日本専用車としての価値を高める最上級グレードSTI Sport。走りとインテリアの質感を大幅アップ!


スバル レヴォーグSTI Sportスバルは、スポーツワゴンであるレヴォーグに新グレード「レヴォーグSTI Sport」を設定。2016年7月21日より発売を開始する。

スバル レヴォーグは、日本マーケットは軽視したことへの後悔の念ともいえるモデル。レヴォーグは、2014年に登場し日本専用のワゴンモデルとして開発されている。従来ならば、このサイズはレガシィツーリングワゴンが受け持っていた。レガシィは、現在6代目となり、スバルを支える基幹車種になっている。しかし、レガシィの原点は日本マーケットにあり、ワゴンブームをもたらしたパイオニア的存在。スポーツワゴンの代名詞的モデルだった。

ところが、レガシィはモデル途中から迷走を始めた。スバルは、モデルチェンジの度に徐々にレガシィのボディサイズを大きくしていく。そして、5代目レガシィでは、完全に北米をメインターゲットとしボディを巨大化。完全に日本マーケットを無視したモデルになってしまった。だが、日本では売れなくなってしまったものの、販売台数が大きい北米マーケットでは大ヒットとなる。6代目レガシィは、さらに北米寄りになり、スバルの成長を支える1台となった。スバルはこの時、完全に利益の上がる北米マーケットにシフトし、日本マーケットの優先順位は大きく下がった。スバルもグローバル企業なので、限られたリソースを優先順位の高いマーケットに使うのは仕方のないことともいえる。最近では、日本の多くの自動車メーカーがこうした考え方をしている。

ただ、日本マーケットは特殊だ。海外向けに造ったクルマを単に持ってくるだけでは売れない。日本で売れているクルマの多くが、日本専用車ともいえるモデルが多い。スバルもこうした戦略を取ったことから、多くの旧レガシィ顧客を失っていた。

スバルレヴォーグSTI Sportそこで、北米で利益が出たこともあり、低迷する日本マーケットにレガシィの代りとなるレヴォーグの開発を開始。レヴォーグは、国内で使いやすいボディサイズとして、全長4690×全幅1780×全高1490mmとした。全幅を1,800㎜以上にしなかったのは、国内都市部に多い立体駐車場の制限が1,800㎜だからだ。これを超えてしまうと、車庫証明が取れないなど寸法的な問題でレヴォーグを購入できなくなる。

レヴォーグには、1.6Lダウンサイジングターボエンジンが搭載された。当時、ダウンサイジングターボエンジンは、ほぼ輸入車のみ。燃料はハイオク仕様となっていた。しかし、スバルは、この1.6Lエンジンをレギュラー仕様として開発する。燃費やパワーも欧州のハイオク仕様エンジンと同等以上が目標だ。これは、日本マーケットでは日本車のハイオク仕様は嫌われる傾向が強いからだ。また、燃料よりパワーという顧客向けに従来の2.0Lターボも用意した。レヴォーグの燃費は、1.6Lが17.4㎞/Lで2.0Lが13.2㎞/Lとなっている。

こうした日本専用車として生まれたレヴォーグに、「レヴォーグSTI Sport」 と呼ばれる新グレードが追加された。STIという名の後にSportという文字までプラスされているので、走りに特化したモデルと思うのが普通だろう。しかし、レヴォーグSTI SportはSTIの名が付くものの、STI濃度がかなり薄い。と、言うのも、レヴォーグが持つ「走行性能」と「走りの質感」・「内外装の質感」をこれまでよりも高めていて、走行パフォーマンスのアップだけでなく「質感」にこだわったモデルなのだ。ある意味STIの名を使わなくても、と思うのだが、やはりSTIのブランドイメージが良いので、こうした力を借りてレヴォーグSTI Sportを最上級グレードとして位置付けた。端的に言えば、メルセデスベンツとAMG、BMWのM。そうした関係性と同じ構図だ。

エクステリアデザインも変更されている。専用グリルやバンパーが装備され、いかにも空力重視というハデハデしいものではなく、全体のバランスを考えた大人のデザインとなった。

レヴォーグのインテリア

スバル レヴォーグSTI Sportインテリアには、特徴的なボルドー/ブラックの専用本革シートが装備された。スポーツモデルらしくバケットタイプのスポーツシートを採用。こちらも全体のバランスを考えた上質感を感じさせる仕上がりになっている。ただし、インテリアカラーは1色のみと寂しい状況。ボディカラーとのマッチングを考えれば、もう少しインテリアカラーに選択肢が欲しい。

そして、足回りは鉄板ともいえるビルシュタインとの組み合わせ。今回のビルシュタイン製ダンパーは、DampMaticⅡ付き。DampMaticⅡが採用されている。これは、STIがプロデュースするtSなどにも採用されていて、低速域ではしなやかさを維持し、大きな入力をいなしながら、高速域でのコーナリング時には、シッカリとした足回りに変化するフレキシブルな特性が特徴だ。つまり、ゆっくりと走っているときは快適な乗り心地でありながら、いざ攻めの走りになるとギュッと路面をシッカリと捉えるサスペンションになり、高い操縦安定性と快適な乗り心地を高次元で両立。

さて、レヴォーグSTI Sportの価格は、1.6L車が3,488,400円。今までの最上級グレードである1.6GT-Sアイサイトが3,056,400円だったので、約43万円高となった。本革シートやアドバンスドセイフティパッケージが標準装備化されていることなどを考えると、まぁ、価格なりの装備といったところ。お買い得感はない。STIモデルが通常ラインで生産できるようになり、コストダウンが可能になったというのであれば、もう少し買い得感があってもいい。元々のレヴォーグの価格はやや高めなのだから。

スバル レヴォーグSTI SportこのレヴォーグSTI Sportが登場した背景には、やや高い価格も影響している。レヴォーグは高価な価格帯ということもあり、フォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアントなどの輸入車との競合が多い。輸入車と競合すると、レヴォーグに足りないのは上質な走りの質感やインテリアの質感ということになったのだそうだ。その足りない部分を補ったモデルがレヴォーグSTI Sportということになる。輸入車がライバルなら、レヴォーグSTI Sportの価格もリーズナブルに見える。パフォーマンスが同等なら、輸入車より価格の安いレヴォーグSTI Sportは魅力的に見える。レヴォーグSTI Sportは、国産車だけでなくライバルを輸入車に変更し、勝てるクルマに仕上げた。新たなステージで戦うという挑戦でもある。

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スバル レヴォーグSTI Sport価格


・レヴォーグ1.6STI Sport EyeSight 3,488,400円
・レヴォーグ2.0STI Sport EyeSight 3,942,000円

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スバル レヴォーグSTI Sport主要装備


■足回り
・専用チューニング ビルシュタインフロントストラット(DampMaticⅡ、倒立式)&コイルスプリング
・専用チューニング ビルシュタインリヤダンパー&コイルスプリング

■外装
・専用フロントバンパー
・専用フロントグリル
・専用LEDフロントフォグランプ
・専用18インチアルミホイール(ダークグレー+切削光輝)
・専用大型デュアルマフラーカッター
・STIオーナメント(フロント/リヤ)

■内装
・専用本革シート(ボルドー/ブラック)
・専用マルチインフォメーションディスプレイ付レッドルミネセントメーター
・専用本革巻ステアリングホイール(レッドステッチ+高触感革)
・専用本革巻シフトレバー(レッドステッチ+高触感革)
・専用インパネセンターバイザー(レザー調素材巻+レッドステッチ)
・専用フロントコンソール(ボルドー/ブラック)(レザー調素材巻+レッドステッチ)
・専用スライド機構付コンソールリッド(ボルドー/ブラック+レッドステッチ)
・専用ドアトリム/ドアアームレスト(ボルドー/ブラック+レッドステッチ)
・STIロゴ入りステンレス製サイドシルプレート(フロント)

■その他
・専用クランプスティフナー付電動パワーステアリング
・アドバンスドセイフティパッケージ(標準装備)
・WRブルー・パール(STI Sport専用色)

執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。