国内で日産のフラッグシップとなる新型日産フーガが発売された。セダンを取り巻く環境が非常に厳しいのはすでに耳にタコなほどであるが、事実であるのは確か。ミニバン、そしてコンパクトカーばかりが売れ、路上にも溢れている。
そのような超逆風のなか、登場してきたのが日産の新型フーガである。

この記事の目次 CONTENTS
トヨタ陣営が鉄壁の守りを築く中で、あえて高級セダンを開発する日産
新型日産フーガ開発責任者 大澤辰夫氏インタビュー~開発編~
新型日産フーガ開発責任者 大澤辰夫氏インタビュー~販売戦略編~
いいクルマ作りだけでなく大胆な販売戦略もある新型フーガは成功のモデルケースとなるのか!?

ライター紹介

221616 編集部

世の中の自動車ニュースとは一味違う視点でスローニュースを発信。編集部員はクルマ初心者からクルマをこよなく愛するマニアまで幅広いメンバーで構成。全国のガリバーで売れている中古車や車のスタッフレポートなど、生の情報をお届け中。

トヨタ陣営が鉄壁の守りを築く中で、あえて高級セダンを開発する日産

市場がまったくないとはいわないが、レクサスを含むトヨタ陣営が鉄壁の守りを築いているし、輸入車勢の牙城でもある。そのなかで、高級セダンを開発し、そして売るということはなにか?

新型日産フーガ開発責任者 大澤辰夫氏インタビュー~開発編~

なにか秘策があるのか、新型日産フーガを開発責任者である日産商品企画本部商品企画室チーフプロダクトスペシャリストである大澤辰夫氏にその点をズバリうかがってみた。

セダンを取り巻く環境が厳しい中、なぜ今高級セダンの開発を?

大澤:セダンのなかでもFRの高級車を作れるのは、日本だとトヨタと日産だけなんですよね。海外でもメルセデスとBMWしかない。世界的に見て、4メーカーだけなんですよ。
そのなかでもトヨタとメルセデスがラグジュアリー。そして日産とBMWが走りにこだわっている。その4つのなかでさらに2分化されていると思っています。

ズバリ高級車を作る意味とは?

大澤:そもそも高級車マーケットに対して応えるのは凄くむずかしい。さらに技術的にどうするかなんてもっとむずかしい。だから大前提として、とにかく作り続けることが大切。さっきの4メーカーの棲み分けだって、不変なようにね。
だからこそ、作り続けないと高級車のノウハウは蓄積されないと思っています。

先代のフーガと比べて存在感が増していますが、スカイラインとキャラクター的に被るような気が…?

大澤:フーガは、スカイラインと似ているのはあえてしています。とくに、北米で発売しているインフィニティブランドにおけるアイデンティティとしてね。
存在感については、先代に足りないという声が多かったのは事実で、その点については大きく解消されていると思います。

高級車としての新型フーガ像とは?

大澤:具体的にはカチッとしたドイツ車に対して、ツヤや華やかさっていう点で暖かい人間味をプラスしていると言ったらいいのかな。これが日産の立ち位置だと思っています。
たとえば、インテリアの加飾部分。初代では本物のアルミパネルを使って、とても好評でした。それをさらに発展させて、新型フーガでは銀粉を使用したウッドパネルを開発しました。いわゆる象眼ですね。こういうのは輸入車にもないでしょ。

新型日産フーガ開発責任者 大澤辰夫氏インタビュー~販売戦略編~

常に高級車を作り続ける姿勢が大切であり、実際にその考え方に基づいて日産らしい高級車を作るということを重要視する大澤氏。
しかし、セダンを取り巻く環境は厳しく、その中でどのような販売戦略で高級車フーガを売っていくのかをうかがってみた。

コストダウンを重要視しつつ、新型日産フーガは、とにかく新技術がいっぱいですよね?

大澤:そう。こんなご時世だから、コストを抑えつつも高級車にふさわしい技術を入れていこうと。エアコンだと、世界初の人に優しいフォレストエアコンとか。
さらにプリクラッシュからエコペダルまで、安全&エコ技術も満載です。

1年後はフーガのハイブリッドが発売されるということですが?

大澤:エコだけじゃなくても、モーターの走りって、凄く滑らかでしょ。これは高級車にとてもマッチします。だから、フーガでハイブリッドを出すというのは、リーフとまた違ったアプローチとして重要なわけです。
期待してください。

セダンを取り巻く環境を考えると、いいモノ=売れるという時代ではないと思うのですが?

大澤:そうかもしれません。ただ、いいモノは皆さんに買ってほしい。

ハイブリッドが1年後に出るというのは販売的にはハンディになりかねませんか?

大澤:その点を逆手に取ったプランを考えてあって、それが「フーガハイブリッド買い替えプラン」。
まずは出たばかりのフーガを買っていただいて、1年後に出るハイブリッドに乗り替えてもらおう、という今までにない大胆な提案です(笑)

新車に1年で乗り替えるというのは負担になりませんか?また、秘策はありますか?

大澤:そのために負担ならないように、80%残価設定ローン(個人向け)や1年リース(法人向け)になっているんですよ。しかも、残価設定は頭金と最初に1カ月分払うだけで、ハイブリッドの登場までそれ以外の支払いはなし。凄いでしょ(笑)。これなら自然にフーガを2回も楽しめるというわけですね。
こういうことまで配慮して売っていくのも、フーガの販売戦略というだけでなく、高級車をどう売っていくかにも大いに関係してくると思います。

いいクルマ作りだけでなく大胆な販売戦略もある新型フーガは成功のモデルケースとなるのか!?

ただ高級なセダンを作るだけでは売れないということは肌で感じられる時代だけに、一見するとリスクが大きい売り方をも視野に入れて展開していく。

これぞ、戦略であり、フーガ、ひいてはその後に控えるフーガ ハイブリッドの成功のカギになることは確かだ。いいものだから高価でも売れる、という時代ではないからこそ、売り方も重要。トヨタや輸入車も含めて、高級車の新しい売り方の礎になるのか?また、他社は追随するか否か?
新型日産フーガの売れ行きに注目だ!