日産ティアナ
<アイドリングストップやエマージェンシーブレーキなど、人気の装備が無しという訳とは?>
日産ティアナ日産はFFのセダンであるティアナをフルモデルチェンジし、発売を開始。このフルモデルチェンジで、ティアナは3代目となった。初代ティアナは、モダンリビングをテーマに開発された。明るく広い室内に助手席シートにオットマン機能を備えリラックスできる空間を持つモデルで、こういったコンセプトのセダンが今まで無かったこともあり、ヒットモデルとなった。当時、苦境にあった日産を支えたモデルでもある。

2代目ティアナは、今はやりのおもてなしをテーマに開発された。しかし、ベースモデルが北米のアルティマということもあり、ひと回り大きくなった。さらに、セダンマーケットがドンドンと縮小傾向という追い討ちも重なり国内では苦戦を強いられるモデルとなってしまったのだ。さらに、当時はミニバンブームといこともあり、各社ミニバン開発に注力し、このクラスのセダンのブラッシュアップを行わず、ほとんど放置していたこともセダン離れの理由のひとつだろう。

国内マーケットの全体需要は年々減少傾向。人口も減っていくことから、伸びる要素はないという厳しい時代になった。クルマの代替えは、基本的に日産なら日産車に乗る顧客が、また日産車を選ぶという流れが主流。そのために顧客には営業マンがいるわけだ。ところが、日産は長くセダン車を放置してきた。そのため、セダンじゃなくちゃだめという顧客もドンドンと他車へ乗り換えていたのだ。これは保有台数の流出で、ディーラーなどの整備関連収益も減らすことになる。販売台数は少ないとはいえ、保有台数は代替えの母体となるため、減らすことは営業的に何のメリットも無いのだ。

そこで、日産はセダンラインアップを強化することを模索する。自国の顧客に対してもコストに厳しい日産は、コストを抑えて日本に導入できるセダンモデルを探しだした。最近では、シルフィやティーダラティオなどがそういったモデルで、アジアなどでグローバル車としてすでに現地で投入されているものを日本向けに仕様変更して導入した。そのため、安全装備や燃費関連装備などなど、日本にジャストフィットしたモデルということにはなかなかならない。

トヨタは、母国の顧客は大切にするという考え方をもっていて、随分古いプラットフォームを使い続けコストを抑えながらマークXやクラウンなど国内専用車を一定期間でフルモデルチェンジさせている。クラウンには、最新のハイブリッドシステムを導入するなどし、顧客の流出だけでなく新規顧客の奪取にも成功している。

そして、3代目ティアナも残念ながら2代目と同様に北米・中国モデルがベース。中国のティアナとほぼ同じとみていいだろう。ボディサイズは、全長4880×全幅1830×全高1470mm。クラウンより若干全長が短く、全幅は30mm大きい。国内で使うのであれば、全幅は1800mm以下に抑えたいところだが、中国と北米優先だ。クラウンは全幅1800mm に抑えている。

日産ティアナ最小回転半径もこれだけのボディサイズなので5.5m。この数値は16インチタイヤ装着車の数字だが、5ナンバーミニバン並みだ。17インチ車なると、5.7mと大型ミニバン並みとなる。これは、トヨタのカムリも同様に北米メインということもあり5.5m。ただし、使い勝手にこだわるフォルクスワーゲン パサートなどは、同じFFでも5.3mだ。ボディ幅が大きいのなら、せめて最小回転をできるだけ小さくする工夫が欲しいのだが、中国・北米ではそういった要望の優先順位は低いのだろう。

日本マーケットでは、今、急速に自動ブレーキなどの安全装備が進み、さらにアイドリングストップ機能をもち低燃費性能を上げることは、もはや当たり前だ。日産も、急速に自動ブレーキであるエマージェンシーブレーキの装備を一気に進めている。セレナには、ほぼ全車標準装備としているくらいだ。しかし、残念ながら中国・北米中心で開発されてきたティアナには装備されていない。モデルライフの中で検討するというが、今時発売される新型車でこれらの装備が無いというのは少々物足りない。ただし、その他の安全装備面では、日産車では珍しくサイドエアバッグとカーテンエアバッグが全車標準装備されていて、これは高く評価できる。日産車の場合、サイドエアバック類はほとんどの車種でオプション設定になっている。

日本導入の背景が残念でならないが、全幅が広いということもり、デザインはなかなか立派だ。ワイドで安定したシルエットと、ヘッドライトからフェンダー、そしてボディサイドと流れるキャラクターラインがダイナミックなフォルムを強調。高級セダンらしい堂々とした存在感のあるスタイリングといえる。

インテリアは、2代目のコンセプトの「おもてなし」を継承。無重力状態でのヒトの姿勢を参考に開発した「スパイナルサポート機能付シート」を採用したり、伝統の助手席には、ふくらはぎを支える範囲を拡大させたオットマンも使われていて快適性をさらにアップしている。助手席に乗るであろう年配の奥様に人気の装備。こういった装備が、購買理由のひとつとなる。このあたりの装備の設定は、非常にうまい。

パワーユニットは、QR25DE型2.5L。残念ながら、アイドリングストップ機能は無い。それでも燃費は14.4㎞/Lを達成。アテンザの2.5Lの16.0㎞/Lと比べると当然燃費は悪いが、アイドリングストップ機能が未装着ということを考えれば立派な数値。アイドリングストップ機能があれば、10%くらいは燃費が上がったりするクラスだ。そして、都市部で使うことが多い顧客にとって、アイドリングストップ機能が無いことは、実燃費で大きな差が出ることが予想される。北米・中国中心のクルマを持ってくることによるデメリットは、こういった大切な部分に出ている。日本のマーケットの現状とマッチせずに商品力を落とす結果となった。パワーとトルクは、127kW&234Nm。アテンザが138kW&250Nmでこちらも、少々アテンザより物足りない状況となっている。

ティアナの価格は、XEの2,429,700円から。比較的リーズナブルといった印象だが、このグレードだとパワーシートもオットマンも無いので、実際はひとつ上のグレードであるXLの2,753,100円からがベストな選択となるだろう。価格設定は絶妙。ライバルとなるアテンザセダン25S Lパッケージは約308万円。アテンザの2.5Lはこのグレードしかないので、ティアナXLだと約33万円もの価格差があるので予算重視となるとティアナが優位になる。アテンザLパッケージ車は、自動ブレーキなどの安全装備が充実しているので、予算より安全装備を重視するのならアテンザという選択になる。

■ティアナ価格
・XV 3,045,000円
・XL 2,753,100円
・XE 2,429,700円

 

 

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