コンパクトカーというジャンルもしっかりと根付いた感がある昨今。車種が増えているだけでなく、性能なども大幅に向上してきているのも注目すべき点。なかには世界戦略車として、コンパクトの本場である欧州市場もターゲットにしているクルマもあるほどだ。たとえば3代目にスイッチしたばかりのマツダのデミオはまさにそう。海外で先行発表されたことからも、その力の入れようがわかろうというもので、デザインも含めて今までの日本車にはない個性をアピールしているのは確か。今回は、このデミオと、同じくスズキが満を持してヨーロッパにも投入したスイフトを対決させることにしてみよう。ただ安くて、そこそこの装備といった基準では判断するのではなく、走りも含めた質に注目だ。 PHOTO/佐藤靖彦 構成/近藤暁史
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マツダ デミオ
スズキ スイフト

ライター紹介

自動車ライター&エディター

近藤 暁史 氏

某自動車雑誌の編集者から独立。その前はファッションエディター(笑)。とにかくなんでも小さいものが好きで、元鉄チャンで、今ではナローゲージを大人買い中。メインのクルマは19歳の時に買ったFIAT500。エンジンのOHからすべて自分でやり、今やもうやるところがない状態でかわいがっております。表向きは自動車ライターながら、業界唯一の省燃費グッズの評論家というのがもうひとつの顔。

マツダ デミオ

先代比で約100kgのダイエットに成功 省燃費を実現しつつ、ダウンサイジング化

スポルトといったスポーティグレードをラインナップしつつも、実用性をウリにしたり、女性をターゲットにしたりと、トータルで見るとソフト路線を取ってきたマツダのデミオ。こういったこれまでの路線から一転して、世界戦略車として装いも新たに登場した。まず大きく目を引くのはやはり、丸みを帯びたデザインだろう。フロントマスクはマツダのアイデンティティをしっかりと受け継ぎつつも、ハイデッキスタイルをうまく取り入れることで、質感を確保。ヨーロッパ的なエッセンスの演出にも成功している。
 ただし、ボディサイズ自体は先代よりもひと回りほどダウンサイジング。車重も1tを切るところまでシェイプアップしている。この点は省燃費対策といっていいのだが、結局はパッケージングを犠牲にしてしまっているのは残念ではある。
 さらに省燃費対策として採用したのがミラーサイクルエンジンだ。デミオに採用されている1.3リッターユニットは23.0km/Lという低燃費を実現している。またよりパワフルな1.5リッターエンジンは7速マニュアルモード付きCVTとの組み合わせで、よりスポーティな味付け。とくに7速マニュアルモードはステアリング上でも操作でき、素早いシフト操作が可能で、マツダのDNAが表れているといっていいだろう。足まわりについても、軽快な感じというよりも、しっかりとした接地感で、じんわりと粘る味付け。レベルは高く、世界戦略車としての力の入れようがわかる。

[取材時実測燃費]
15.3km/L

[デミオ価格帯]
112.5〜158.0万円

13C-V
ボディサイズ(全長x全幅x全高) 3885×1695×1475mm
車両重量 990kg
エンジンタイプ 直列4気筒DOHC
総排気量 1348cc
最高出力 90ps(66kw)/6000rpm
最大トルク 12.2kg-m(120N・m)/4000rpm
ミッション CVT
10・15モード燃費 23.0km/l
サスペンション(前/後) ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ドラム
税込価格 131.0万円

新開発の1.3リッターミラーサイクルエンジンは、実用燃費の良さを追求している。走る楽しさよりも実用性を重視したセッティングだ。

スバル インプレッサ ホイール
14インチのスチールホイール(写真)が標準装備。燃費など実用性を重視したタイヤが装着されている。オプションで15インチアルミホイールも選択可能。

シンプルなデザインだが、機能性にあふれたインパネ回り。小物の収納スペースなどにも工夫があり、使い勝手が高く好印象だ。

新開発のCVTはエンジンとのマッチングも良く、スポーティではないが軽快な走りが味わえる。実用燃費も良好だ。

フロントシートまわりのスペースは余裕がある。シートの形状も良く、サポート性は高い。長距離ドライブでも疲れにくい印象だ。

全高が低くなったおかげで、先代モデルよりもヘッドクリアランスの余裕が少なくなったのは残念だ。シートの座り心地はまずまずだ。

ラゲッジは必要十分以上のスペースで使い勝手はよい。5人乗車時でもコンパクトカーとしては不満のないスペースを確保している。

ダブルフォールディングせず、単にシートバックが倒れるだけなので段差ができてしまう。大きな荷物を積むのにはあまり向いていない。

スズキ スイフト

マイナーチェンジで実力アップ どこを取っても欧州レベル

お買い得感優先の初代スイフトから一転して、スズキがコンパクトカー作りのノウハウを存分に投入して開発したのが2代目となる現行型だ。スイフトというと、エンジンにまで手を加えたスポーツに目が行きがちだが、ベースとなるノーマルボディの実力もかなり高い。ボディはワイドでどっしり感を強調。さらにフロントまわりは曲線をうまく取り入れたりと、日本車離れしたまとめ方がされ、どこかヨーロッパ車的なエッセンスも感じられるほどだ。
 インテリアについても、ソリッド&スポーティなイメージでまとめられ、質感もかなり高く、コンパクトカーとは思えないほど。またマイナーチェンジでは、シート生地を変更するとともに、リヤシートの形状も変えるなど、細かい部分でも熟成を重ねている。室内自体も広く、大人4人が不満なく座ることができるスペースを確保し、想像以上の容量が確保されたラゲッジともども、パッケージングのうまさが光る。
 エンジンは1.3リッター(91馬力)と1.5リッター(110馬力)が当初より用意され、さらにマイナーチェンジで、燃費が20km/Lを超える経済性に優れた1.2リッター(90馬力)も追加。ラインナップはさらに充実した。またスイフトで注目なのはその足まわりで、当たりはしなやかで、コーナーでもじっくりと粘ってくれるし、ハンドリングは素直かつシャープ。テストドライバーが納得できるまで熟成したというだけに、並み居る欧州コンパクトとも肩を並べるといっても過言ではない。

[取材時実測燃費]
13.5km/L

[スイフト価格帯]
110.25〜183.75万円

XG(FF/CVT)
ボディサイズ(全長x全幅x全高) 3755×1690×1510mm
車両重量 1000kg
エンジンタイプ 直列4気筒DOHC
総排気量 1242cc
最高出力 90ps(66kW)/6000rpm
最大トルク 12.0kg-m(118N・m)/4400rpm
ミッション CVT
10・15モード燃費 20.5km/l
サスペンション(前/後) ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ドラム
税込価格 119.7万円

新開発の1.2リッターエンジンは、実用性と燃費性能を意識して開発された。実用性だけでなくエンジンフィールもなかなかのものだ。

XGは15インチのスチールホイール(写真)が標準となる。Lパッケージや上級グレードのXSなどにはアルミホイールが装着される。

こちらもシンプルで機能性を追求したインテリアデザインを採用する。先代モデルに比べて大幅に質感がアップしたのも見逃せない。

新たにCVTが採用され、マイナーチェンジ前に比べて燃費が向上している。だが、他のライバルにはわずかに及ばないのが残念だ。

Aピラーが立っているおかげで、想像以上に広さを感じさせてくれるのが魅力。シートの形状も良く座り心地は満足できるもの。

数値的にはそれほどでもないが、実用上は問題のない居住スペースが確保されている。マイナーチェンジでクッションの厚みが増したのも魅力。

これといった特徴はないが、実用性の高さは満足できるレベル。スペース自体もコンパクトカーとしては特に不満は感じられない。

デミオと同じくシートバックのみが倒れるアレンジを採用する。だが、こちらは段差ができないよう工夫されているので使いやすい。

どちらのモデルもしっかり感の高い走りが味わえる。決してスポーティではないが、ワインディングでも質の高い走りが楽しめる。乗り心地や静粛性もコンパクトカーとしては十分なレベルだ。