新古車、登録済未使用車とは?
販売会社名義の自社登録のカラクリは? 結局、だれが得?

新古車、登録済未使用車などと呼ばれるクルマは、自動車流通の矛盾の中で生まれてくるものだ。

普通なら、クルマはユーザーが買ったときにナンバーを付けることになるが、新古車はユーザーに売れていないのに、販売会社が自社名義でナンバーを付けることによって生まれる。

なぜ、買い手がいないクルマにこのようなことをするのかといえば、いくつかの理由がある。ひとつは前項で述べたような激しい販売合戦が繰り広げられるときだ。

裏側その1

実際にユーザーに売れていなくても、ナンバーを付ければ、自動車の登録台数統計上1台にカウントされる。そのため、販売台数ナンバー1などとCMで使ったりするために、無理やりナンバーを付けることが多い。

裏側その2

さらに、これにメーカーの論理が加わる。自動車メーカーは工場などに大きい設備投資をしているので、それを順調に稼働させることが利益につながる。工場が稼働していなくても、工員には給料だって払わなくてはならない。設備を遊ばせていたのでは、利益どころか赤字になってしまう。

そのため、メーカーとしては売れるか売れないかの前に工場を稼働させたいと考える。少々無理があっても、コンスタントに工場を稼働させたほうが、利益は出るからだ。

裏側その3

このようにして生産したクルマがなかなか売れないとき、メーカーは販売会社に対して販売奨励金を出して販売増を働きかける。

販売奨励金の出し方にはいろいろな方法がある。例えば、年間1万台の販売契約をしたディーラーに対して、メーカーは年度末に1万台以上販売したら台当り2万円の販売奨励金を出すとする。1万台×2万円=2億円!

こうした販売奨励金が多くなるのは、2-3月や6-7月などが多く、期間や車種など、メーカーの都合で設定される。このように、馬の鼻先にニンジンをぶら下げるような形で販売奨励金を設定する。

なので、年度末に9,900台しか売れないと思っているディーラーも、2億円入って来るなら、原価100万円のクルマを100台自社登録しても原価は1億円なので、1億円の利益が出る計算となるのだ。100台自社登録したクルマも、新古車として処分すれば、原価分の1億円程度は最終的に帰ってくるようなものなので、2億円の販売奨励金欲しさに買い手のいないクルマを売ったことにするのだ。

登録済未使用車、新古車のメリットデメリット

こうして生まれた買い手のいない自社登録車は、ナンバーが付いているので新車としては販売できないから、中古車市場で販売することになる。新古車とか登録済未使用車の名前で販売されるクルマがそれで、実際にはユーザーに使われていないから、走行距離は数㎞から30kmくらいしか走っておらず、ほとんど新車と変わらないコンディションで販売される。最近では、そうしたクルマを集めて、登録済未使用車専門の中古車店も続々オープンしている。

当然ながら、ナンバーが付いているので、新車と同じ価格では販売できないので、値引きされた新車の価格よりも安く販売されるのが普通。税金なども安上がりになるので、ユーザーにとってはいろいろな面で有利なクルマである。

ただ、新古車などの形で安く売られたクルマは、後々のリセールバリューも安くなることが多い。中古車マーケットに過剰にクルマが投入されるので、中古車価格は下落傾向になる。中古車価格が下がると、リセールバリューや下取り価格も下がる。そうなると、新車に乗り換える顧客も下取り車の価格が低くなるので、余分にお金を負担することになり、予算が合わなくなるなどし、新車の売れ行きにも影響する。長期的に見れば、メーカーにとっても良い話ではなくなる。

そのため、新古車の発生を抑えて実際にユーザーに売れたクルマだけにナンバーを付け、ブランド価値を高めようという反省も生まれるのだが、販売合戦が激しくなると、メーカーの国内営業担当責任者も他社に負けたことを社内で指摘されることは確実なので、ついつい安易に販売奨励金を乱発し、新古車を生み出す傾向になる。

ユーザー側としては、乗り潰すのであれば新古車は安く買えるメリットがある。ただし、短期間で乗り換えるのなら、リセールバリューも下がっていると思われるので、単純にお得という訳でもない。新古車は、特にリセールバリューに注意して購入することをおすすめする。

自動車評論家 松下 宏

自動車評論家松下 宏(まつした ひろし)中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員としても、その信念は変わらない。そのため、大本命といわれている車種さえ外してでも自らの信念を貫き通す熱いハートをもつ。