ザ・対決 レクサス IS F VS BMW M3クーペ
スポーツセダン&クーペ編
レクサス IS F vs BMW M3

 見るからに精悍なスポーツカーもいいけど、ハイパワーなエンジンを内に秘めたセダンやクーペというのもじつに魅力的だ。"箱"ならではの、秘めたる魅力はじつに通な感じがする。今回は、レクサスのISに追加されたIS Fと、BMWのM3を対決させてみよう。GT-Rをも意識し、トヨタが万全の体制で投入してきたレクサスIS Fは、ハイテクを武器に安心して振り回せるのが自慢。一方のBMWのM3は、BMWならではの伝統が息づく。じっくりと煮詰めた質の高い走りは、まさに大人のスポーツといったところ。スポーツカー顔負けの動力性能というのは共通しつつも、その味付けはまったく対極にあり。デザイン面も、ディテールの作り込みなど大きく異なるだけに、対決結果が気になる!

PHOTO/佐藤靖彦 構成・文/近藤暁史
モデル/

ROUND1:ファーストインプレッション

レクサス IS F
レクサス IS F
ハイパワーを安心して楽しむ
Fの名が示す、レクサスの真髄

 デトロイトショーでプロトタイプが発表されたIS Fが市販化されたのは、GT-Rを意識してか、同時期となる2007年12月のこと。味付けやコンセプトははまったく違うが、その内容もGT-Rとも真っ向勝負できるレベルにある。ちなみにIS FのFはトヨタのホームグラウンドである富士スピードウェイの頭文字であり、さらに開発の中心となった東富士研究所の富士からも取られているなど、新時代のレクサススポーツのキーワードになるものだ。
 まずヤマハがチューニングを施したIS F専用となる5リッターV8ユニットは、LS600hのものをベースにチューニングを重ねたもの。吸気バルブをチタン化したり、バルブリフト量の拡大。さらには排気系パイプ径を太くするなど、スポーツユニットとして徹底的に磨き上げられている。その結果、LS600hのエンジンと比べて、394馬力から423馬力へ大幅なアップを実現。またエンジンサウンド自体も吸排気&メカニカルノイズの点でスポーティな方向に意識的にチューニングされ、大人でも楽しめる雰囲気作りに力を入れているのが印象的だ。
 このハイパワーユニットに組み合わされるのが、スポーツダイレクトシフトと呼ぶ8速ATで、2〜8速で直結状態にすることでダイレクトなフィーリングにあふれ、世界最速レベルの変速レスポンスを武器に小気味よいシフトが楽しめる味付けとなっている。
 もちろん見た目もベースのISとは大きく異なり、ワイド&ローを大きく強調しつつ、フロントマスクもより押し出しの強いデザインに変更されていて、Fならではの存在感は十分だ。

[エコ&燃費]
 最近のトヨタ車の常で、まず実用燃費がいい。カタログ値との差が少ないのだ。5リッターV8で、8.2km/Lを実現しているのは、8速ATのおかげもあろうが、かなりいい数字だろう。また「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」の認定も取得しており、スポーツを前面に出しながら4つ星としているのも注目だ。

[取材時実測燃費]
6.8km/L

[レクサス IS F価格帯]
766.0万円

BMW M3クーペ
BMW M3
マッチョなスタイルとV8エンジン
ながめてよし! 走ってよし!!

 M3として4代目となるのが、M3クーペだ。そのコンセプトは一貫しており、現行モデルでもハイパフォーマンスをウリにしている。
 心臓部に収まるのは4リッターV8で、IS Fより1リッターも少ない4リッターながら420馬力をアウトプットする超高回転型エンジンを搭載する。ただし、そのフィーリングはときとして荒々しく官能的ですらあり、伝統のM3のなんたるかを存分に味わうことができる。しかも高回転型と高らかに謳う反面、2000回転から40.8kg-mという極太なトルクの約85%以上が出続けるということでパンチの効いた発進加速が楽しめるだけでなく、日常的な扱いやすさも兼ね備えており、気を使うことなく乗れるのも特徴のひとつだろう。ミッションは6速MTのみで、クロスレシオ化されており、素早い操作をすることでスポーティな走りを存分に楽しむことが可能。エンジンを吹かしてのシフトダウンでの小気味よさは官能的ですらある。ちなみにカタログ的には0-100km/h加速はたった4.8秒とのことだ。
 さらにこのM3クーペで特徴的なのが、軽量化へのこだわり。新設計のサスペンションはダンパーまでアルミ製とする念の入れよう。驚いたことにルーフもカーボン製として、軽量化だけでなく、ロールセンターの低下にも貢献。ドライビングパフォーマンスを徹底的にアップさせているのは、さすがM3というひと言に尽きるだろう。
 ドリルドのブレーキローターなど、どこを取ってもスポーティ。内装の雰囲気もプレミアム感を存分に醸し出しており、M3クーペならではの世界を演出している。

[エコ&燃費]
 どこを取ってもスポーツカー並のスペックと装備を誇るだけに、無縁の世界かと思いきや、じつはそんなことなし。エンジンや足回りでのアルミ合金の多用によって大幅な軽量化を実現。さらに電気自動車のような回生ブレーキを装備し、オルタネータの負荷を低減することで省燃費にも配慮している。

[取材時実測燃費]
5.8km/L

[M3クーペ価格帯]
1003.0万円

IS F
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4660×1815×1415mm
車両重量
1690kg
エンジンタイプ
V型8気筒DOHC
総排気量
4968cc
最高出力
423ps(311kw)/6600rpm
最大トルク
51.5kg-m(505N・m)/5200rpm
ミッション
8速スポーツダイレクトシフト
10・15モード燃費
8.2km/l
サスペンション(前/後)
ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(前/後)
ドリルドベンチレーテッドディスク/ドリルドベンチレーテッドディスク
税込価格
766.0万円
M3
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4620×1805×1425mm
車両重量
1630kg
エンジンタイプ
V型8気筒DOHC
総排気量
3999cc
最高出力
420ps(309kW)/8300rpm
最大トルク
40.8kg-m(400N・m)/3900rpm
ミッション
6速MT
10・15モード燃費
8.4km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/5リンク
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
税込価格
1003.0万円
レクサス IS F エンジン

IS Fの5リッターV8エンジンは圧倒的なパワー&トルクはもちろん、フィーリングも文句なし。直噴とポート噴射を組み合わせ燃費も良好だ。

レクサス IS F 19インチホイール

前後異サイズの19インチタイヤ&ホイールを装着。スポーツモデルにふさわしいダイレクトなハンドリングを味わうことができる。

BMW M3 エンジン

排気量は4リッターながらIS Fと同等のパワーを発揮する。高回転でのパワー感とフィーリングは驚くほど。中低速域のトルクもしっかり確保。

BMW M3 18インチホイール

スポーティなデザインのホイールがとても印象的。優れたハンドリング特性はもちろんのこと、乗り心地などの質感も良好だ。

レクサス IS F インパネ

専用装備もいくつか奢られているが、標準モデルとの差別化があまりないのが残念なところ。だが、質感の高さはレクサスの名に恥じないだけのものがある。

レクサス ISI F シフトレバー

ダイレクトスポーツシフトと呼ばれるミッションは、通常の8速ATをベースに、2速以上で全域ロックアップさせることによりダイレクトなフィールを実現。

BMW M3 インパネ

IS F以上にノーマルモデルとの差別化がないのが残念なところ。あまり子供っぽい演出もどうかと思うが、もう少しスポーティな雰囲気が欲しいところ。

BMW M3 シフトレバー

ミッションは6速MTのみの設定。スポーツモデルといえども2ペダルが常識になりつつあるだけに、日常ユースなども含めるとIS Fには及ばない。

レクサス IS F フロントシート

専用のシートはサイドのサポートもしっかりしており、スポーティな走りも思う存分楽しめる。疲労感も少なくシートの出来はとてもよい。

レクサス IS F リヤシート

リヤシートもバケット風の処理がなされているため4名乗車となる。スペースは十分確保されているので、長距離の移動も快適に過ごせる。

BMW M3 フロントシート

本革の質感も高くIS Fと同様、スポーティさと高級感を兼ね備えている。シートの形状もよく、ワインディングなどでも体を包み込んでくれる。

BMW M3 リヤシート

リヤシートのスペースはクーペモデルとは思えないほど広く、大人でもゆったりとくつろぐことができるので、ファミリーユースでも問題はない。

レクサス IS F メーター

ブルーの針が印象的なメーターは300km/hフルスケールの専用タイプ。シフトポジションなどの表示も文字が大きくとても見やすい。

レクサス IS F ラゲッジ

ラゲッジはタイヤハウスの出っ張りが気になるが、容量的には実用上不満のないレベルを確保している。

BMW M3 メーター

こちらも専用メーターを装備する。IS Fのように自発光式ではないものの、文字盤も大きく視認性には特に問題はない。

BMW M3 ラゲッジ

クーペモデルとしては十分な容量を確保している。だが、上下方向のスペースが少なめなのが気になるところ。

レクサス IS F vs BMW M3

どちらのクルマも車格にふさわしい上質さと、スポーツモデルらしい走りを実現している。足まわりの設定はM3のほうがソフトで乗り心地とハンドリングのバランスに優れている。