ライター紹介

221616 編集部

世の中の自動車ニュースとは一味違う視点でスローニュースを発信。編集部員はクルマ初心者からクルマをこよなく愛するマニアまで幅広いメンバーで構成。全国のガリバーで売れている中古車や車のスタッフレポートなど、生の情報をお届け中。

「GT-R」は未熟だ!

 世の中は「GT-R絶賛!」の嵐だが、本当にそうなのか。確かにいまの日本ではちょうど飢えているマーケットだから、こんなクルマを待っていたのは事実だ。しかしもっと良いモノを期待していた人も多いはずだ。GT-Rにもっと良くなってもらうために、あえてここに提言する。

ロボットのようなスタイル

 スタイルについては好き嫌いがあるから何ともいえないが、自らスーパーカーを名乗るカリスマ性は感じられない。良く言えばマシン、悪く言うとキカイダーという感じで決してカッコいいとは思えない。それなりに個性はあるのでGT-Rとしての存在感は出ているのが救いだ。

ダッシュボードは古典的

 ドライバーにとって運転中はエクステリアよりインテリアが大事。そこでGT-Rのダッシュボードはというと、ちょっと古めかしいデザインが目に入る。ナビやコンピュータのモニター画面も、ハイビジョンTVを見慣れている目には横幅が狭い。インテリアは暗い色しか選べない。スーパーカーなら思い切り明るい色で派手にできなくちゃいけないのに。とりあえずシートはパールスエードが選べるが、ドアの内張りやダッシュボードは黒いままだ。スーパーカーなら内外装はどんな色にでもします、と言って欲しい。

サポートは良いがフィット感が悪いシート

 いまどきシートのハイトコントロール(高さ調整)が座面だけという珍しい機構が組み込まれている。ハイトコントロールはドライバーのアイポイントを決めるための重要な機構だが、いくら座面を動かしてもアイポイントは動かない。さらにコーナリング中の横Gに対してサポートするシートの横の土手は高いが、しっかりと腰を包むようなフィット感がない。バックレスト上部はやや後ろに逃げ気味で肩のフィット感がない。上部は幅も不足している。まずスポンと腰が収まる感じが欲しいところだ。

アンダー・オーバーステアが明確

 サーキット走行をするときにダッシュボードの「4WD」、「ダンパー」、「VDC」の3つのスイッチをそれぞれ「R」に切り替えるのがお奨めと言われて走ってみた。するとコーナー進入時にブレーキを残してハンドルを切ると簡単にリヤが出てオーバーステアになる。ここでアクセルペダルを踏み込むとアンダーステアになって外に膨らもうとする。ちょっとFFのような走り方になる。せっかく重量配分を考えてトランスアクスルにしたスーパーカーを自称するクルマなのに走り味がFFのようでは買った人は救われない。ここまでは仙台ハイランドを走ったときのインプレッション。

 つぎに愛知県のスパ西浦モーターパークを雨の日に走ったインプレッション。ここでは3つのスイッチのうち「VDC」だけオフにして、あとはノーマルで走った。こうするとブレーキでリヤが出てオーバーステアになるのは仙台ハイランドと一緒だったが、その後のアクセルオンでオーバーステアに簡単に持っていける。ただし大きなドリフトアングルになると急にリヤのグリップが回復し瞬時にフロントのカウンターステアが利いてしまうので、大きなドリフト角でコーナーを立ち上がるときにスムーズでない。だからこのときにも小さなドリフト角までに抑えておくことが大事だ。

電子制御アシストが安定に向き過ぎ

 「4WD」スイッチをRにすると、コーナーの立ち上がりでフロントに駆動力を配分するのを早くするらしく、トラクションは出るがアンダーステアは出やすい。「ダンパー」もRにすると硬くなるが、ここでも超高速での安定性を確保するためにアンダーステア傾向にセッティングしてあるようだ。これらをノーマルにしておいて、「VDC」をカットすればオーバーステアに持っていけるということ。これでも最後は4WDになるから、このあたりのチューニングは車速や横Gなども考慮したもっとFR的な立ち上がりでトラクションを出したいものだ。

制動力はあるが制動感が悪い

 GT-Rのブレーキ性能はかなり良い。劇的に良いといってもいいだろう。ハードなコーナリングでも音を上げず最後まで良く利く。まるでフェードやベーパーロックとは無縁のようだ。しかし右足に感じられるフィーリングは良くない。ブレーキローターとパッドが硬過ぎる感じで、足の裏にザラザラとした摩擦力を感じないのだ。踏み込んだ瞬間の制動感の立ち上がりや制動中にさらに踏み増したときの反応は、ワンテンポ遅れる感じがする。踏み増した分だけ制動力が高まらない感じもする。これが強力なブレーキに対して安心感を持てない理由だ。ブレーキフィールの剛性を高め過ぎたのと、微低速コントロールやブレーキダストなど普通のクルマに要求される性能も取り入れてしまった結果かもしれない。

ブランドによるタイヤの差が大きい

 GT-Rはランフラットタイヤが標準で、ダンロップとブリヂストンの2つのブランドがGT-Rのタイヤとして合格している。普通ならどちらのタイヤを履いてもクルマの性能は変わらないようにセットするのだが、発売直後のいまこの2つは大きな性能差がある。ダンロップは応答性がシャープでコーナリングも小さな舵角で走れる。またコーナーへのターンインでブレーキを残した場合でもリヤの滑りは小さく収まる。ブリヂストンはダンロップほど応答性がシャープでなく、コーナリング中の舵角も大きめだ。過敏でない分、全体的に穏やかかと思ったら、ターンイン時のリヤの滑りも大きめになりやすく、ダンロップより滑りに粘りが不足している。

 GT-Rはまだスペックだけで作っている感じだ。もっとフィールを大事にしたチューニング、あるいは作り込みができると良いクルマに成長する余地はある。欧州車のようにどんどん改良していくと開発者が豪語していたので、それに期待しよう。GT-Rはあとから買った方が間違いなく良いクルマを手に入れられる。