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「みんなの街のはたらくくるま」第1回 日産 セドリック(Y31)パトカー

わたしたちの生活を支えている、くるま。配送、配達など生活に必要な物資の配送を行うトラックや、乗客を運ぶバスやタクシーなど、実にさまざまな種類のくるまたちがその任を担っています。このコーナーではそんな「はたらくくるま」にスポットを当てて、中でもちょっと変わっていたり、クセのある「はたらくくるま」をイラストとともにご紹介していきます。

第一回は、これもまた「はたらくくるま」のひとつであるパトロールカーの中でも、ぼくの思う「最後のパトカーらしいパトカー」だった、「日産セドリック(Y31型)」をお届けいたします。


街にあふれる影のロングセラー

Y31型セドリックセダンは1987年から2014年までという、たいへん長い期間にわたり製造された日産のサルーンです。特にセドリックセダンはタクシーやハイヤー、パトカーなどの「フリート需要」での使用に主眼が置かれていたので、このY31型もタクシーに多用されていました。
一方、オーナードライバー向けであるセドリックのハードトップがY32、Y33、Y34型はモデルチェンジを繰り返し、2004年に後継の「フーガ」に置き換わったあとも、Y31型セドリックセダンは延々と製造が継続されたのです。


質実剛健でシンプルな実用美

「フルサイズセダン」(全長4.7m×全幅1.7mの5ナンバー枠めいっぱいのサイズという日本的な意味でのフルサイズ)を使うことの多かったパトカーにおいては、トヨタの「クラウン」と並んで、セドリックはまさに代名詞とも言える存在でした。1987年から2002年まで導入されていたため、市販車と同様前期、中期、後期に大別され、さらに年次によって細かな差異がありました。

「最後のパトカーらしいパトカー」、という印象はどこから来るかというと、いかにもパトカーらしい四角いスタイル、簡素な装備の割にバンパーだけ3ナンバー版になっていたりするという「パトカー仕様」という特別性、マニュアルトランスミッション、キャップのない鉄ホイールの姿などなど・・・「装備が簡素なのにエンジン・バンパーは大きく、マニュアル」という、昔ながらのパトカーの作り方を忠実に守っていたからなのです。


去りゆく端正な業務セダン

Y31patrol-car(クリックで拡大)最近のパトカーは、シートこそビニールレザーのままですが、市販版と外観上の差異はほとんどなく、覆面パトカーだと見分けがほんとうにたいへんなくらいです。そんな「ザ・パトカー」とでも云えるY31型セドリックのパトカーも、導入以来時間も経ち、引退が進んでいます。でもきっと、ぼくたちの中ではいつまでも、この凛々しいスタイルを忘れることはないでしょう。今回は、その姿を絵にしてみることにしました。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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