ホンダ フリード

達人「国沢光宏」が斬る!

ホンダ フリード 評価

国沢光宏

職業:自動車評論家
歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど、多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなくWRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。

ホンダの主張は本当なのか?

 これまで1.5リッター級ミニバンの場合、3列目シートを装備していたとしても「小柄な人なら何とか座れる」といった実用性でしかなかった。「3列目のシートに成人男性も乗る」というなら、ストリーム級。スライドドア付きであれば、ステップワゴン級以上のミニバンでないと厳しい。

 そんな状況を見たホンダは「だったら小さくて広いミニバンを作ろう」と考えたそうな。実際、フリードの宣伝を見ると、フルに3列のシートを使えるミニバンだとアピールしている。しかも7人乗りだけでなく、8人乗りまでラインナップしてきた。となると気になるのが「ホントに乗員全員が快適に乗れるのか?」という点。早速チェックしてみましょう。

ホンダ フリード
清潔感溢れるスタイリング、全体的な雰囲気は「ミニステップワゴン」といったところか
ホンダ フリード スライドドア
スライドドアの開口幅は600mmと非常に広い、アシストグリップも手の届きやすい位置に付く
ホンダ フリード インテリア
デザインと機能性をうまく両立しているインテリア、オーディオ関係は全グレードレス仕様となる

 最も気になる3列目シートから。運転席を身長175cmのドライバーに合わせ、2列目も同じ体格を人が座れる位置とし、残った3列目シートのスペースに座ってみた。結論から書くと、成人男性でも座れる空間を確保出来ている。

 3列のシートに2人づつ座る老若男女混交の6人までなら、ステップワゴンのようなミニバンの80%程度の居住性を確保できていると考えていいだろう。週末の1泊ドライブだって問題なし!

ホンダ フリード 1列目シート
クラスを考えればシートのサイズも大きめな1列目、アームレストはほとんどのグレードに標準装備される
ホンダ フリード 2列目シート(7人乗り仕様)
クラス初となる2列目キャプテンシート、世界的に見ても貴重な存在となるに違いない
ホンダ フリード 3列目シート(7人乗り仕様)
広いとは言えないが、ボディサイズを考えれば驚異的なスペースを確保している3列目シート
ホンダ フリード 2列目シート(8人乗り仕様)
2列目ベンチシートの快適性もトップクラス、リクライニング機構の角度も大きい部類に入る
ホンダ フリード 2列目シート(8人乗り仕様、3列目への乗り込み時)
8人乗り仕様の3列目には2列目シートを跳ね上げてアクセスする、操作に必要な力は非常に軽い
ホンダ フリード 3列目シート(8人乗り仕様)
インテリアカラーは黒とベージュ、黒が基本でベージュは3列シートの一部カラーに設定される

悩ましいシート選び、達人国沢のベストバイは?

 続いて「5人乗り/7人乗り/8人乗りのどれを買ったらいいのか?」を考えてみたい。ホンダが発表した初期受注によれば、売れ筋は7人乗り(2週間で1万台の注文を受けたそうな)。ゆったり座れる2列目のキャプテンシート+横3人掛けの3列シートというレイアウトです。
 

 8人乗りは2列目、3列目共にベンチシートなのだけれど、それぞれの中央席が座面も硬い。ただファミレスやショッピングセンターまで移動するようなケースで合法的に8人乗れるのは便利。

 本来なら3列目シートがある部分をフリースペースにした5人乗りも試してみた。ステーションワゴンより低いフロアを持つため、天地方向で余裕ある。レガシィツーリングワゴンあたりに近いラゲッジスペースを有す。「3列目シートを使う機会は無い」というならピッタリの相棒となるだろう。

 以上、フリードを選ぶ際にグレードで迷ったなら、いかようにも使える7人乗りを選んでおけば間違いなかろう。8人乗りも悪くないけれど、3列シートへの乗降性が7人乗りより悪い(7人乗りだと2列目シートの間を通れる)。

ホンダ フリード ラゲッジスペース(3列シート仕様)
3列目シートの収納は跳ね上げ式、操作は簡単だが跳ね上げるにはかなりの力が必要
ホンダ フリード ラゲッジスペース(2列シート仕様)
2列シート仕様のラゲッジスペースには、汚れを簡単に落とせる「ワイパブルマット」が設定される
ホンダ フリード スカイルーフ
広いガラス面積を有す「スカイルーフ」は、5人乗り仕様の一部グレードにオプション設定される
ホンダ フリード エンジンルーム
フィットのRSと基本的に同じ1.5リッターエンジン、トランスミッションもフィットと同様にCVTを使う
ホンダ フリード 走り
ハンドリングは不安感を覚えるロールもなく動きもシャープ、見た目よりずっと運転を楽しめる
ホンダ フリード 走り
パワフルではないが、高速巡航や追い越し加速でも十分以上の動力性能を確保している

唯一の不安要素は価格設定

 さてさて。非常に魅力的な“ミニミニ”バンであるフリードながら、1つだけ厳しく感じる部分もある。それは価格設定だ。7人乗り標準的なグレード(169万500円)でも、あと10万円足せばストリーム(1.8のベースグレードで180万6000円)が買えてしまう。

 おまけにフリードは発売直後とあって値引きが渋く、実売価格だとストリームの方が安くなってしまうことだって少なくない。見積もりを取ったユーザーに聞くと、200万5500円のステップワゴンとほぼ同じ支払い金額だったそうな。フリードの値引き拡大まで待つのも手か?

達人プロフィール: 国沢光宏
職業:自動車評論家
歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど、多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなくWRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。