較

日本車としては例をみないほどの高い安全装備。質感、デザインとも大幅に向上したインテリア

装備面は世界最高峰の安全性。これでこの価格は、実にお買い得といえる

新型の安全装備は、このクラスで世界トップレベルといえるくらい充実している。歩行者検知式自動ブレーキ関連の安全装備「アイサイト」、前席エアバッグ、サイドエアバッグ&カーテンエアバッグ、ニーエアバッグまで標準装備するだけでなく、国産車初の歩行者エアバッグまで標準装備化した。これだけの安全装備を標準装備化しながら、エントリグレードのインプレッサ スポーツ1.6i-L EyeSightの価格が、なんと200万円を切る1,922,400円となっている。このグレードは、他メーカーでよくある価格訴求用で宣伝・販促用のオトリグレードではない。他社のオトリグレードは、装備が簡素化され過ぎていて、実際にほとんど購入する人がいないグレードで、とにかく安さや燃費性能を高め、顧客に勘違いさせるためのものだ。インプレッサはそうではない。装備はシンプルながら十分に使える。決して顧客の勘違いを誘因するようなグレードではないことも高く評価できるポイントだ。これは、最近の自動車メーカーの戦略としては、かなり正道と言える。
先代のインプレッサも、アイサイトを含めなかなか高いレベルの安全装備を得ていた。しかし、残念ながらFF車の廉価グレードにはアイサイトが装備できないなど、物足りない状況だった。旧型インプレッサの中でスバルのウリであるアイサイトを装備したグレードとなると、上級グレードに限られている。そのため、旧型インプレッサを選ぶ場合、アイサイトの有無をシッカリとチェックする必要がある。

インテリアは系譜を継ぎ、より洗練された

新型のインテリアは、先代インプレッサの広がり感あるデザインと同じテイストをもつ。しかし、各部デザインの質感や精緻さは大きく向上。先代モデルとは大きく異なる高級感ある空間になっている。ただし、ナビなどのコネクティッド戦略に関しては、やや遅れている印象だ。ナビの上部に設置されたマルチファンクションディスプレイ (MFD)コンテンツを強化し、画面のデザインも一新。カラフルで、より見やすくなっている。

インプレッサ新旧比較

走行性能 & メカニズム比較

先代モデルが2世代くらい古く感じてしまうほどの大幅進化となった運動性能。しかし、燃費性能は微増。電動化技術の導入が望まれる

運動性能の進化幅は、かなりスゴイ。SGP(スバル グローバル プラッフォーム)が採用されたとはいえ、信じられないくらい進化した。とくに、ハンドリング性能は非常に楽しいものになっている。指1本の操作に対しても、クルマがシッカリと反応し、ドライバーの思うように走る。クルマの限界値がかなり高く、ちょっとやそっとじゃ破綻しない懐の深いフットワークをもち、それが安心感につながっている。しなやかに動くサスペンションは、乗り心地も良好。ゆっくり走っていても、いいクルマに乗っているなぁ、という気持ちになれる。
しかし、気持ちよく走ろうとすると、ミッションとCVTがフルさを感じさせる。こちらも大幅に改良されてはいるが、やはり、CVTの独特のフィーリングがダイレクト感に欠ける。そろそろ、ATやツインクラッチ式に移行したいところだ。エンジンも大幅に改良された。しかし、燃費向上は微小。今時、ガソリン車だけのラインアップというのでは、未来感を感じさせない。ほとんどEV走行できなかった先代のインプレッサハイブリッドだったが、こうしたモデルの投入に期待したい。
先代インプレッサと比較すると、進化の幅が大きすぎて、もはや比較にならないほど。運動性能、デザイン、安全装備、質感など、ほぼすべての面で大幅進化しているので、先代インプレッサを選ぶ理由は、価格という面くらいだろう。

インプレッサ新旧比較

おすすめは新型、旧型どっち?

先代インプレッサの中古車は、流通量が少なく高値。お買い得感が出るのは2017年4月以降と推測!

新型インプレッサは、SGP(スバル グローバル プラットフォーム)が採用されたことで、大幅に運動性能が向上。さらに、歩行者エアバッグやアイサイトも標準装備化するなど、安全性能も大幅に進化している。

性能重視派なら、新型を

運動性能と安全性能に関しては、先代インプレッサを圧倒する。より、高い運動性能と安全性能への優先順位が高いのならば、新型インプレッサがお勧めだ。
新型インプレッサは、発売されたとはいえ、セダンのG4や1.6L車がドンドン登録されるようになるのは、2017年1月以降となる。それほど多くの新型インプレッサが登録されていないため、下取りとなった旧型インプレッサも中古車マーケットに流通していない。そんなこともあり、元々流通台数も少ないインプレッサで、Cセグメントの国産AWDは数が少ないため、総じて中古車価格は高めだ。初期の2012年式でも、程度の良いものとなると160~170万円くらいの相場になっている。

ただし、燃費値差を考慮しても、旧型のほうがローコストという考え方もできる

新型インプレッサの燃費値アップは微小なので、燃費や購入時の予算重視というのであれば、中古車でも悪くはない。ただし、もう少し価格が安くなってからでないと、あまり買い得感があるとはいえない。新型インプレッサの販売が順調に進み、下取りになった先代インプレッサが多く中古車マーケットに流通してくれば 、先代インプレッサの価格は徐々に下がり始める。そうなってくるのは、恐らく2017年4月以降だろう。この頃に、価格が下がっていれば、買い時と言える。
先代インプレッサの中古車選びのコツは、必ずアイサイトが装備されているものがお勧めだ。アイサイトは、FF車に装備されていないので、AWDのみとなりやや割高だが、安全性を考えれば十分に元がとれる。また、アイサイトには、自動ブレーキだけでなく、前走車追従式のクルーズコントロール機能もある。この機能は、高速道路などでドライバーの疲労軽減に役立ち便利な機能。新型インプレッサには劣るものの、先代インプレッサでもアイサイト付なら、最新国産Cセグメント車と比べても引けを取らないのでお勧めだ。

新車値引き術とお得な乗り換え方法

直接のライバルは、マツダ アクセラだが、フォルクスワーゲン ゴルフとも競合させ大幅値引きを引き出したい

他社の値引きの大きなライバル車を引き合いに出すことがコツ

フルモデルチェンジ直後なので、インプレッサの値引きは非常に厳しいだろう。ただし、2~3月の繁忙期だけは別。各社決算なので、ここで数字を作りにくる。さらに、インプレッサの国内最大のライバルは、マツダ アクセラ。インプレッサの2016年4~9月の販売台数は、約1.9万台。対してアクセラは1.3万台だ。若干、開きがあるが、10月はインプレッサがフルモデルチェンジの谷間ということもあり、販売台数を落としている。対して、アクセラはマイナーチェンジ後ということもあり販売好調。11月と12月にインプレッサが、フルモデルチェンジ効果で一気に販売台数を伸ばしたいところだが、数が出る1.6L車の発売が12月を予定している。つまり、インプレッサ本来の販売力となっていないため、アクセラが販売台数で上回る可能性もあるのだ。そうなると、4月からの販売台数はグッと縮まり、2~3月の繁忙期決戦へ突入する可能性が高い。
一般的には、ここでアクセラと競合させて値引きを引き出したいところ。まずは、アクセラの見積りを取ることは重要だ。しかし、アクセラはマツダの方針もあり、なかなか値引きしない。そうなると、値引き金額での競合が難しくなる。そこで、新たなライバルとして加えたいのがフォルクスワーゲン ゴルフ。ゴルフは、一定の値引きが期待できるので、競合させると効果があるだろう。また、トヨタ オーリスとも競合させたい。こちらは、売れていないので値引き勝負に出る可能性があり、価格重視であるというスタンスで商談に挑めば、一定の効果があるだろう。

新車商談前に必ず買取店で査定を

下取り車は、新車の商談をする前に、必ず買取店で査定しておきたい。スバル車が下取り車ではない場合は、特に重要。スバルのディーラーでは、他社の中古車を再販する能力が低いので、ほとんどがオークションに出される。こうなると、強みがあるのが買取店。買取店の中でも、全国に流通網があるお店なら、比較的人気車はかなり高額で買い取ってもスグに売れてしまう。オークションを通さないので、高く買取れるのだ。スバル車は意外と、根強いファンに支えられていて、中古車価格も高いのでリセールバリューも期待できる。ディーラーが、よほど対策費などを使わない限り、買取店での売却が有利だ。

新旧インプレッサ 比較ギャラリー

クルマ評論家 CORISM代表 大岡 智彦 氏
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。
日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員