ザ・対決 トヨタ パッソ セッテ VS ホンダ フリード
コンパクト3列ミニバン編
トヨタ パッソ セッテ vs ホンダ フリード

 日本の消費者が求めるものはレベルが高いと言ったらいいのだろうか、コンパクトなミニバンに対してもその要求は高まってきている。もちろんサイズはコンパクトでも、3列シートはマストな条件だ。その開発というのはひと筋縄ではいかず、各社ともアイデアを絞っているクラス。そこに一石を投じたのがホンダのフリード。限界まで広げたボディを武器に、想像以上の広大なパッケージングを提供する。
 またトヨタ/ダイハツ連合からは女性ユーザーをターゲットとした、パッソ セッテ&ブーン ルミナスが登場。こちらもそつのないデザインでまとめられたコンパクトなボディの中に3列シートを備え、さらに取り回しのよさも徹底的に追求している。華がないといえばそれまでだが、実用性重視のクルマ作りというのもこのクラスの特徴だろう。価格も含めて、多角的に対決だ。

佐藤まいみ
PHOTO/森山良雄 構成・文/近藤暁史
モデル/ 佐藤まいみ

ROUND1:ファーストインプレッション

トヨタ パッソ セッテ
トヨタ パッソ セッテ リヤ
販売面でも滑り出しは絶好調
低価格ハイブリッドの実力とは?

 当初はシエンタの後継などと言われていたが、フタを開けてみると完全独立の車種として登場。パッソ セッテの車名からもわかるように、兄弟車としてブーン ルミナスがあり、企画&開発はダイハツが担当している。ポイントはあくまでもダイハツ主導という点にあり、トヨタはアドバイス程度しか口を出していないというから、bB/クーなどとは少々趣が異なる。もちろんベースとなるのは、パッソ/ブーンのシャーシであるから、サイズ的にはかなりコンパクトだ。
 そのコンセプトはじつに明解で、コンパクトかつ広い室内。そしてそこに3列シートを配置するというもので、実用性&経済性の高いクルマを目指している。それだけにターゲットとするユーザーは女性で、正直なところクルマに興味がある男性などはそもそも視野に入れていないといっていい。デザインもプレーンというか、かなりアッサリとした万人受けするスタイルにまとめられており、華がないのが逆に特徴だったりする。
 肝心のパッケージングは、パッソベースであるだけに、3列目はあくまでも緊急用と割り切ったほうがいいだろう。それも大人が座るというよりも子供向きだ。通常は3列目を収納して、ラゲッジとして使用することになるとは思うが、フロアは完全にフラットで使い勝手は上々だろう。
 エンジンは109馬力を発生する1.5リッターのみで、これに4速ATを組み合せているので経済性は高い。加えて、5.2mの最小回転半径や630mmという高い着座位置など、取り回しもよく、運転もしやすい。女性ユーザーをメインとするクルマに求められる要素をそつなく、そして過不足なくクリアしている。

[エコ&燃費]
 燃費はFFで15.6km/Lで、ミニバンであり、車重が1トンを超えていることを考えると、優秀といっていいだろう。環境性能も自慢のインテリジェント触媒の採用しているなど、ダイハツらしさに注目だ。ただ排ガスは「平成17年排出ガス基準50%低減レベル」なので、グリーン税制は適用にならない。

[安全性能]
 カーテンエアバッグについてはパッソ セッテはXのみオプション(その他のグレードは標準)だが、ブーン ルミナスは全車オプション設定となる。またVSC(横滑り防止装置)は全車にオプションだが、それでもとりあえず用意されているのはクラスを考えると合格か。ヘッドレストについては定員分が用意されるのはいいとして、2列目真ん中のシートベルトがいまだに2点なのは安全性に配慮が欠けている。

[取材時実測燃費]
12.4km/L

[トヨタ パッソ セッテ価格帯]
149.0〜203.3万円

ホンダ フリード
ホンダ フリード リヤ
コンパクトなボディで
最大限の室内空間を実現!

 コンパクトなボディに3列シートを配置したミニミニバンの先駆者的存在であるモビリオの後継車として登場したのがフリードだ。フリードという車名がフリーダムから来ているなど、まさに自由な発想で開発されている。
 その魅力は、ズバリ「クラスの限界を超えたパッケージング」にある。つまりコンパクトクラスでも車内は広々、3列目までしっかりと座ることができることを世間に知らしめたのは大きな功績だろうし、実際にそれが好調な販売につながっている。プラットホームはもちろんホンダ自慢の低床・低重心で、加えてフラットフロアをも実現しているのには驚くばかり。実際に車内に足を踏み入れると、かなり広いことが瞬時にわかるほど。
 懸案の3列目に腰を下ろしても、足もとは広いし、天井が頭の上に迫っているということもない。掛け値なしにひとクラス上のパッケージングを実現しているといっていい。ちなみに2/3列目のシートそのものはステップワゴンと同じものというからじつに贅沢である。また実質のモビリオ・スパイクの後継に当たるものとして、2列シート(5人乗り)も用意されていて、こちらは広大なラゲッジが自慢で、使い勝手は上々だ。
 エンジンはベースとなったフィット譲りの1.5リッターのみ。FFがCVTで、4WDが5速ATとなるのだが、セッティング的には低速重視で煮詰められているうえに、先代にあたるモビリオとほぼ同じの車重も相まってキビキビした走りが損なわれていないのはさすがホンダだ。それだけに、価格帯が200万円前後と高価なのが、コンパクトクラスらしくない。恐らく購入上のネックにもなるはず。

[エコ&燃費]
 低速に振ったセッティングとはいえ、燃費に関しては16.4km/L(FF車)とじつに優秀。「平成22年度燃費基準+25%」を取得。排ガスについても「平成17年排出ガス基準75%低減レベル」に認定され4つ星を獲得し、グリーン税制も適用だ。

[安全性能]
 そもそもボディ剛性が高いことが安全性に有利に働いており、自動車アセスメントの試験で最高の6つ星を獲得している。もちろんホンダが力を入れる歩行者保護も高いレベルにある。ただし2/3列目の真ん中にはヘッドレストがなく、シートベルトも2点式というのは安全性に対する意識が低い。またVSA(横滑り防止装置)は、Giエアロ(FF)とフレックスiエアロ(FF)、そして4WDには標準装備。GエアロLパッケージ(FF)にはオプション設定があるものの、その他のFF車はオプションですら装備できない。


[取材時実測燃費]
12.7km/L

[ホンダ フリード価格帯]
163.8〜225.75万円

トヨタ パッソ セッテ S(FF)
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4195×1695×1620mm
車両重量
1190kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC
総排気量
1495cc
最高出力
109ps(80kw)/6000rpm
最大トルク
14.4kg-m(141N・m)/4400rpm
ミッション
4速AT
10・15モード燃費
15.6km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ドラム
税込価格
186.5万円
ホンダ フリード Giエアロ
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4215×1695×1715mm
車両重量
1330kg
エンジンタイプ
直列4気筒SOHC
総排気量
1496cc
最高出力
118ps(87kw)/6600rpm
最大トルク
14.7kg-m(144N・m)/4800rpm
ミッション
CVT
10・15モード燃費
16.4km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/車軸式
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ドラム
税込価格
225.75万円
トヨタ パッソ セッテ 1.5リッターエンジン

トヨタ パッソ セッテのエンジンは1.5リッター直4のみ。ダイハツ自慢のインテリジェント触媒を搭載するが、排ガス基準は3つ星にとどまる。

トヨタ パッソ セッテ 15インチホイール

エアロ付きグレードのSには15インチのアルミホイールが標準装備される。安定感のある快適な乗り心地を実現している。

ホンダ フリード 1.5リッターエンジン

フリードも1.5リッターのみの設定。ホンダ独自のi-VTECで環境性能も高いが、重めの車重が災いし、上り坂などではやや力不足な印象もある。

ホンダ フリード 15インチホイール

フリードもエアログレードのGiエアロは15インチのアルミホイールを標準装備する。柔らかめの足まわりだが、安定感があり走りも楽しめる。

トヨタ パッソ セッテ インパネ

シンプルな造形のインテリアだが、質感も悪くはない。小物の収納スペースも充実しているので、実用性の高さも文句なしのレベルだ。

トヨタ パッソ セッテ シフトレバー

パッソ セッテは4速ATを採用するが実用燃費は良好で、CVTのフリードにも迫る勢い。マニュアルモードもある。

ホンダ フリード インパネ

2段式の個性的なインテリアデザインがとても印象的だ。視界も広く、狭い道での運転もしやすいのも見逃せない特徴といえる。

ホンダ フリード シフトレバー

フリードはFF車(写真)がCVT、4WDは5速ATを採用する。CVTならではの燃費の良さや滑らかな走りを味わうことができる。

トヨタ パッソ セッテ フロントシート

フロントシートはグレードによりセパレートシート(写真)とベンチシートが用意されている。内装色は明るいベージュ系もある。

トヨタ パッソ セッテ セカンドシート

セカンドシートは左右独立してスライド&リクライニングが可能。足元や頭上の空間にもゆとりがあり、ゆったりとした雰囲気だ。

ホンダ フリード フロントシート

シートのサイズはゆったりしており、快適なドライブが楽しめる。スペースの広さも不満はなく、運転席からの視界も良好だ。

ホンダ フリード セカンドシート

7人乗り(写真)はセパレート、5/8人乗りは左右一体型のベンチシートとなる。中央席はヘッドレストはなく、シートベルトも2点式だ。

トヨタ パッソ セッテ サードシート

サードシートはあくまでも緊急用のスペースで、大人が長時間乗るのは少し厳しい。だがヘッドレストと3点式シートベルトは装備される。

トヨタ パッソ セッテ メーター

メーターは視線移動の少ないセンターメーターを採用する。インフォメーションディスプレーは一度にひとつの情報しか表示できない。

ホンダ フリード サードシート

フリードは巧みなパッケージング技術により、サードシートも十分な広さがある。大柄な男性でも無理なく座れるのには驚かされる。

ホンダ フリード メーター

パッソ セッテとは異なりセンターメーターではないが視認性は問題ない。インフォメーションディスプレーにも複数の情報を同時に表示可能だ。

トヨタ パッソ セッテ ラゲッジ

7人フル乗車時のラゲッジスペースはミニマムだが、普段の買い物などには十分な広さがある。開口部も大きく、積み下ろしはしやすい。

トヨタ パッソ セッテ ラゲッジ

2/3列目ともに背もたれを倒すだけのシンプルなシートアレンジだが、フロアはフラットになるので大きな荷物も積み込みやすい。

ホンダ フリード ラゲッジ

ホンダ独自の低床プラットフォームのおかげで、フロアはかなり低めに設定されている。そのため重い荷物もあまり苦労せずに積み込める。

ホンダ フリード ラゲッジ

7人乗り(写真)はセカンドシートの収納ができず、最大でもスペースはこれだけ。荷物の積載性を重視するなら5/8人乗りがおすすめだ。

トヨタ パッソ セッテ vs ホンダ フリード

トヨタ パッソ セッテは車重も軽く、想像以上に軽快な走りを味わえる。また高速道路でも安定性は高く、安心してドライブを楽しめる。ミッションは4速ATのみで燃費には不利なはずだが、今回の撮影ではフリードにも迫る実用燃費をたたき出したのには驚かされる。対するホンダ フリードはというと、やや重めの車重ながら、パワー不足を感じる場面は思ったよりは少ない。走りのしっかり感もホンダらしいもので、乗り心地や静粛性も満足できるレベルだ。燃費はi-VTECエンジンとCVTの組み合わせのおかげもあり、このクラスに求められる経済性の高さは文句なしのレベルだ。